女剣士の道は険しい?

星野 夜空

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プロローグ(幼少時代)

適性確認

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 朝食を終えてすぐ、私達は街唯一の教会へと足を向けた。今日のことは事前に言われていたとはいえ、前世も今もゆかりがあまりない場所に少しだけ緊張する。
 今月誕生日を迎えたのは、私含め五人。決して大きくはない街だ、皆の顔も、名前も知ってる。全員、そわそわとした面持ちでその時を待っていた。
 そしてそれは、案外早かった。

「ではこれより、適性確認の儀を始めます。一人ずつ、前に来なさい」

 準備が整ったのだろう、神父様が厳かに宣言した。瞬間、ピシッと心が締まるような感覚と、糸が張り詰めたような空気が辺りを包みこむ。外の寒さが部屋にまできている錯覚すらしてきた。
 儀式は至って簡単で、宝石が埋め込まれた本にそっと両手をかざすだけだ。適性があれば何かしら起こるらしい。といっても、大体は補助照明くらいの光が辺りを照らすだけ。それくらいならここの教会で、神父様から教えてもらう。だけど、それ以上の光であったら……。
 次々と、粛々と行われるそれは、あっという間に自分の番がきた。
 他の子達同様、ゆっくり宝石へ手を伸ばす。しばし手を置いてみるが、適性がないのだろうか。光ることはない。
 これで両親と離れなくて済むと安心して、そろそろ手を離すという時に、変化は起きた。
 徐々に中央あたりが白く輝きだしたのだ。さながら蛍光灯のような光をしている。目を開いていられないというわけではないけど、さっきまで適性があった子達との光り方とは違った印象を受けた。どこがどうとは、いえないけど。
 完全に手を宝石から離せば、瞬時に光は霧散した。

「ラナ、君はこの中で最も適性があったようです。ここで他の子同様、基礎知識と基礎魔法を学び、取得次第、学園の試験を受けてもらうことになります」

 神父様に告げられた言葉に、反論できるはずもなかった。それがこの世界の常識であり、ルールであり、運命さだめなのだから。
 だけど、その続きがあるとは思わなかった。

「そしてこの光り方からして、おそらく攻撃か、身体強化や補助に特化した魔力及び魔法に適性があるでしょう。ものにもよりますが、女性がなる魔法使いに、貴方はなれないかもしれません」

 あくまでも儀式として接しなければならないのだろうか、それともこの世界の人達は3歳児でも酷なことをさらりと言うのだろうか。普通とは違う人生になる可能性を淡々と告げられた。
 魔法は簡単に分けて、攻撃、防御、治癒の三つ。攻撃と防御の間に身体強化、攻撃と治癒で身体補助、防御と治癒に状態異常が当てはまる。基本的に攻撃系統は自身に、治癒系統は他者に向けて行うことが多い。防御系統はその時々に合わせるが、どちらかというと治癒系統に近いものがあるらしい。儀式に合わせて両親が説明してくれた内容は、ざっとこんなところだ。
 通常、女性に適性が多いのは治癒が最も多く、関連して補助が得意な人も少なくない。ただ、攻撃に適性がある人なんてお伽噺とぎばなしでも聞いたことがなかった。もしかしたらいるのかもしれないけど、少なくとも今の環境で当てはまる人はいない。
 前例があるのかどうかさえ分からない職に、私はならないといけない。そう直感が囁いた気がした。
 儀式が全て終わり、後ろで静かに見守っていた両親へと歩み寄る。二人は、泣き笑いのような顔をしていた。適性があって嬉しいのか、神父様の言葉がショックなのか、それとも、両方なのか。

「パパ、ママ……」
「「ラナ……」」

 私達は同時にお互いを呼び、抱きしめあった。不安を消し去るように。
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