40 / 46
その他
ー昼間の出来事
しおりを挟む
「あ」
バスの時間、間違えた。三十分どうしよう。そんな気持ちになる。
年末が明けた病院は混む。土日もやってくれる場所なら尚更だ。激混み、というやつだ。精神的にもすり減る道のりを来た先にあったのがこれならどんな仕打ちだろうと思うが、そもそも平日の診察しか行わない先生が時間を作ってくれたのだから、と思って待ち続けること十数分。診察も待ち時間もそこまで長くなく終わったが、問題は調剤薬局だった。
こちらは少々、というか割合でいえばかなり待たされた。年末年始って感じがするという思いを抱きながら待ち続けること一時間。ようやく呼ばれてさあ帰ろうとしたらバスの読み間違いだ。これには我がことながらがっくりときた。世間でいう萎えた、というものだ。
けれどまあ、こうして何がしらあるからと、病院に併設されたカフェへ入る。こちらもそこそこ混んでいるが、先ほどの診察や薬局に比べたら大したことはなかった。
「ふう」
温まるコーヒーを飲みながら、ふとカフェの出入口の先、受付の方へ目を向ける。一年前のことを考えながら。
一年前の今頃は、忙しない生活を送っていた。年末年始と言えど仕事はあり、休みは不規則。一人暮らしをしつつ、趣味仲間の主催するイベント参加に奔走する。中々に大変で、けれど楽しい生活だったと振り返る。
あれはあれで良かったと思う反面だ、今の、心穏やかな生活も悪くないと思う。仕事を変えた大変さや、家族との諍いは未だ解決しないけれど。あの、ある種爛れた生活へ戻りたいかというと戻りたくないとさえ思う。
あの頃欲しかった本当の幸せというのを、今やっと手に入れた。そんな気がするのだ。
と、ぼんやりそんなことへ想いを寄せていると、ポケットに入れたままの携帯が震えた。なんだろうと思い取り出すと、愛しの人から『病院お疲れ様』とメッセージが来ていた。年始の混み具合は予想していたが想像以上だった為、その言葉は優しく染み込んだ。
『ありがとう』と打ち込みながら、そろそろ時間だと席を立つ。あの頃の無茶で体を壊し、こうして今も病院へ通う。それは戒めのようなもの。二度と同じ過ちは繰り返さないというけじめだ。
外に出ると冷えた空気が出迎える。けれど木々には蕾が生まれていた。春の足音がし始めている。そんな日の出来事だった。
バスの時間、間違えた。三十分どうしよう。そんな気持ちになる。
年末が明けた病院は混む。土日もやってくれる場所なら尚更だ。激混み、というやつだ。精神的にもすり減る道のりを来た先にあったのがこれならどんな仕打ちだろうと思うが、そもそも平日の診察しか行わない先生が時間を作ってくれたのだから、と思って待ち続けること十数分。診察も待ち時間もそこまで長くなく終わったが、問題は調剤薬局だった。
こちらは少々、というか割合でいえばかなり待たされた。年末年始って感じがするという思いを抱きながら待ち続けること一時間。ようやく呼ばれてさあ帰ろうとしたらバスの読み間違いだ。これには我がことながらがっくりときた。世間でいう萎えた、というものだ。
けれどまあ、こうして何がしらあるからと、病院に併設されたカフェへ入る。こちらもそこそこ混んでいるが、先ほどの診察や薬局に比べたら大したことはなかった。
「ふう」
温まるコーヒーを飲みながら、ふとカフェの出入口の先、受付の方へ目を向ける。一年前のことを考えながら。
一年前の今頃は、忙しない生活を送っていた。年末年始と言えど仕事はあり、休みは不規則。一人暮らしをしつつ、趣味仲間の主催するイベント参加に奔走する。中々に大変で、けれど楽しい生活だったと振り返る。
あれはあれで良かったと思う反面だ、今の、心穏やかな生活も悪くないと思う。仕事を変えた大変さや、家族との諍いは未だ解決しないけれど。あの、ある種爛れた生活へ戻りたいかというと戻りたくないとさえ思う。
あの頃欲しかった本当の幸せというのを、今やっと手に入れた。そんな気がするのだ。
と、ぼんやりそんなことへ想いを寄せていると、ポケットに入れたままの携帯が震えた。なんだろうと思い取り出すと、愛しの人から『病院お疲れ様』とメッセージが来ていた。年始の混み具合は予想していたが想像以上だった為、その言葉は優しく染み込んだ。
『ありがとう』と打ち込みながら、そろそろ時間だと席を立つ。あの頃の無茶で体を壊し、こうして今も病院へ通う。それは戒めのようなもの。二度と同じ過ちは繰り返さないというけじめだ。
外に出ると冷えた空気が出迎える。けれど木々には蕾が生まれていた。春の足音がし始めている。そんな日の出来事だった。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる