夏は短し、恋せよ乙女

ぽんず

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「・・・。」

 

「・・・。」

 

「お二人とも険しい顔をしていますね。」

 

とある豪邸に3人が集結していた。

 

「なんで東條響が梨々花の家にいるのよ。」

 

「梨々花さん。早速名前を憶えていただけたのですね。」

 

光栄です。東條響はそう笑顔で返した。

 

「梨々花はお母様に話があるの。」

 

「あら~私と二人で話がしたいなんて。珍しいわね。」

 

「濁さないで。」

 

梨々花の表情は更に険しくなる。

 

「そんなに睨んでも怖くないわよ。」

 

「梨々花の気持ちは決まったわ。」

 

「気持ち?」

 

亮子はとぼけたように聞き返す。

 

「梨々花は幸太郎君が好き。東條響と婚約なんてできないわ。」

 

梨々花の予想とは別に、亮子は余裕に笑って見せた。

 

「あら、そうなの。じゃあ幸太郎君を落とせるの?」

 

“落とす?”

 

“おとす?”

 

“OTOSU?”

 

「どういうこと?」

 

「幸太郎君とやらを惚れさせることができるの?」

 

「なっ!!」

 

梨々花はみるみるうちに顔を赤くする。

 

(惚れさせるだなんて!)

 

そんなことは考えていなかった。

やっとつい先ほど自分の気持ちに気付いた梨々花にとって、頭の回転はそこまで回っていなかった。

 

「梨々花、これは条件よ。」

 

亮子の条件は、佐々木幸太郎を梨々花に惚れさせること。

 

「そんなの・・。」

 

考えてもいなかった。

 

「これが出来ないのなら、婚約は破棄しないわ。」

 

分かったわね?

 

亮子は意地悪にそう語った。

 

「いつも自信満々にしているのに、そんなこともできないの?」

 

亮子の言葉が梨々花の心に火をつけた瞬間であった。

 

梨々花にできないですって?

この夏目梨々花が不可能ですって?

梨々花は無敵・最強なのよ?

 

近頃は忘れていた。

恋心を前に自分を見失っていた。

 

「わかったわ。梨々花に不可能はないわ。お母様こそ、その条件忘れないでね?」

 

亮子は返事の代わりにニッコリと笑った。

 

「交渉成立ね。」

 

そう言い放つと、梨々花は部屋を後にした。

 

 

「亮子さん、ひどいですね。僕だけ邪魔者じゃないですか。」

 

「あら。そんなこと気にするタイプだった?」

 

東條はさわやかな笑顔を作り上げる。

 

「僕は心が広いほうですけど。今の宣戦布告はショックですね。」

 

「もしかして、本当に梨々花に惚れちゃった?」

 

「さぁ、それはどうですかね~。」

 

「あなたって昔からよくわからないわね。」

 

「亮子さんには言われたくないですよ。では、僕もそろそろ失礼します。」

 

「健闘を祈るわ。」

 

亮子の言葉を聞くと、東條も部屋を出ていった。

 

「さてと。あの子がどう出るか、楽しみだわ。」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「・・。」

 

「梨々花様、表情がゾンビみたいでございます。」

 

桐、あんたはいつから主人にそんな事を言うようになったの・・。

 

梨々花は部屋に戻るなり、桐に事情を説明した。

 

「それは、梨々花様も思い切ったことを・・。」

 

桐は一瞬驚いた顔をするが、すぐに冷静に戻る。

 

「そう言い切ったからには、何か策があるのですか?」

 

「よくぞ聞いてくれたわね。」

 

梨々花はそういうと何やら学校のバックをガサガサとあさった。

 

「じゃーん!」

 

そういって取り出したのは、麗におすすめをされた恋愛小説の3巻であった。

 

「?」

 

「梨々花には恋愛の教科書がついているわ!!」

 

梨々花のすごい自身に桐は不安になる。

 

「今回は主人公が好きな男にアプローチをする話なのよ~!!」

 

梨々花はドヤ顔で桐に本を差し出した。

 

「本当に大丈夫なのですか?」

 

「梨々花に不可能はないわ!!任せなさい!」

 

久しぶりに見る梨々花らしい姿に桐はホッとする。

 

(さすが梨々花様。)

 

「さぁ!夏休みまで時間もないし・・早速今夜は作戦会議よ!!」

 

「かしこまりました。」

 

 

その会議は夜な夜な続き、梨々花による梨々花の為のプロジェクト

 

“幸太郎君を惚れさせようプロジェクト”が静かに始動したのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

会議のせいで随分と夜更かしとなった梨々花であったが、朝は随分と早い目覚めとなった。

 

「おはようございます。梨々花様。」

 

 

「桐、どうかしら?」

 

「今日は一段とお美しいです。」

 

フフフ、梨々花は余裕の笑顔を向けた。

 

「当たり前でしょ。」

 

だって天下の梨々花様よ?

 

そういった今日の梨々花は普段と少し違っていた。

 

頬にはほんのりチークが塗られており、優しいピンク色に。

髪型は綺麗にまとめられ、ポニーテールになっていた。

 

「名付けて・・まずは見た目から大作戦よ!!」

 

ただでさえ美しい梨々花がさらに美しくなって・・

なんて罪深いのかしら!!

 

「おほほほほ~!!」

 

梨々花は上機嫌に笑っていた。

 

「昨夜調べた男性の好きな女は?というネットの記事が役に立ちましたね。」

 

「これで幸太郎君は梨々花にメロメロのはずよ!!」

 

「梨々花様まず・・」

 

「分かっているわ。昨日の事を調べて、きちんと謝罪するわ。」

 

「はい。」

 

「桐、車を回して。」

 

いざ学校という名の戦場に乗り込むわよ!!

 

梨々花は今までになく張り切って登校したのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

学校に到着すると、梨々花の変化に周囲がざわついていた。

 

「梨々花ちゃん、今日はいつにも増してかわいくないか?」

「ポニーテール!初めて見た!写真におさめたい!」

「朝からレアな姿が見えたな!!」

 

「やっぱり綺麗になったのはあの婚約者の影響なのかな?」

 

そんな声も聞こえていたが、梨々花の心はぶれなかった。

 

(フッ。庶民たち勝手に言っていなさい。)

 

 

「お!!梨々花じゃないか!」

「梨々花ちゃん~!!」

「・・。」

 

梨々花が教室へ行く途中に丁度いいタイミングで3人の親友に会った。

 

「あら、丁度3人に伝えたいことがあったのよ!」

 

そういうと梨々花は3人を人気の少ないところへ連れていき昨日の出来事と決意を伝える。

 

「梨々花ちゃん~!!」

 

自分の事のようにはしゃぐ麗は梨々花に飛びついた。

 

「麗にはいろいろ心配をかけたわね。もう大丈夫よ。」

 

梨々花は今日からやる気に満ち溢れているわ。

 

「そうか!昨日から色々なことが起きたものだな!精一杯協力しよう!」

 

真琴は相変わらず熱く、メラメラとした。

 

「頼むわよ。」

 

「生徒会長としての権力も最大限に使おうじゃないか!!」

 

「・・私も応援している。」

 

4人は手を合わせる。

 

「幸太郎君を惚れさせよう大作戦~」

 

「えい!」

 

「えい・・」

 

「おー!!!」

 

4人は燃えていたのであった。

 

「とにかく梨々花は幸太郎君のところに行って昨日の事を確認してくるわ!」

 

3人は梨々花を見送り、目を合わせる。

 

「梨々花ちゃん・・やっぱりカッコいいね~!!」

 

「梨々花が恋とは、人間何がいつ起きるか分からないものだな!!」

 

「・・楽しそうね。」

 

3人はしばらく梨々花の話で盛り上がったのだった。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「幸太郎君!!」

 

5組の前、梨々花は登校してきた幸太郎を呼び止める。

 

「ああ。梨々花、おはよう。」

 

 

いつもと変わらない幸太郎の反応にホッとする。

 

「昨日は変な事言っちゃったな~と思って・・。」

 

梨々花は気まずそうに幸太郎へ視線を向ける。

 

 

「あんなことは別にいいよ。気にしてない。」

 

幸太郎は優しく話す。

 

「それで・・えっと・・その後って・・。」

 

(梨々花・・しっかり聞くのよ!!工藤礼とどうなったのか!!)

 

なかなか言葉を上手く出せない梨々花を見て幸太郎が先に話を切り出す。

 

「礼とはそんな仲じゃないから。少なくても俺に特別な感情はない。」

 

「?!」

 

幸太郎からでた言葉に梨々花は肩の力を落とす。

 

「あああ。あら、そうなの。勘違いしていたわ!!まぁ、梨々花には関係が無い事だけど!」

 

梨々花は自分でも驚いた。

 

(梨々花ったら・・全然かわいくないじゃないの!)

 

素直になるって・・なんて難しいの・・。

 

 

「梨々花には勘違いしてほしくなかったから。」

 

幸太郎のまっすぐな視線に、思わず顔が赤くなる。

 

「あ・・そう?」

 

“キーンコーンカーンコーン”

 

丁度いいタイミングでチャイムが鳴る。

 

「そろそろ戻らないと!!」

 

梨々花はそう伝えると少し残念そうに笑う。

 

「ああ、そうだな!また。」

 

“今日の夜、用事があるからメールする。”

 

別れ際、幸太郎は小さな声で梨々花に伝える。

 

梨々花の脈は自分でもわかるくらいに速くなった。

 

「わかったわ・・。待ってるわ・・。」

 

そう伝えると今後とこそ体の向きを変え、急いで自分の教室へと向かった。

 

「・・。」

 

 

(顔が熱すぎて・・これじゃあチークなんて塗る必要なかったじゃない!!)

 

梨々花は少し急ぎ足で廊下を移動しながら、頬を赤くしていた。

 

 

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