ダンジョンはモンスターでいっぱい!! ~スライムと成り上がる最弱冒険者の物語〜

なか

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茶番劇

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「なんだと!! この僕が負けている!? どういうことだ?」

 何と簡単な事か。
 今クラウスは自らアレンの手の平で転がり始めたのである。

「そのままの意味だ。」

 アレンの言葉にクラウスは憤怒し、剣をアレンに突き立てる。

「まぁ話を聞けよ。クラウスはなぜ俺と戦っているんだ?」
「なぜだと!? もちろんニアのためだ!!」
「俺とニアがパーティーならニアに危険が及ぶ?」
「そうだとも。君の実力ではニアは守れない。」
「だとしても俺と解散してもニアはクラウスとはパーティーを組まないと思うよ。」
「それでも最後にニアは笑ってくれると僕は信じている。」

 その言葉にアレンの醜悪な笑みはどんどん激しさを増す。

「ということはニアの幸せのため、笑顔のためにクラウスは戦うんだな。」
「そうだとも。何かおかしいのか!?」
「いや、ならおかしいな。ニアはパーティーを解散したくないと言っている。クラウスはニアに危険が及ぶのを嫌がっている。なのに俺に勝っても大丈夫なの?」
「何が言いたい!?」

 ここが最高潮と言わんばかりの劇場型の大根芝居。
 すでに観客のほとんどは帰ってしまい残った観客はすでに決闘を見ておらずお花見気分で酒に酔いつぶれていた。

「クラウス...考えてもごらんよ。君が俺のパーティーに入りニアを守る。ニアはこのパーティーで活動を続ける。これに何の弊害があるんだ。君が勝てば泣くのはニアだ。わかるかい?」

 この言葉にはクラウスも頭から稲妻が走るような衝撃を受け膝をついてしまう。

「いったい私は何を見せられているの?」

 ニアはあまりの猿芝居の寒さに震えが止まらない。

「だが僕は......男として君に負けるわけにはいかないんだ!!!」

 震えるヒザを押さえなんとか立ち上がるクラウス。だがアレンはその言葉を待っていたようにとどめの言葉を突き刺した。

「男として? クラウス!!! ニアの幸せはどこへ行ったんだ!! やはり君はニアではなく男のプライドが優先しているではないか!!」

「はぅぅうううわぁぁあああああ!!!!!!!!」

 体中電撃に打たれたようにのけ反りそのまま力なく倒れてしまうクラウス。
 なににそこまで確信を得ているのかわからないがクラウスは瞳から涙を流し悔しそうに嗚咽している。

 ゆっくりとクラウスの隣に歩んでいきアレンもヒザを地面につける。

「男なら強くなれ。プライドなど捨てれるように強くな。」

 そう言うと肩をポンと叩きクラウスを後にするアレン。

「師匠......参った......」

 もう何が何だかわからないがクラウスは涙を止めれぬまま、なぜか師匠になったアレンに降伏するのだった。

「私は恐ろしい二人とパーティーになってしまった......」

 ガタガタ震える肩を自ら抱き、すでに誰もいなくなった広場で震えるニアであった。






 ーーーーーーーーーーーーーーー







「なにあれ?」

 ニアが腰に手を当て機嫌が悪そうにアレンに問う。

「何って......全部丸く収まっただろ?」
「丸くってあんたね......」

 ニアはあきれた目でせっせと冒険の支度をするクラウスを横目で見ると はぁ~ と深いため息を漏らす。

「師匠!! 準備はあらかた終わったよ。さぁ冒険に行こうか!!」

 クラウスは生きる意味を見つけたニートがごとく張り切りが目に付く。

「なぁクラウス...その、師匠ってやめてくれないか。」

 アレンは申し訳なさそうにクラウスに話しかける。

「君は僕の心だけじゃなく魂までをも変えてしまった。これを師匠と呼ばず何と呼ぶ。」

 全く意味の分からない説明だ。

「わかったから。じゃあこれは師匠からの命令だ。今から俺の事はアレンでいい。わかったか。」
「ん~仕方ない。師匠がそういうのなら...了解したアレン君。」

 アレンでいいと言ったのに...
 するとニアがアレンの腕をつかみ自分の方へ引っ張り込み、アレンの耳元で小声で話す。

「で、そうすんの!? ゴンちゃんとディアちゃんのこと。」

 ニアの胸が腕に当たる。
 この細い体からなぜこんな幸せの丘が...
 幸せな顔をしたアレンを見てニアは ちょっと聞いてるの? と再度アレンに問いかける。

「へっ!? あぁ、それな。忘れてた。」
「やっぱり...何にも考えてないんじゃないかって思ってたのよまったく...」
「たぶん大丈夫だよ。クラウスは。」
「そうだといいわね。とりあえず見せるのはダンジョンに入ってからにしましょ。
 それならすぐに告げ口とかはできないから。」
「告げ口って......」

 苦笑いを浮かべるアレンにニアは再度きつく ダンジョンに入ってからね! と念押しをかけるのだった。






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