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本編
伝統vs新鋭.2
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準備が整うと同時に音楽が流れ出して動き出す。出だしはさっきと一緒だ。違うのはここから。
姫様が登場した瞬間、一番外側にいた従者が人の目がなくなったのを見計らって駆け寄り、膝を折った。
『ああ、お嬢様。身分違いと分かってお伝えします。お慕いしております』
台詞がない代わりに態度で示されたそれをすげなく私は返す。
『聞かなかったことにするわ』
これは二重の意味を示す。一つは相手を思ってること。こんなことを言われたと知られたら、よほど家族から重用されていないと解雇される。だから何も知らない振りを続けるから家にいろと暗に伝える。
もう一つはこの女性に婚約者がいるからだ。不貞だなんだと言われて相手から印象悪くならないように、ようするに純潔のままだと疑われないようにするため。
毎回思うけど、うちら庶民は相手が初かどうかあんまり気にしない。身分のある人って初婚の女性には清らかであることを求めすぎだと思うのよね。まあ、価値観の違いなんだろうけど。
そんなことを頭の片隅で考えつつ、何度か従者を振る。それでもめげない従者に──そして婚約者の側にいつも女性がいることを知った姫様は、段々心が従者へ移っていく。そうしてようやく受け入れよう、と決めた瞬間。
『お前達、今の言葉は一体どういうことだ!?』
婚約者の乱入。目を見開きこちらへ指を差す彼から守るように、従者は私を背中へ庇う。不安そうな表情で見つめる私と怒りを露わにする婚約者、そして真剣な表情で婚約者を睨み返す従者。
はたから見れば修羅場でありクライマックスだと勘違いされるが、ここで中盤を過ぎたあたりだ。
『その女性が私の婚約者と知っての求婚か!』
『そちらには沢山の女性がおるというのに?』
『私は真に目覚めた! 彼女しかいないのだと!』
『信用できませんね。だからこそ、彼女もようやっと受け入れてくれたのですが』
『ええい煩い煩い! 決闘だ!』
腰にさしていた剣が抜かれる。こちらの従者は護身用の短剣しか持っていない。分が悪いかと思いきや、父親から剣が差し出された。
意味が分かる人も分からない人も、親が彼を認めたことを意味することが伝わる。他の意味は観ている人が決めるから、今はそれで良いらしい。
お互い抜刀し、適度な距離をはかって──斬り結んだ。
初めて観る観客が息を飲んだのが分かる。それだけ二人のレベルは高い。なんせここが最も大回りして目立つシーンだ。反応が良いと、従者と婚約者はチームで見目が悪くなくて剣の筋がいい人を選んだ甲斐があるというもの。
高く澄んだ音が響くと、各所から拍手が起きた。
姫様が登場した瞬間、一番外側にいた従者が人の目がなくなったのを見計らって駆け寄り、膝を折った。
『ああ、お嬢様。身分違いと分かってお伝えします。お慕いしております』
台詞がない代わりに態度で示されたそれをすげなく私は返す。
『聞かなかったことにするわ』
これは二重の意味を示す。一つは相手を思ってること。こんなことを言われたと知られたら、よほど家族から重用されていないと解雇される。だから何も知らない振りを続けるから家にいろと暗に伝える。
もう一つはこの女性に婚約者がいるからだ。不貞だなんだと言われて相手から印象悪くならないように、ようするに純潔のままだと疑われないようにするため。
毎回思うけど、うちら庶民は相手が初かどうかあんまり気にしない。身分のある人って初婚の女性には清らかであることを求めすぎだと思うのよね。まあ、価値観の違いなんだろうけど。
そんなことを頭の片隅で考えつつ、何度か従者を振る。それでもめげない従者に──そして婚約者の側にいつも女性がいることを知った姫様は、段々心が従者へ移っていく。そうしてようやく受け入れよう、と決めた瞬間。
『お前達、今の言葉は一体どういうことだ!?』
婚約者の乱入。目を見開きこちらへ指を差す彼から守るように、従者は私を背中へ庇う。不安そうな表情で見つめる私と怒りを露わにする婚約者、そして真剣な表情で婚約者を睨み返す従者。
はたから見れば修羅場でありクライマックスだと勘違いされるが、ここで中盤を過ぎたあたりだ。
『その女性が私の婚約者と知っての求婚か!』
『そちらには沢山の女性がおるというのに?』
『私は真に目覚めた! 彼女しかいないのだと!』
『信用できませんね。だからこそ、彼女もようやっと受け入れてくれたのですが』
『ええい煩い煩い! 決闘だ!』
腰にさしていた剣が抜かれる。こちらの従者は護身用の短剣しか持っていない。分が悪いかと思いきや、父親から剣が差し出された。
意味が分かる人も分からない人も、親が彼を認めたことを意味することが伝わる。他の意味は観ている人が決めるから、今はそれで良いらしい。
お互い抜刀し、適度な距離をはかって──斬り結んだ。
初めて観る観客が息を飲んだのが分かる。それだけ二人のレベルは高い。なんせここが最も大回りして目立つシーンだ。反応が良いと、従者と婚約者はチームで見目が悪くなくて剣の筋がいい人を選んだ甲斐があるというもの。
高く澄んだ音が響くと、各所から拍手が起きた。
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