1 / 2
0話 罰
しおりを挟む
瓦礫の山。爆撃によって爆散した家屋の材木が一人の男の腹に刺さる。
大腿骨の損傷、大腿動脈の破損……これは、死んだかな。
国の為、民の為、現世に毒牙を掛け貪り食う者を死人として来た人生は、皮肉にも国の者達の裏切りによって終わりを迎えようとしていた。
体温が低下していくのをまじまじと感じる。意識も朦朧として来た。
薄れゆく記憶の中で
セミの死体、羽をもがれた蝶、潰れたカエル、干乾びた魚、死に絶える蟲、ネズミの頭───僕が死の瞬間脳裏を過ったのはこれだけだった。
─ 1 ─
───やぁ、おはよう、悪いね先程眠りについたばかりなのに。
暗く閉ざされた空間。深淵よりももっと暗く、冷たい。
そんな無限の闇の様な中一つの声が聞こえる。声と言うのも耳を介して聞こえるわけではない。頭に直接語り掛けてくるような、そんな声。
「君は……誰だ?」。
「そうだね、まずは自己紹介からだ」。
男か女か老齢者はたまた年少者か……分からない、何も、何一つとして…。
「まぁ自己紹介と云うのも僕に名前なんていう固有名詞は無い」。
「じゃあ、聞き方を変える、君は何だ?」。
「僕は『存在』だよ。なんら君達と変わらない只の存在、でも君達人間よりも圧倒的に高次元の『存在』である事は確かだ、それだけは言える」。
「はは、まさか神とでも言うつもりか?冗談やめてくれ」。
「ははっ、そんな俗物の創り出した虚像等では無いさ、僕は確かに存在する、間違い無いよ」。
「それでその『存在』様が僕に何の様だい?地獄にでも連行されるのか?」
男の小馬鹿にした態度になどは気にも停めない。
「✕✕君、君は『天国』や『地獄』が存在すると思うかい?」。
「無い、それは人間の弱さが創り出した只の空想だ」。
「うん、正解だよ、死の先に待つものは只ひたすらの『無』だ」。
「ならばここは一体何処なんだ」。
「そうだね、質問を変えようか、この世に『天国』や『地獄』があると思うかい?」
さっきの質問と何が違うんだ?
「いや、だから──
「僕はね、生きる事こそが本当の『地獄』だと思うんだ。」
真っ暗な空間の中でもその声が強張るのを感じた。
「…………悪徳宗教みたいな事を言うんだな」。
「息を吸って吐くだけの肉がそこらを闊歩し、無価値な紙の束で尺度を測り無為な争いを広げる。数だけが増え一向に止むことはない、まさに地獄だ……君もそう思わないか?」
確かに、俺はそう思った事幾度もある。
世に寄生するウジ虫を幾ら屠った所で国が変わる片鱗を見せた事は一度も無かった。減るどころか寧ろ増える一方で遂には僕の事を『死神』と崇拝し大量虐殺を行った教団もいた。
俺は一体何をやっているのか、何が楽しくてこんな事をしているのか分からなくなった。
確かに生きる事に比べれば只ひたすらの『無』の方が幾分かマシなのかもしれない。
「さて、本題に入ろう、僕はこれから君に罰を与えなければならない」。
「……罰?神みたいなこと言うんだな」。
「あぁ、残念ながらね、立場上しょうがないんだ。僕は『存在』である前に『送り人』であるから」。
話の魂胆が見えない。
「死の後はひたすらの『無』だと君は言った、それに『送り人』とは何だ?一体何を何処へ送るんだ」。
「『何』は君、『何処』は、う~ん、そうだな……元とは異なる世界にしようか」。
「………なんの話だ、ふざけるな」。
「ふざけてなんて無いさ大マジメさ、ははっ、これは罰だ多くの人間を殺した罰」。
「お前の理論なら、俺は大勢を救った事になるじゃないか」。
「そうだね、これはあくまでもマニュアル通りの事務仕事さ。僕は大変心苦しいよ」。
「それは嘘だ、お前は明らかに楽しんでいる」。
───あはっバレた?敵わないなぁ
『存在』からスーッと、神経が、一つところに凝結したような気味悪さを感じた。
「いやぁ、ほらね?君みたいな数奇な人生を辿る人間も中々居ないだろ?このまま君を『無』に返すなんて勿体無いったりゃありゃしないじゃないか」。
「俺はお前の玩具になんかなるつもりは無い」。
「いいや、なるね、君に抗うすべは無い、君は地獄行きさ、あはははは!!✕✕君第二の人生に幸あれ」。
「この───ペテン師が」。
「……あぁ、よく言われる」。
───次の瞬間、俺は見知らぬゴミ捨て場で目を冷ました。
大腿骨の損傷、大腿動脈の破損……これは、死んだかな。
国の為、民の為、現世に毒牙を掛け貪り食う者を死人として来た人生は、皮肉にも国の者達の裏切りによって終わりを迎えようとしていた。
体温が低下していくのをまじまじと感じる。意識も朦朧として来た。
薄れゆく記憶の中で
セミの死体、羽をもがれた蝶、潰れたカエル、干乾びた魚、死に絶える蟲、ネズミの頭───僕が死の瞬間脳裏を過ったのはこれだけだった。
─ 1 ─
───やぁ、おはよう、悪いね先程眠りについたばかりなのに。
暗く閉ざされた空間。深淵よりももっと暗く、冷たい。
そんな無限の闇の様な中一つの声が聞こえる。声と言うのも耳を介して聞こえるわけではない。頭に直接語り掛けてくるような、そんな声。
「君は……誰だ?」。
「そうだね、まずは自己紹介からだ」。
男か女か老齢者はたまた年少者か……分からない、何も、何一つとして…。
「まぁ自己紹介と云うのも僕に名前なんていう固有名詞は無い」。
「じゃあ、聞き方を変える、君は何だ?」。
「僕は『存在』だよ。なんら君達と変わらない只の存在、でも君達人間よりも圧倒的に高次元の『存在』である事は確かだ、それだけは言える」。
「はは、まさか神とでも言うつもりか?冗談やめてくれ」。
「ははっ、そんな俗物の創り出した虚像等では無いさ、僕は確かに存在する、間違い無いよ」。
「それでその『存在』様が僕に何の様だい?地獄にでも連行されるのか?」
男の小馬鹿にした態度になどは気にも停めない。
「✕✕君、君は『天国』や『地獄』が存在すると思うかい?」。
「無い、それは人間の弱さが創り出した只の空想だ」。
「うん、正解だよ、死の先に待つものは只ひたすらの『無』だ」。
「ならばここは一体何処なんだ」。
「そうだね、質問を変えようか、この世に『天国』や『地獄』があると思うかい?」
さっきの質問と何が違うんだ?
「いや、だから──
「僕はね、生きる事こそが本当の『地獄』だと思うんだ。」
真っ暗な空間の中でもその声が強張るのを感じた。
「…………悪徳宗教みたいな事を言うんだな」。
「息を吸って吐くだけの肉がそこらを闊歩し、無価値な紙の束で尺度を測り無為な争いを広げる。数だけが増え一向に止むことはない、まさに地獄だ……君もそう思わないか?」
確かに、俺はそう思った事幾度もある。
世に寄生するウジ虫を幾ら屠った所で国が変わる片鱗を見せた事は一度も無かった。減るどころか寧ろ増える一方で遂には僕の事を『死神』と崇拝し大量虐殺を行った教団もいた。
俺は一体何をやっているのか、何が楽しくてこんな事をしているのか分からなくなった。
確かに生きる事に比べれば只ひたすらの『無』の方が幾分かマシなのかもしれない。
「さて、本題に入ろう、僕はこれから君に罰を与えなければならない」。
「……罰?神みたいなこと言うんだな」。
「あぁ、残念ながらね、立場上しょうがないんだ。僕は『存在』である前に『送り人』であるから」。
話の魂胆が見えない。
「死の後はひたすらの『無』だと君は言った、それに『送り人』とは何だ?一体何を何処へ送るんだ」。
「『何』は君、『何処』は、う~ん、そうだな……元とは異なる世界にしようか」。
「………なんの話だ、ふざけるな」。
「ふざけてなんて無いさ大マジメさ、ははっ、これは罰だ多くの人間を殺した罰」。
「お前の理論なら、俺は大勢を救った事になるじゃないか」。
「そうだね、これはあくまでもマニュアル通りの事務仕事さ。僕は大変心苦しいよ」。
「それは嘘だ、お前は明らかに楽しんでいる」。
───あはっバレた?敵わないなぁ
『存在』からスーッと、神経が、一つところに凝結したような気味悪さを感じた。
「いやぁ、ほらね?君みたいな数奇な人生を辿る人間も中々居ないだろ?このまま君を『無』に返すなんて勿体無いったりゃありゃしないじゃないか」。
「俺はお前の玩具になんかなるつもりは無い」。
「いいや、なるね、君に抗うすべは無い、君は地獄行きさ、あはははは!!✕✕君第二の人生に幸あれ」。
「この───ペテン師が」。
「……あぁ、よく言われる」。
───次の瞬間、俺は見知らぬゴミ捨て場で目を冷ました。
0
あなたにおすすめの小説
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
【完結】悪役令嬢はわたしの大事なともだちだった
ariya
ファンタジー
私・川本みやは、ネット小説『私のプリンセス物語』の世界に転生した。
しかも推しのアントワーヌ王子と結ばれるヒロイン・マリーに!
やったー! これで幸せな王子様エンド……のはずだった。
でも、目の前に現れた悪役令嬢・セーラ・シトルリンは、
原作みたいに高飛車でも冷酷でもなかった。
「鼻血が出てるわ。……ほら、ハンカチ」
「姿勢が崩れてる。放課後、私の部屋に来なさい」
「泣かないで。私がそばにいるから」
優しくて、少し不器用で、私のことばかり心配してくれる。
……これ、悪役令嬢じゃなくない?
気づけば私は、セーラを「ざまぁしたい」どころか、
彼女を傷つけたくないと思っていた。
これは復讐の物語じゃない。
悪役令嬢を断罪するはずの私が、
初めて彼女の手を握り返した。
――これは、断罪する物語じゃない。
赦しと友情が紡ぐ、優しいハッピーエンド。
___
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる