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第一話 退屈なエリアボス
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突如世界中に出現したダンジョン、人々は未開の地への好奇心を高め日々踏破に向けて挑戦し続けた。
ダンジョンの中には強大なモンスターや幾多の罠が存在しており人々の挑戦を幾度も阻害する。
だがそれすらも人々の好奇心をくすぐる糧となりダンジョンとは今、人々にとって命を懸けた娯楽施設のような役割を持っているのだろう。
もちろんダンジョンの中には貴重なアイテムや財宝が眠るといった話も聞くが、それ以上に未開のダンジョンを踏破した者には世界中から賞賛の声が集められあえて危険なダンジョンを目指す者も少なくない。
そしてそのダンジョン攻略のプロとしてその期待を一挙に背負う者たちがいる。
女神より天啓を授かり、産まれながらに他の者とは一線を凌駕する力を持った者達。
人々はその者達に敬意をもってこう呼んでいる。
【勇者】
ーーーーーーーーーーー
「ふわぁぁああ.......むにゃむにゃ。」
耳元まで大きく裂けた口を目いっぱいに開き大きくあくびをする。
10mはあろうかという巨大な体躯を器用に丸め、頭を尻尾の上に乗せ、枕にしている。
鋭い猫のような眼光をショボショボさせ、ボーっと宙を見つめたまま眠い表情でたたずんでいる。
ここは世界中にあるダンジョンでも最難関との呼び声高い【ユグドラシル】の400層。
全500層からなるこのダンジョンは数多の【勇者】を葬ってきた難易度超ベリーハードなダンジョンである。
100層ごとにエリアボスが占有し勇者の進行をことごとく退けてきた。
最後に勇者が300層にたどり着いたのは今から1000年以上も前となっているくらいだ。
暗黒竜リントブルム、彼はこの【ユグドラシル】400層のエリアボスをしている。
生まれながらにこの400層のエリアボスをしているリントブルムはこの層から外に出たことがない。
来る日も来る日も来たこともない勇者を待ちわびてはそのまま寝落ちするという生活を送っている。
いつしか彼はこの階層を守る事が仕事ではなく、この階層にいる事が仕事になってしまっているのだ。
いつか来る、いや永遠に来ないかもしれないその時を待つにはあまりに長い時間がたった。
その本来の目的を忘れてしまうのも無理はないという所だろう。
「ぎゃごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
寝て、起きては一人怪獣ごっこをするリントブルムからすれば、だだっ広い仕切り一つない空間で時間を使うにはいささか無理があるほどの時が流れていた。
「ごぎゃぁぁぁ!!!! がおがおがおぉぉぉ!!!!! ...........一人怪獣ごっこもなんだか飽きてきちゃった。次は何して遊ぼうかな? また30年くらい眠っちゃおうかな? あれ? さっき起きたばっかりなんだっけ?」
巨大な尻尾をフリフリしながら大きな声で独り言を話す。
リントブルムに寂しいという感覚はない。
今まで寂しくないという感覚になった事がないのだ。
なにせエリアボスの階層には他のモンスターが入ってくることはない。
リントブルムからすれば自分以外の生き物に出会った事がないのである。
寂しいという感覚がないのもうなずける。
ダンジョンの400層ほど深い階層になれば空気中に色濃く魔素が散布しているおかげでお腹も空かない。
もちろんドラゴンの時間の流れは人間とは違う。
たかが数十年の時間等、彼にとってはひと眠りの時間でしかない。
それに......
「あ! そうだ。魔王様におはようのあいさつしないと!!」
――魔王様、魔王様、おはよう。今起きたよ。今日もいつもみたいに何にもないみたいだけどね。――
心の中でそう話すリントブルム。
すると.......
―― おはようリントブルム。今回は早いお目覚めなのね。報告ありがとう。――
優しい女性の声がリントブルムの頭に広がっていく。
それは声を聞くだけで胸の中がポカポカする感じだとリントブルムは感じていた。
今はなしているのはこのダンジョン【ユグドラシル】を創造したダンジョンマスターと呼ばれる存在。
このダンジョンでは魔王様と呼ばれ敬われているが実際その姿を見た者はいない。
リントブルムも同じで姿を見たことはないが声を聞く限り、自分より少しだけ大きい優しそうなドラゴンならいいなと思っている。
――フンフン。フンフン。今日もお話聞かせてほしいな。僕、魔王様のお話が大好きなんだ。――
―― あら、うれしいわリントブルム。
それじゃあ今日はこのダンジョンができる前の外の世界のお話をしましょうか。――
――ふんふんふーん?
このダンジョンができる前? それは僕が生まれる前の話?――
――そうよ。もっともっと前の話。私が生まれるよりも前のお話よ。――
――えっ!? 魔王様にも生まれる前があったの?――
―― フフフ。そうよ。うーんと前のお話よ。興味ないかしら? ――
――そんなことないよ。聞かせてーフンフン。――
鼻をフンフンいわせ話を催促するリントブルム。
彼にとって魔王の話が世界のすべてだった。
外を知らないリントブルムにとってそれが知識のすべてである。
彼は魔王の話を聞きながら頭の中で映像を作り上げる。
でたらめな部分も数多くあるが、リントブルムにとってその映像が世界の姿なのだ。
今日の魔王の話はこの【ユグドラシル】の外の世界の話だった。
このダンジョンに攻め入ってくる人間の話は何度か聞いたことがあった。
人間は”名誉”ってもののために自分たちを殺そうとダンジョンに入ってくる、
自分たちも殺されないように戦っている。
そう教えられた。
リンドブルムにとって”名誉”という言葉はよくわからなかったが魔王から「褒めてほしいのよ。」と聞かされた時はよく理解できた。
それは自身も同じことだし魔王に褒めてもらえるなら何でもやってあげたいと思うものだと思った。
(人間も魔王様みたいな人に褒めてもらいたいんだな。)
リントブルムは人間と仲良くできるかもしれないと思ったものだ。
今回の魔王の話はとても興味深かった。
ダンジョンの外は今いる部屋よりもっと広くてたくさんの生き物が生活しているのだという。
人間はそこで生活していてみんなで協力し合いながら生活しているのだという。
話の途中で「生活って何?」「協力って何?」と分からない事への質問タイムを作ってくれるから魔王様の話はとても面白いのだなとリントブルムは思った。
いつかそこを見てみたい。
そこで遊んでみたい。
リントブルムはそう思うようになった。
そこからまた数年の月日がたったある日、事件は起こった。
ダンジョンの中には強大なモンスターや幾多の罠が存在しており人々の挑戦を幾度も阻害する。
だがそれすらも人々の好奇心をくすぐる糧となりダンジョンとは今、人々にとって命を懸けた娯楽施設のような役割を持っているのだろう。
もちろんダンジョンの中には貴重なアイテムや財宝が眠るといった話も聞くが、それ以上に未開のダンジョンを踏破した者には世界中から賞賛の声が集められあえて危険なダンジョンを目指す者も少なくない。
そしてそのダンジョン攻略のプロとしてその期待を一挙に背負う者たちがいる。
女神より天啓を授かり、産まれながらに他の者とは一線を凌駕する力を持った者達。
人々はその者達に敬意をもってこう呼んでいる。
【勇者】
ーーーーーーーーーーー
「ふわぁぁああ.......むにゃむにゃ。」
耳元まで大きく裂けた口を目いっぱいに開き大きくあくびをする。
10mはあろうかという巨大な体躯を器用に丸め、頭を尻尾の上に乗せ、枕にしている。
鋭い猫のような眼光をショボショボさせ、ボーっと宙を見つめたまま眠い表情でたたずんでいる。
ここは世界中にあるダンジョンでも最難関との呼び声高い【ユグドラシル】の400層。
全500層からなるこのダンジョンは数多の【勇者】を葬ってきた難易度超ベリーハードなダンジョンである。
100層ごとにエリアボスが占有し勇者の進行をことごとく退けてきた。
最後に勇者が300層にたどり着いたのは今から1000年以上も前となっているくらいだ。
暗黒竜リントブルム、彼はこの【ユグドラシル】400層のエリアボスをしている。
生まれながらにこの400層のエリアボスをしているリントブルムはこの層から外に出たことがない。
来る日も来る日も来たこともない勇者を待ちわびてはそのまま寝落ちするという生活を送っている。
いつしか彼はこの階層を守る事が仕事ではなく、この階層にいる事が仕事になってしまっているのだ。
いつか来る、いや永遠に来ないかもしれないその時を待つにはあまりに長い時間がたった。
その本来の目的を忘れてしまうのも無理はないという所だろう。
「ぎゃごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!」
寝て、起きては一人怪獣ごっこをするリントブルムからすれば、だだっ広い仕切り一つない空間で時間を使うにはいささか無理があるほどの時が流れていた。
「ごぎゃぁぁぁ!!!! がおがおがおぉぉぉ!!!!! ...........一人怪獣ごっこもなんだか飽きてきちゃった。次は何して遊ぼうかな? また30年くらい眠っちゃおうかな? あれ? さっき起きたばっかりなんだっけ?」
巨大な尻尾をフリフリしながら大きな声で独り言を話す。
リントブルムに寂しいという感覚はない。
今まで寂しくないという感覚になった事がないのだ。
なにせエリアボスの階層には他のモンスターが入ってくることはない。
リントブルムからすれば自分以外の生き物に出会った事がないのである。
寂しいという感覚がないのもうなずける。
ダンジョンの400層ほど深い階層になれば空気中に色濃く魔素が散布しているおかげでお腹も空かない。
もちろんドラゴンの時間の流れは人間とは違う。
たかが数十年の時間等、彼にとってはひと眠りの時間でしかない。
それに......
「あ! そうだ。魔王様におはようのあいさつしないと!!」
――魔王様、魔王様、おはよう。今起きたよ。今日もいつもみたいに何にもないみたいだけどね。――
心の中でそう話すリントブルム。
すると.......
―― おはようリントブルム。今回は早いお目覚めなのね。報告ありがとう。――
優しい女性の声がリントブルムの頭に広がっていく。
それは声を聞くだけで胸の中がポカポカする感じだとリントブルムは感じていた。
今はなしているのはこのダンジョン【ユグドラシル】を創造したダンジョンマスターと呼ばれる存在。
このダンジョンでは魔王様と呼ばれ敬われているが実際その姿を見た者はいない。
リントブルムも同じで姿を見たことはないが声を聞く限り、自分より少しだけ大きい優しそうなドラゴンならいいなと思っている。
――フンフン。フンフン。今日もお話聞かせてほしいな。僕、魔王様のお話が大好きなんだ。――
―― あら、うれしいわリントブルム。
それじゃあ今日はこのダンジョンができる前の外の世界のお話をしましょうか。――
――ふんふんふーん?
このダンジョンができる前? それは僕が生まれる前の話?――
――そうよ。もっともっと前の話。私が生まれるよりも前のお話よ。――
――えっ!? 魔王様にも生まれる前があったの?――
―― フフフ。そうよ。うーんと前のお話よ。興味ないかしら? ――
――そんなことないよ。聞かせてーフンフン。――
鼻をフンフンいわせ話を催促するリントブルム。
彼にとって魔王の話が世界のすべてだった。
外を知らないリントブルムにとってそれが知識のすべてである。
彼は魔王の話を聞きながら頭の中で映像を作り上げる。
でたらめな部分も数多くあるが、リントブルムにとってその映像が世界の姿なのだ。
今日の魔王の話はこの【ユグドラシル】の外の世界の話だった。
このダンジョンに攻め入ってくる人間の話は何度か聞いたことがあった。
人間は”名誉”ってもののために自分たちを殺そうとダンジョンに入ってくる、
自分たちも殺されないように戦っている。
そう教えられた。
リンドブルムにとって”名誉”という言葉はよくわからなかったが魔王から「褒めてほしいのよ。」と聞かされた時はよく理解できた。
それは自身も同じことだし魔王に褒めてもらえるなら何でもやってあげたいと思うものだと思った。
(人間も魔王様みたいな人に褒めてもらいたいんだな。)
リントブルムは人間と仲良くできるかもしれないと思ったものだ。
今回の魔王の話はとても興味深かった。
ダンジョンの外は今いる部屋よりもっと広くてたくさんの生き物が生活しているのだという。
人間はそこで生活していてみんなで協力し合いながら生活しているのだという。
話の途中で「生活って何?」「協力って何?」と分からない事への質問タイムを作ってくれるから魔王様の話はとても面白いのだなとリントブルムは思った。
いつかそこを見てみたい。
そこで遊んでみたい。
リントブルムはそう思うようになった。
そこからまた数年の月日がたったある日、事件は起こった。
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