脇役のグレイロード

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殺気

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「アナタ達にはこれから獣を狩ってもらうの」。

唐突にそんな事を言った。

男が何を言っているのか理解の出来ない者達は騒々しくなり、又、理解出来てそうな奴は嬉しい様な緊張している様な不思議な顔持ちであった。

言うまでもなく、そういう奴は決まって成りをしている。

「なぁに、もう少し良い反応を期待してたんだけどぉ」。

「ふざけんな、このクソオカマ野郎!!勝手に連れて来といて適当な事抜かしてんじゃねぇぞ!!」

金髪のパンチパーマを掛けたお兄さんがオカマに向かって胸ぐらを掴む。怖いもの無しという何というか、今にも殴り掛かりそうな形相だ。

「────あ?何か言ったかこのチンピラ風情が」。

瞬間、空間に衝撃が走る。

悍ましい程の寒気、まるで首元にナイフでも突きつけられているかのような緊迫感と息苦しさ、訳の分からない嗚咽感。

おかまの拳がチンピラの顔面をピシャリと当てる。

店の壁に破壊音と共に瓦礫に埋まる男は完璧に伸びていた、顔面からは鮮血が漏れ出し腕は曲がってはいけない方に曲がっている。
明確な殺気を感じた、ヒシヒシと伝わる殺意の波動、して、それは次の瞬間───消えた。

蟻でも潰したかの様に、潰した事にさえ気付いていない人間の様に、不気味な程にあっさりとしていた。

その時、その場にいた者達は本能的に理解する、このばけものには逆らえないと。

皆が唾を飲んだ。流れる静寂の時間、拳を拭く男に対し誰一人として動こうとしない、目を付けられないように影を潜める。

───そんな時だった。

「───はいはーい」。

声の先には痩せ細った色白で血色の悪い女みたいな男が手をプラプラと上げていた。

「あら、可愛いわね坊や、何かしら?」。

「オネェさんのお名前ってなんですかぁ?」。

間の抜けた質問に目を丸くする男

「ふふ、そうね自己紹介をして無かったわね。私の名前はヴェロニカこのバーのマスターよ、私にオカマって言う奴は大抵長生きは出来ないから覚悟しておくことね、うふ」。

「そうですか、僕馬凜まきびし 瑠偉るいって言います、よろしくです」。

「はい、よろしくね」。


「────質問良いですか?」。

振り向くと桐原が手を上げていた。

「あら、あら、アナタイケメンねぇ」。

「獣って何ですか?それになんで僕達なんですか?」。

「あら、つれないわねぇ、うん、そうね、詳しく説明しましょうか」。

そう言って蔵から大きな地図を持ち出して机に広げた。

「この世界は今───────」。


平々凡々と生きていた現実社会、『退屈』という名の疫病が蔓延し生きる意味を見失っていた世界、その世界を出た俺達が新たな人生を始めるそこは立派な城でも教会でも無い、ホコリ臭くて得体のしれないオカマが経営する、小汚い酒場だった。
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