29 / 58
茶番劇
しおりを挟む
「なんだと!! この僕が負けている!? どういうことだ?」
何と簡単な事か。
今クラウスは自らアレンの手の平で転がり始めたのである。
「そのままの意味だ。」
アレンの言葉にクラウスは憤怒し、剣をアレンに突き立てる。
「まぁ話を聞けよ。クラウスはなぜ俺と戦っているんだ?」
「なぜだと!? もちろんニアのためだ!!」
「俺とニアがパーティーならニアに危険が及ぶ?」
「そうだとも。君の実力ではニアは守れない。」
「だとしても俺と解散してもニアはクラウスとはパーティーを組まないと思うよ。」
「それでも最後にニアは笑ってくれると僕は信じている。」
その言葉にアレンの醜悪な笑みはどんどん激しさを増す。
「ということはニアの幸せのため、笑顔のためにクラウスは戦うんだな。」
「そうだとも。何かおかしいのか!?」
「いや、ならおかしいな。ニアはパーティーを解散したくないと言っている。クラウスはニアに危険が及ぶのを嫌がっている。なのに俺に勝っても大丈夫なの?」
「何が言いたい!?」
ここが最高潮と言わんばかりの劇場型の大根芝居。
すでに観客のほとんどは帰ってしまい残った観客はすでに決闘を見ておらずお花見気分で酒に酔いつぶれていた。
「クラウス...考えてもごらんよ。君が俺のパーティーに入りニアを守る。ニアはこのパーティーで活動を続ける。これに何の弊害があるんだ。君が勝てば泣くのはニアだ。わかるかい?」
この言葉にはクラウスも頭から稲妻が走るような衝撃を受け膝をついてしまう。
「いったい私は何を見せられているの?」
ニアはあまりの猿芝居の寒さに震えが止まらない。
「だが僕は......男として君に負けるわけにはいかないんだ!!!」
震えるヒザを押さえなんとか立ち上がるクラウス。だがアレンはその言葉を待っていたようにとどめの言葉を突き刺した。
「男として? クラウス!!! ニアの幸せはどこへ行ったんだ!! やはり君はニアではなく男のプライドが優先しているではないか!!」
「はぅぅうううわぁぁあああああ!!!!!!!!」
体中電撃に打たれたようにのけ反りそのまま力なく倒れてしまうクラウス。
なににそこまで確信を得ているのかわからないがクラウスは瞳から涙を流し悔しそうに嗚咽している。
ゆっくりとクラウスの隣に歩んでいきアレンもヒザを地面につける。
「男なら強くなれ。プライドなど捨てれるように強くな。」
そう言うと肩をポンと叩きクラウスを後にするアレン。
「師匠......参った......」
もう何が何だかわからないがクラウスは涙を止めれぬまま、なぜか師匠になったアレンに降伏するのだった。
「私は恐ろしい二人とパーティーになってしまった......」
ガタガタ震える肩を自ら抱き、すでに誰もいなくなった広場で震えるニアであった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「なにあれ?」
ニアが腰に手を当て機嫌が悪そうにアレンに問う。
「何って......全部丸く収まっただろ?」
「丸くってあんたね......」
ニアはあきれた目でせっせと冒険の支度をするクラウスを横目で見ると はぁ~ と深いため息を漏らす。
「師匠!! 準備はあらかた終わったよ。さぁ冒険に行こうか!!」
クラウスは生きる意味を見つけたニートがごとく張り切りが目に付く。
「なぁクラウス...その、師匠ってやめてくれないか。」
アレンは申し訳なさそうにクラウスに話しかける。
「君は僕の心だけじゃなく魂までをも変えてしまった。これを師匠と呼ばず何と呼ぶ。」
全く意味の分からない説明だ。
「わかったから。じゃあこれは師匠からの命令だ。今から俺の事はアレンでいい。わかったか。」
「ん~仕方ない。師匠がそういうのなら...了解したアレン君。」
アレンでいいと言ったのに...
するとニアがアレンの腕をつかみ自分の方へ引っ張り込み、アレンの耳元で小声で話す。
「で、そうすんの!? ゴンちゃんとディアちゃんのこと。」
ニアの胸が腕に当たる。
この細い体からなぜこんな幸せの丘が...
幸せな顔をしたアレンを見てニアは ちょっと聞いてるの? と再度アレンに問いかける。
「へっ!? あぁ、それな。忘れてた。」
「やっぱり...何にも考えてないんじゃないかって思ってたのよまったく...」
「たぶん大丈夫だよ。クラウスは。」
「そうだといいわね。とりあえず見せるのはダンジョンに入ってからにしましょ。
それならすぐに告げ口とかはできないから。」
「告げ口って......」
苦笑いを浮かべるアレンにニアは再度きつく ダンジョンに入ってからね! と念押しをかけるのだった。
何と簡単な事か。
今クラウスは自らアレンの手の平で転がり始めたのである。
「そのままの意味だ。」
アレンの言葉にクラウスは憤怒し、剣をアレンに突き立てる。
「まぁ話を聞けよ。クラウスはなぜ俺と戦っているんだ?」
「なぜだと!? もちろんニアのためだ!!」
「俺とニアがパーティーならニアに危険が及ぶ?」
「そうだとも。君の実力ではニアは守れない。」
「だとしても俺と解散してもニアはクラウスとはパーティーを組まないと思うよ。」
「それでも最後にニアは笑ってくれると僕は信じている。」
その言葉にアレンの醜悪な笑みはどんどん激しさを増す。
「ということはニアの幸せのため、笑顔のためにクラウスは戦うんだな。」
「そうだとも。何かおかしいのか!?」
「いや、ならおかしいな。ニアはパーティーを解散したくないと言っている。クラウスはニアに危険が及ぶのを嫌がっている。なのに俺に勝っても大丈夫なの?」
「何が言いたい!?」
ここが最高潮と言わんばかりの劇場型の大根芝居。
すでに観客のほとんどは帰ってしまい残った観客はすでに決闘を見ておらずお花見気分で酒に酔いつぶれていた。
「クラウス...考えてもごらんよ。君が俺のパーティーに入りニアを守る。ニアはこのパーティーで活動を続ける。これに何の弊害があるんだ。君が勝てば泣くのはニアだ。わかるかい?」
この言葉にはクラウスも頭から稲妻が走るような衝撃を受け膝をついてしまう。
「いったい私は何を見せられているの?」
ニアはあまりの猿芝居の寒さに震えが止まらない。
「だが僕は......男として君に負けるわけにはいかないんだ!!!」
震えるヒザを押さえなんとか立ち上がるクラウス。だがアレンはその言葉を待っていたようにとどめの言葉を突き刺した。
「男として? クラウス!!! ニアの幸せはどこへ行ったんだ!! やはり君はニアではなく男のプライドが優先しているではないか!!」
「はぅぅうううわぁぁあああああ!!!!!!!!」
体中電撃に打たれたようにのけ反りそのまま力なく倒れてしまうクラウス。
なににそこまで確信を得ているのかわからないがクラウスは瞳から涙を流し悔しそうに嗚咽している。
ゆっくりとクラウスの隣に歩んでいきアレンもヒザを地面につける。
「男なら強くなれ。プライドなど捨てれるように強くな。」
そう言うと肩をポンと叩きクラウスを後にするアレン。
「師匠......参った......」
もう何が何だかわからないがクラウスは涙を止めれぬまま、なぜか師匠になったアレンに降伏するのだった。
「私は恐ろしい二人とパーティーになってしまった......」
ガタガタ震える肩を自ら抱き、すでに誰もいなくなった広場で震えるニアであった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「なにあれ?」
ニアが腰に手を当て機嫌が悪そうにアレンに問う。
「何って......全部丸く収まっただろ?」
「丸くってあんたね......」
ニアはあきれた目でせっせと冒険の支度をするクラウスを横目で見ると はぁ~ と深いため息を漏らす。
「師匠!! 準備はあらかた終わったよ。さぁ冒険に行こうか!!」
クラウスは生きる意味を見つけたニートがごとく張り切りが目に付く。
「なぁクラウス...その、師匠ってやめてくれないか。」
アレンは申し訳なさそうにクラウスに話しかける。
「君は僕の心だけじゃなく魂までをも変えてしまった。これを師匠と呼ばず何と呼ぶ。」
全く意味の分からない説明だ。
「わかったから。じゃあこれは師匠からの命令だ。今から俺の事はアレンでいい。わかったか。」
「ん~仕方ない。師匠がそういうのなら...了解したアレン君。」
アレンでいいと言ったのに...
するとニアがアレンの腕をつかみ自分の方へ引っ張り込み、アレンの耳元で小声で話す。
「で、そうすんの!? ゴンちゃんとディアちゃんのこと。」
ニアの胸が腕に当たる。
この細い体からなぜこんな幸せの丘が...
幸せな顔をしたアレンを見てニアは ちょっと聞いてるの? と再度アレンに問いかける。
「へっ!? あぁ、それな。忘れてた。」
「やっぱり...何にも考えてないんじゃないかって思ってたのよまったく...」
「たぶん大丈夫だよ。クラウスは。」
「そうだといいわね。とりあえず見せるのはダンジョンに入ってからにしましょ。
それならすぐに告げ口とかはできないから。」
「告げ口って......」
苦笑いを浮かべるアレンにニアは再度きつく ダンジョンに入ってからね! と念押しをかけるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる