上 下
12 / 23

第12話 海底

しおりを挟む
 



勢いよく飛び込んだ俺は水に入った瞬間驚いた。
 なんだこれ!? 水中で魚みたいに動けるぞ......


 ......すまん。言い過ぎた。そんなには動けん。
 でも明らかに前より泳ぎがうまくなってる。

 そんなにすぐうまくなるのか?
 これってスキルの力なのかな?

 スキル【素潜り】の力だとするとものすごい。
 下手するとオリンピックとか出ても勝負になるんじゃないか?......

 ......わかってる。言い過ぎたな。

 ただ、たった一つのスキルでここまで能力が上がるのならスキルもバカにはできないな。
 俺は大きく肺に息を溜め勢いよく水の中へ潜っていった。

 サメが出現するまでのリミットは3分。
 一回ずつ区切ってイカダに上がるのがセーフティーラインだと思う。
 俺の息的に1分持てば位に思うので戻る時間も考えると1回が丁度いい時間だな。

 しかしすごい。一蹴り一蹴り進んでいくのを実感できる。
 あっという間に10mはある海底にまでたどり着いてしまった。

 イカダからでは確認できなかったが意外に浅いんだな。
 この深度で底を確認できないんだからやっぱり現実感のないと言わざるおえない。
 しかも10mくらいしか潜ってないのに海底はすごく暗かった。

 見回してみるとたくさんのゴミ.....じゃない資材が散乱していた。
 有難く使わせて頂きます。

 なんかこういうの見ると自然環境とか考えちゃうな。

 ひとまず収拾を進めねば。
 水中メガネがないからある程度ぼやけて見えるが透明度が高いせいか見えない事はない。
 この透明度でなんでイカダの上から海底が見えないのか? 仕様ってやつだね。

 手探りで材料を回収していく。


 ”石を手に入れました”
 ”砂を手に入れました”
 ”粘土を手に入れました”


 明らかに使えそうな物がどんどん手に入る。
 うぉーーー!!! これは潜って正解だ。
 あそこにもたくさんあるぞ。


 ”ハマグリを手に入れました”
 ”アサリを手に入れました”
 ”ホタテを手に入れました”


 うぉーーーしゃーーー!!!!
 貝だ!!! 食料だ!!!
 これなら飢え死にしないですむ。
 まだまだたくさんありそうだ。なんかすごいテンション上がった。

 でも待てよ。
 危なかった。
 これ絶対、殻あけようとしたら消滅するパターンだ。
 ぬか喜びしてしまった。

 ホタテで冷静になったわ。
 何でもありだなこの世界わ。

 そのまま手の届くところを回収していると―――


 ”鉄を手に入れました”


 来た......
 ついに......
 胸が高鳴る。


 ”鉄を手に入れました”
 ”鉄を手に入れました”
 ”鉄を手に入れました”


 その後、2個、3個、4個とどんどん見つかる鉄。
 めっちゃうれしい。
 これで貝も食べれるし魚も食べれるはず。

 そんなに探してないのにメチャメチャ大収穫だった。
 たいして時間もたってないのにこれなら楽勝だな......


 ......時間?
 やば......


 ウキウキし過ぎて完全に時間考えてなかった。
 息も全然苦しくなかったから......

 俺は一瞬冷静に俯瞰してから、慌てて海面のイカダを目指す。
 やばい。スキルのせいで息まで長く止めれるようになってるとは思わなかった。

 恐らくそろそろ―――
 必死に海面を目指しながら後ろを振り返ると―――


 やっぱりいた。
 悠々と、だがまっすぐ俺の方へ向かって泳いでくる巨大サメ。

「ブババババババババ!!!!!!」

 俺は勢いよく肺の空気を吐き出しながら叫び、そのまま勢いよく海面から顔を出した。
 失った空気を肺に取り込み、辺りを見渡す。


「マジかよ!!!」


 採取が楽しくてイカダからかなり離れてしまった。
 全速力で水を掻く。

 後ろから豪快な水しぶきの音が聞こえ始めた。
 とてもじゃないがイカダまで逃げきれない。

 俺はとっさにメニューバーを開き、どうにかしてくれるものはないかと焦り探す。
 物凄いスピードで作成メニューをスクロールしていく。

 やばいやばいやばいやばい―――

 もはやしぶきの音はすぐ近くまで来ていた。
 これしかない。

 それを作成しふり返った瞬間、大きな黒い穴とギザギザの刃が俺の目の前にあった。


 あっ死んだ。


 その後、右腕に衝撃が走りそっちの方へ体が引っ張られた。
 目の前は水が赤く染まっていく。


 噛まれた!


 俺はサメにおもちゃのように左右に振り回されながらすごい速さで引きずられる。

 あぁ、もうだめだ。
 俺はすべてをあきらめ、体の力を抜き、静かに目を閉じた。

 もうあきらめよう。
 よく頑張った。痛いのは嫌だから楽に殺してほしい。
 まだ痛みはないけどすぐに襲ってくるんだろうな。

 なんだか力を抜くとすべてが静かになるな。
 あんなに振り回されてたのにいまはほら......


 ほら?


 目を開けると、俺は一人でプカプカ浮いていた。
 少し離れたところでサメがバシャバシャと暴れている。

 あいつ何してんだ?

 よく見るとサメの上あごからヤリが突き破り辺りを血に染めていた。
 そのヤリを抜こうと必死に暴れるサメ。


 あぁよかった。間に合ったんだ。


 俺はあの時、目に飛び込んできたヤリを選択し作成した。
【鍛冶】のレベルを上げたことで作成できるようになっており、鉄を入手したことで木の板と合わせて作成可能となっていたのだ。

 俺が引っ張られた感触もヤリが突き刺さったことによるものでヤリを握ってたから引っ張られたけど力を抜いて離したから今こうやってプカプカ浮いてるんだろう。


 てか呑気してる場合じゃねぇ!!


 俺はサメが暴れてる間に急いでイカダに戻る。
 イカダの上まで無事上れた時にはもうサメの姿はなかった。




しおりを挟む

処理中です...