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本編
伝統vs新鋭.3
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『決着はつきました。潔く諦めてもらいましょう』
鞘に剣を戻しつつ婚約者へ顔を向けている従者からそんな言葉が聞こえる気がした。
『ああ、それは守ろう。だが一つ教えてくれ』
同じく鞘へ戻しながら従者を見る婚約者の顔は、悔しさよりも困惑が広がっている、ように見える。よくよく見ないと分からないけど、周りはこの先何が起きるかと固唾を飲んで見守ってる状況だ。ちゃんと見えていることだろう。
『何故お前はそんなにも強い。護衛だとしても、その腕は実戦で鍛えたと見受けるが』
『それは、私の身分が身分だからです』
恭しく一礼したかと思いきや、胸元からペンダントのついたネックレスを取り出した。
それを見て彼はもちろん、私や私の両親も驚く。
『身分を隠して、私は私に合う花嫁を探していました。その理想がここに』
そんな言葉が添えられているかのように、私に対して微笑んでくる。あのペンダントは王族を意味する、という設定で、私は知らず知らずのうちに次期王妃として見初められた、ということらしい。どんなシンデレラストーリーだ。
『婚約者がいると知り、勝ち目はないと諦めていたところ、浮気癖があると聞きました。これはと思い、彼女を口説いていたんです』
『なるほど、な。……すまなかった』
頭を下げられて、私は首を振る。相手から見えないけど気にしてない、と伝えるために。
そうこうしてる間に、周りの雰囲気も変わる。結婚式シーン。ここが本当のクライマックスで、音楽も微妙に変化した。
☆
私達の演目はそこそこ盛り上がり、次のチームがやりづらそうな表情で交代した。気持ちは痛いほど分かる。
とはいえ素人がやれる範囲でやるのだから、周りはどのチームも同じように見ているらしく野次という野次はわかない。
心中、シンデレラ系と続いて最後は何かと思っていると、ドラグさんが駆け寄ってきた。
「少し、よろしいでしょうか?」
「え? えと……はい」
ただ両チームの姫役が揃ったことで周りから注目されるのは、なぁ。おまけにドラグさん、着替えてないから余計に目立つことなんの。
それは向こうもそうらしく、ここではなんだからと学校の中、さっきうちのチームリーダーと言い合いしていた更衣室付近に移動した。
「先程の舞い姫、素晴らしかったです。新しいシナリオや、先生の指導の仕方ももちろんあるのでしょうけど……何より皆さんの表情が、私達と違っていました」
そういうドラグさんの顔は朗らかで、怒ってないことが読み取れた。というより、悩みが吹っ飛んだ? 解決した? そんな顔をしてる。
「観に来ていた先輩方もそれを察したようです。伝統にかじりつくのも大概にしないとな、と。お陰で来年は自由な舞い姫を後輩にさせることが出来そうです」
「……ドラグさんは、何か不満でもあったんですか?」
「不満というよりは疑問、ですかね。心中ものは確かに受けが良いので高得点を取りやすいのですが、毎年行われると予測がつくので点数も辛くなりますし、何より最初から決められているものをやるというのは、存外苦痛なので皆やりたがらないのですよ」
あー確かに。お芝居って何をやりたいか、話し合う時が何だかんだで一番楽しかったかも。それが初めから決まってるなら、本当にやりたいものでない限りは飽きるかな。飽きなくてもやる気はあんまり上がらないよね、きっと。
自分の中で納得していると、遠くから拍手の音が聞こえる。どうやら最後のチームが行う舞い姫が終わったらしい。
後は着替えて、いくつかの競技をやったらすぐに閉会式だ。
「では、私はこれで。楽しい時間をありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。先輩の舞い姫、綺麗でしたよ」
心からそう伝えると目を見開き、次いで華やかな笑顔を浮かべた。
……ドラグさん、本当に男性だよね? 綺麗すぎて負けたと思ってしまった。
鞘に剣を戻しつつ婚約者へ顔を向けている従者からそんな言葉が聞こえる気がした。
『ああ、それは守ろう。だが一つ教えてくれ』
同じく鞘へ戻しながら従者を見る婚約者の顔は、悔しさよりも困惑が広がっている、ように見える。よくよく見ないと分からないけど、周りはこの先何が起きるかと固唾を飲んで見守ってる状況だ。ちゃんと見えていることだろう。
『何故お前はそんなにも強い。護衛だとしても、その腕は実戦で鍛えたと見受けるが』
『それは、私の身分が身分だからです』
恭しく一礼したかと思いきや、胸元からペンダントのついたネックレスを取り出した。
それを見て彼はもちろん、私や私の両親も驚く。
『身分を隠して、私は私に合う花嫁を探していました。その理想がここに』
そんな言葉が添えられているかのように、私に対して微笑んでくる。あのペンダントは王族を意味する、という設定で、私は知らず知らずのうちに次期王妃として見初められた、ということらしい。どんなシンデレラストーリーだ。
『婚約者がいると知り、勝ち目はないと諦めていたところ、浮気癖があると聞きました。これはと思い、彼女を口説いていたんです』
『なるほど、な。……すまなかった』
頭を下げられて、私は首を振る。相手から見えないけど気にしてない、と伝えるために。
そうこうしてる間に、周りの雰囲気も変わる。結婚式シーン。ここが本当のクライマックスで、音楽も微妙に変化した。
☆
私達の演目はそこそこ盛り上がり、次のチームがやりづらそうな表情で交代した。気持ちは痛いほど分かる。
とはいえ素人がやれる範囲でやるのだから、周りはどのチームも同じように見ているらしく野次という野次はわかない。
心中、シンデレラ系と続いて最後は何かと思っていると、ドラグさんが駆け寄ってきた。
「少し、よろしいでしょうか?」
「え? えと……はい」
ただ両チームの姫役が揃ったことで周りから注目されるのは、なぁ。おまけにドラグさん、着替えてないから余計に目立つことなんの。
それは向こうもそうらしく、ここではなんだからと学校の中、さっきうちのチームリーダーと言い合いしていた更衣室付近に移動した。
「先程の舞い姫、素晴らしかったです。新しいシナリオや、先生の指導の仕方ももちろんあるのでしょうけど……何より皆さんの表情が、私達と違っていました」
そういうドラグさんの顔は朗らかで、怒ってないことが読み取れた。というより、悩みが吹っ飛んだ? 解決した? そんな顔をしてる。
「観に来ていた先輩方もそれを察したようです。伝統にかじりつくのも大概にしないとな、と。お陰で来年は自由な舞い姫を後輩にさせることが出来そうです」
「……ドラグさんは、何か不満でもあったんですか?」
「不満というよりは疑問、ですかね。心中ものは確かに受けが良いので高得点を取りやすいのですが、毎年行われると予測がつくので点数も辛くなりますし、何より最初から決められているものをやるというのは、存外苦痛なので皆やりたがらないのですよ」
あー確かに。お芝居って何をやりたいか、話し合う時が何だかんだで一番楽しかったかも。それが初めから決まってるなら、本当にやりたいものでない限りは飽きるかな。飽きなくてもやる気はあんまり上がらないよね、きっと。
自分の中で納得していると、遠くから拍手の音が聞こえる。どうやら最後のチームが行う舞い姫が終わったらしい。
後は着替えて、いくつかの競技をやったらすぐに閉会式だ。
「では、私はこれで。楽しい時間をありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。先輩の舞い姫、綺麗でしたよ」
心からそう伝えると目を見開き、次いで華やかな笑顔を浮かべた。
……ドラグさん、本当に男性だよね? 綺麗すぎて負けたと思ってしまった。
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