とある天使の過去と今

星野 夜空

文字の大きさ
7 / 16

7

しおりを挟む
 そうして彼──ルーラに引き取られて数十年。高等学校を無事に卒業した私は、天使なのに死神の仕事を手伝うという異例なことをしていた。
 一時期は天界に戻った方が良いとも言われたけど、今や家族となったルーラと離れるのは嫌だと抗議したらあっさりと許された。その理由の背景には、やっぱりというか天界に住む天使達が持つ私への悪感情。


──あの堕天使もどき、まだ生きてるんだって。

──しかも、地界で過ごしてるって話らしい。

──天使の恥よ、全く……。

──いい加減、消えてほしいな。


 今はともかく昔は幼かったのに、平気で罵倒や暴力をしてきたのだ。数十年程度で消える感情なら地界の人達も養子という形で保護はしないだろう。
 実際、私が生きてると知った天使達数人が連れ戻そうとして地界に来たけど、養子とされていると聞いた時愕然としていた。ただの保護なら引き取るのは容易だが──そして私はあの暴力と蔑みの暮らしに戻る──養子なら話は別となる。自ら進んで私を自分達の子としたのだ、そう簡単に手放しはしない。ましてや酷い扱いを受けると分かっているなら尚更だ。おまけに地位のある者から引きはがそうとするのは至難の業だろう。
 案の定、天使達はルーラに私がどんな存在か話したが「そんなの関係ない」ときっぱり言われすごすごと帰っていった。
 それで終わりだと思ったのは私達だけだったようで、数日後には思わぬ事態が起きた。
 天界の住民が地界の住民を襲い、私を奪おうと躍起になっていたのだ。

「まさか、彼等がここまで馬鹿だったとはね」

 苦い顔で呟くルーラに同意する。天界と地界の者が仲良くなり兄弟の契りを行なう事もあれば、喧嘩をする事だってある。それを取り締まるのが天界では上位天使、地界では赤鬼の役目なのだが……。
 その上位天使が地界の住民を襲い、目的が私を天界に悪い意味で連れ戻そうとしている。
 まさに、狂ってるとしか言えない行為だ。

「ねえルネ。年齢って、確か百は超えてるんだよね」

 その時、唐突といっていいほどルーラが脈絡のない話を振ってきた。歳なんて、聞いてどうするつもりなのだろう。

「……超えてる」
「二百は?」
「……分からないけど、まだだと思う」
「あとどれくらいで二百になる?」
「……多分、十年くらい」
「そっか……。長いな。それまで君を守らないと」
「……どういうことなの」

 答える代わりに見せた妖艶な笑みの意味を知ったのは、私が二百歳に──地界では成人とされる年齢になってからだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

レオナルド先生創世記

ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

【完結】ある二人の皇女

つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。 姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。 成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。 最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。 何故か? それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。 皇后には息子が一人いた。 ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。 不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。 我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。 他のサイトにも公開中。

【完結】この胸に抱えたものは

Mimi
恋愛
『この胸が痛むのは』の登場人物達、それぞれの物語。 時系列は前後します 元話の『この胸が痛むのは』を未読の方には、ネタバレになります。 申し訳ありません🙇‍♀️ どうぞよろしくお願い致します。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...