十人十色（旧題：短編集）

その他

面倒だがもう一踏ん張り

『守護霊』
『霊性』
『性格』
『格闘技』

　漢字しとりとりなるものを始めて三十分。中々決着がつかない。しかも私から始めた唐突なものなのにのってくれるあたり、本当楽しい恋人だ。
　飽きたらそのうち止める、と思う。多分。きっと。

『飽きた』
『奇遇。私も』

　タプタプとメッセージを打ち込み送信。顔？　ちょっと緩んでるのはご愛嬌。楽しい時間なのだからそれくらい許してほしい。
　特に、辞めると決めた職場での、貴重な休み時間くらい自由に使いたいというものだ。
　とはいえそろそろ休憩時間も終わるのだけど。はあ。嫌だ、働きたくない。

『働きたくないでござる』

　あ、以心伝心。こういうのがいいなあと思う。内緒だけど。
　ソファで寝転んでいる体を起こして仕事へ頭を切り替えながら返信をする。『わかる』と。
　淡白な返事と自分でも思うが、こう返しても通じる相手だから良いのだ。というか、そういう相手なのだと付き合ってから知ったともいえる。

「……だるいなぁ」

　誰にともなく呟いた言葉は休憩室に消える。働きたくないである。