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082.完
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高等学院時代、既に父上は無表情だったらしい。
近寄りがたさは健在で、この質問にも回答はないと思われた。
ダメ元で聞いたら、まさかの即答で、それが起因となって婚約も決まったと母上は語る。
「詳しく聞けば、綺麗さならあたし、可愛さなら王妃様というのが、正しい回答でしたけどね。王妃様は、そのときのことを少し根に持っておられるだけなのよ」
しかしその「少し」が憶測を呼び、今の社交界に至る。
「王妃様も、結果としてウッドワード家の敵対勢力を煽ってしまったことを、気にしておられるわ。けど旦那様はそれを利用することにしたの。王妃派を介して、敵対勢力を監視できるようにね」
だから、誘拐事件に関わった者もすぐにあぶり出せるわ、と微笑む母上は息子の僕から見ても綺麗だった。
母上が言った通り、ほどなくして仮面の男と繋がりがあった者たちは、失脚することになる。
これで夜会でも、僕に面と向かって突っかかってくる者は減るだろうと。
減るだけで、いなくならないところが貴族社会らしい。
こうして僕の誘拐事件が、一件落着したのはいい。
そのお祝いの席が「お花畑に集まった妖精たちの会」なのは、どうかと思う。
身内だけでおこなわれるはずが、僕の護衛になったエリックがアルフレッドに漏らしたことで、観客が増えることになったし。
「おおお、お兄様? とても綺麗だ!」
「そこはお兄様だと断定して欲しい」
しばらく呆然と僕を見ていたアルフレッドが声を上げる。
「当たり前でしょう? わたくしのお兄様なんだから」
「手紙には、わたくしたちのって書いてただろ!?」
「冒頭に、事実をはっきり記しておいたはずですけど?」
距離が縮まったかと思いきや、ヴィヴィアンとアルフレッドは相変わらずだ。
今日はお祝いということで、デビュタント前だけど同席を許されている。
「ルーファスは嫁に出さないからな!」
「旦那様、ルーファスは跡取りでしてよ」
遂には父上までとんちんかんなことを言い出して、頭痛を覚える。
「……ルーファス、綺麗だ」
「ありがとう、エリック。全然嬉しくない」
褒められても喜べないのは、僕の心が荒んでいるせいだろうか。
いけない、謙虚のオオカミにエサをやらないと。
ふと視線を向けた先には、未だに固まっているテディの姿があった。
テディは僕と目が合うと、ようやく再起動する。
「まるで朝露が滴る白百合みたいだ。花の妖精に、男女は関係ないんだな」
「あ、ありがとう……」
テディの詩的な表現に頬を引きつらせる僕に対し、ヴィヴィアンは手を叩いて喜んだ。
「まぁ、とても素敵ですわ! どこぞの赤毛とは大違いですわね」
「オレも綺麗だって言ったぞ!?」
「わかっていませんわね」
ケンカするほど仲が良い、と言っていいんだろうか。
二人とも素直になれない点については、似通ってるように思う。
「殿下、ヴィーも褒めてください」
「うん? ヴィヴィアンも綺麗だぞ」
「どこが綺麗ですか?」
「えっと、長い髪は艶がのっているし、青い瞳は透き通ってるし」
僕が質問を重ねると、アルフレッドはヴィヴィアンを見ながら、たどたどしく答える。
「それってお兄様と同じところではありませんの?」
険のある言い方だった。
けれど、ヴィヴィアンはいつかの父上のように、顔を真っ赤にしている。
僕はそっとアルフレッドからヴィヴィアンを隠した。
自分で仲を取り持っておいてなんだけど、ヴィヴィアンにはまだ色恋は早い気がするんだ。
近寄りがたさは健在で、この質問にも回答はないと思われた。
ダメ元で聞いたら、まさかの即答で、それが起因となって婚約も決まったと母上は語る。
「詳しく聞けば、綺麗さならあたし、可愛さなら王妃様というのが、正しい回答でしたけどね。王妃様は、そのときのことを少し根に持っておられるだけなのよ」
しかしその「少し」が憶測を呼び、今の社交界に至る。
「王妃様も、結果としてウッドワード家の敵対勢力を煽ってしまったことを、気にしておられるわ。けど旦那様はそれを利用することにしたの。王妃派を介して、敵対勢力を監視できるようにね」
だから、誘拐事件に関わった者もすぐにあぶり出せるわ、と微笑む母上は息子の僕から見ても綺麗だった。
母上が言った通り、ほどなくして仮面の男と繋がりがあった者たちは、失脚することになる。
これで夜会でも、僕に面と向かって突っかかってくる者は減るだろうと。
減るだけで、いなくならないところが貴族社会らしい。
こうして僕の誘拐事件が、一件落着したのはいい。
そのお祝いの席が「お花畑に集まった妖精たちの会」なのは、どうかと思う。
身内だけでおこなわれるはずが、僕の護衛になったエリックがアルフレッドに漏らしたことで、観客が増えることになったし。
「おおお、お兄様? とても綺麗だ!」
「そこはお兄様だと断定して欲しい」
しばらく呆然と僕を見ていたアルフレッドが声を上げる。
「当たり前でしょう? わたくしのお兄様なんだから」
「手紙には、わたくしたちのって書いてただろ!?」
「冒頭に、事実をはっきり記しておいたはずですけど?」
距離が縮まったかと思いきや、ヴィヴィアンとアルフレッドは相変わらずだ。
今日はお祝いということで、デビュタント前だけど同席を許されている。
「ルーファスは嫁に出さないからな!」
「旦那様、ルーファスは跡取りでしてよ」
遂には父上までとんちんかんなことを言い出して、頭痛を覚える。
「……ルーファス、綺麗だ」
「ありがとう、エリック。全然嬉しくない」
褒められても喜べないのは、僕の心が荒んでいるせいだろうか。
いけない、謙虚のオオカミにエサをやらないと。
ふと視線を向けた先には、未だに固まっているテディの姿があった。
テディは僕と目が合うと、ようやく再起動する。
「まるで朝露が滴る白百合みたいだ。花の妖精に、男女は関係ないんだな」
「あ、ありがとう……」
テディの詩的な表現に頬を引きつらせる僕に対し、ヴィヴィアンは手を叩いて喜んだ。
「まぁ、とても素敵ですわ! どこぞの赤毛とは大違いですわね」
「オレも綺麗だって言ったぞ!?」
「わかっていませんわね」
ケンカするほど仲が良い、と言っていいんだろうか。
二人とも素直になれない点については、似通ってるように思う。
「殿下、ヴィーも褒めてください」
「うん? ヴィヴィアンも綺麗だぞ」
「どこが綺麗ですか?」
「えっと、長い髪は艶がのっているし、青い瞳は透き通ってるし」
僕が質問を重ねると、アルフレッドはヴィヴィアンを見ながら、たどたどしく答える。
「それってお兄様と同じところではありませんの?」
険のある言い方だった。
けれど、ヴィヴィアンはいつかの父上のように、顔を真っ赤にしている。
僕はそっとアルフレッドからヴィヴィアンを隠した。
自分で仲を取り持っておいてなんだけど、ヴィヴィアンにはまだ色恋は早い気がするんだ。
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登場人物一人一人がとても魅力溢れるキャラクターを持っているのですが、それを設定付けてしまうのではなく、主人公によって引き出されているのがとても素敵だと感じました✨✨(ノ゚∀゚)ノ
読み初めは、お父さんとヴィヴィちゃん超可愛いッッッッ!! って思ってたんですけど、登場人物が増えていく度に、ルーフェス君と打ち解けていく過程を通して、皆尊い────────✨✨✨。・゚・(ノ∀`)・゚・。ってなりましたァァ!!
取り敢えず地理教師だけは確実に滅ぶべきです(¯-¯)
とても素敵な作品に出会えて幸せですヽ(*´∀`)ノ
わーいわーい!連続してありがとうございます(´∀`*)
ショタが書きたくて書いた作品なので、読む人を選ぶかなーとは思うのですが、楽しんでいただけて何よりです!
私も佐久さんに作品を見つけていただけて幸せです!
ヴィヴィアンちゃんが可愛い────────。:+((*´艸`))+:。。:+((*´艸`))+:。
ありがとうございます!
唯一の女の子キャラです(ノ´∀`)ノ♡
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ない。ない。な・・・い。・・・ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛
( ˃ ⌑ ˂ഃ )
もっと、見守っていたかったです。
降りて来た時には、是非続編をよろしくお願いします。
ご感想ありがとうございます!一気読み嬉しいです(´∀`*)♡
えへへ、今作はショタ!と思って書いたので、ここで一区切りつけました。
このまま書き続けると、BL待ったなしになりそうなところが悩みものです←
高等学院編も楽しそうだなぁとは思っていますので、降りて来た時には続編を書かせていただきますね♡