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第4話 才能は、静かに光る
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「それじゃあとりあえずお前さんが自分の中にある魔力というものを感じ取れているかどうかだが……」
「家で魔道具を使ったことがあるのでわかります」
この村はあたしが魔道具を小売しているため、一家庭に魔道具が普通に使われている。
あまり強力なものはないが、生活を便利にする程度のものは割と溢れているね。
魔法使いは希少だから、小さな村に居着くことはそう多くないし、この村はかなり珍しい部類なんじゃないかねぇ?
年若いレイに魔道具の使用経験があるのも、多少早いが珍しいものでもない。
レイが男でさえなければの話だけれど。
しかし魔道具が暴発しなかった?男なうえにまだ子供だよ?
あたしは「ふむ」と少し考える素振りを見せたが、すぐに話を始めた。
「そうかい。それじゃあ最初は魔力量を測定するよ。測定が終わってある程度魔力があれば、次に魔力操作の繊細さを見るよ」
そう言ってレイに模様の入った木板を手渡そうとし、その手を止める。
「測定を始める前に、魔法適性について少し話しておかないとね」
この世界の魔法適正について説明を始める。
「魔法の適正には性別差がある。もちろん例外もあるけどね」
木板を受け取ろうとして空を切った手を所在なさげに戻すレイには少し申し訳なさを多少感じるけど、これはきちんと説明しないとだからね。
「一般的には男は魔力量が多く、操作が下手だ。女は魔力操作は上手いが魔力量が少ない。その一般の枠を超えられたものが所謂魔法使いと呼ばれる者達だ」
右手に持っている木板で左手の平をトントンと叩きながら続きを話す。
「更にその魔法使いの枠を超えた者は英雄という扱いを受ける」
これは本当に一握りだ。
「普通は量も操作も伸び代は少ないというのが常識だが、魔法の英雄様…………賢者様のことだね。賢者様から聞いた話だと鍛練で伸ばせたそうだね」
もっともあたしは大して伸ばせなかったけどねぇ。
「鍛練法の違いなのか、素質なのかはわからないけどね」
それとも何か別の条件があるのか。
「さて、話が脱線しちまったが男は魔力量が多いから魔力を流すときは少しずつにするんだよ。間違っても一気に流すんじゃないよ!」
とはいえこの注意は最初と2回目まで魔道具を売る際に最もと言っていい程厳重に指導をしていた。
当然初回は子供一人でお使いに来ても売らなかった。
「板の真ん中が光ったら魔力の注入は止めるんだよ。上限を超えて流し続けると破裂するからね。わかったかい?」
レイの目を覗き込んで念を押す。
魔道具を使ったことがあるとレイは言っていたが、魔道具を使うというのは本来それくらい危険な行為なのだ。
もちろん家庭でも魔道具は高い棚に置くよう周知してあるし、子供一人では扱えない作りにしてある。
レイの母にはコンパクトな例外品を売ったこともあるので恐らくそれを使ったのだろう。
本当はこの木板は相当な魔力を流し込まなければ破裂したりはしないけど、加減を誤りやすい子供には危険だからねぇ。
「わかりました」
神妙な顔で頷くレイに木板を手渡す。
「それじゃあやってみな。わかってるだろうが魔力は右手から流すんだよ。絶対に左から流すんじゃないよ」
この木板は別に右から流さなくても大丈夫なタイプだけれど、魔道具の中には右からじゃないと破裂するものもあるから右から流す癖をつけさせるんだ。
頷き、板を両手で持ち、慎重に魔力を流し始めるレイ。
すると板の中心がゆっくり光だす。
木板の中央には魔力に反応して光る魔石が取り付けられている。
「いいね。それじゃあゆっくり流す魔力を少なくしていこうか」
レイは言われた通りにゆっくりと魔力を絞って行く。
完全に止まったところで声をかける。
「今のが1等級の板だ。女は大体この等級だね」
言いつつ次の木板と交換する。
1等級の木板を光らせただけだというのにレイの目はキラッキラだ。
「じゃあ次、2等級の木板だよ」
こちらもゆっくりと魔力が流れ、真ん中が光る。
「うん、2等級以上は確定だね」
2等級の板をレイから受け取って3等級の板を渡す。
「じゃあ次は3等級だ。あたしゃこの等級だよ」
同じくゆっくりと魔力が流れ、光る。
うん?なんか随分魔力の流し方が丁寧だね……。
「よし、じゃあ次は4等級だ。男は大体この等級だね」
これも難なくクリア。
……しかし本当に丁寧だねぇ。
こりゃあ魔力操作も相当上手いんじゃないかい?
「この5等級が光ればお前さんは一般的な男より魔力量が多いってことになるよ」
あたしは5等級の板を手渡しながらレイの魔力注入を注視する。
(やっぱり間違いないね。これはもしかしたら……)
「うん?5等級も光ったのかい。あんた才能があるね」
考え事をしている間に終わってたらしい。
この時点で大半の人間より魔力量は上ということになる。
次は6等級だ。さすがにこれは光らないだろうけど。
……はぁっ?
「ちょっ!ちょちょちょちょっと待ちな!」
言われてレイはゆっくりと魔力注入を止める。
慌ててレイから木板を受け取り、紋様をまじまじと見る。
間違いない。6等級だ。
6等級が光ったということはもしかしたら7等級以上もあるかもしれない。
レイが魔力を注ぎ込む様子を見ていて思ったのだ。
抵抗を感じてなさそうだ……と。
「レイ!今日はここまでだ。続きは明日やるから絶対明日来るんだよ!」
そう一方的に言い残して、あたしは家に駆けこんだ。
オババの家の前にはぢつと手を見るレイだけが残されていた。
____________________________________________________
◆あとがき◆
インフォームドコンセントは大事
タイトルはオババ視点なので『才能』という言葉を使っていますが本当は才能ではありません
裏設定の開示は今のところ予定はありませんが、気が向いたらするかも
今回、啄木ネタを入れてみました
今後もちょいちょい入れますが、皆さんはどれくらい気づくかな?
________________________________________________________________________________________________________
「家で魔道具を使ったことがあるのでわかります」
この村はあたしが魔道具を小売しているため、一家庭に魔道具が普通に使われている。
あまり強力なものはないが、生活を便利にする程度のものは割と溢れているね。
魔法使いは希少だから、小さな村に居着くことはそう多くないし、この村はかなり珍しい部類なんじゃないかねぇ?
年若いレイに魔道具の使用経験があるのも、多少早いが珍しいものでもない。
レイが男でさえなければの話だけれど。
しかし魔道具が暴発しなかった?男なうえにまだ子供だよ?
あたしは「ふむ」と少し考える素振りを見せたが、すぐに話を始めた。
「そうかい。それじゃあ最初は魔力量を測定するよ。測定が終わってある程度魔力があれば、次に魔力操作の繊細さを見るよ」
そう言ってレイに模様の入った木板を手渡そうとし、その手を止める。
「測定を始める前に、魔法適性について少し話しておかないとね」
この世界の魔法適正について説明を始める。
「魔法の適正には性別差がある。もちろん例外もあるけどね」
木板を受け取ろうとして空を切った手を所在なさげに戻すレイには少し申し訳なさを多少感じるけど、これはきちんと説明しないとだからね。
「一般的には男は魔力量が多く、操作が下手だ。女は魔力操作は上手いが魔力量が少ない。その一般の枠を超えられたものが所謂魔法使いと呼ばれる者達だ」
右手に持っている木板で左手の平をトントンと叩きながら続きを話す。
「更にその魔法使いの枠を超えた者は英雄という扱いを受ける」
これは本当に一握りだ。
「普通は量も操作も伸び代は少ないというのが常識だが、魔法の英雄様…………賢者様のことだね。賢者様から聞いた話だと鍛練で伸ばせたそうだね」
もっともあたしは大して伸ばせなかったけどねぇ。
「鍛練法の違いなのか、素質なのかはわからないけどね」
それとも何か別の条件があるのか。
「さて、話が脱線しちまったが男は魔力量が多いから魔力を流すときは少しずつにするんだよ。間違っても一気に流すんじゃないよ!」
とはいえこの注意は最初と2回目まで魔道具を売る際に最もと言っていい程厳重に指導をしていた。
当然初回は子供一人でお使いに来ても売らなかった。
「板の真ん中が光ったら魔力の注入は止めるんだよ。上限を超えて流し続けると破裂するからね。わかったかい?」
レイの目を覗き込んで念を押す。
魔道具を使ったことがあるとレイは言っていたが、魔道具を使うというのは本来それくらい危険な行為なのだ。
もちろん家庭でも魔道具は高い棚に置くよう周知してあるし、子供一人では扱えない作りにしてある。
レイの母にはコンパクトな例外品を売ったこともあるので恐らくそれを使ったのだろう。
本当はこの木板は相当な魔力を流し込まなければ破裂したりはしないけど、加減を誤りやすい子供には危険だからねぇ。
「わかりました」
神妙な顔で頷くレイに木板を手渡す。
「それじゃあやってみな。わかってるだろうが魔力は右手から流すんだよ。絶対に左から流すんじゃないよ」
この木板は別に右から流さなくても大丈夫なタイプだけれど、魔道具の中には右からじゃないと破裂するものもあるから右から流す癖をつけさせるんだ。
頷き、板を両手で持ち、慎重に魔力を流し始めるレイ。
すると板の中心がゆっくり光だす。
木板の中央には魔力に反応して光る魔石が取り付けられている。
「いいね。それじゃあゆっくり流す魔力を少なくしていこうか」
レイは言われた通りにゆっくりと魔力を絞って行く。
完全に止まったところで声をかける。
「今のが1等級の板だ。女は大体この等級だね」
言いつつ次の木板と交換する。
1等級の木板を光らせただけだというのにレイの目はキラッキラだ。
「じゃあ次、2等級の木板だよ」
こちらもゆっくりと魔力が流れ、真ん中が光る。
「うん、2等級以上は確定だね」
2等級の板をレイから受け取って3等級の板を渡す。
「じゃあ次は3等級だ。あたしゃこの等級だよ」
同じくゆっくりと魔力が流れ、光る。
うん?なんか随分魔力の流し方が丁寧だね……。
「よし、じゃあ次は4等級だ。男は大体この等級だね」
これも難なくクリア。
……しかし本当に丁寧だねぇ。
こりゃあ魔力操作も相当上手いんじゃないかい?
「この5等級が光ればお前さんは一般的な男より魔力量が多いってことになるよ」
あたしは5等級の板を手渡しながらレイの魔力注入を注視する。
(やっぱり間違いないね。これはもしかしたら……)
「うん?5等級も光ったのかい。あんた才能があるね」
考え事をしている間に終わってたらしい。
この時点で大半の人間より魔力量は上ということになる。
次は6等級だ。さすがにこれは光らないだろうけど。
……はぁっ?
「ちょっ!ちょちょちょちょっと待ちな!」
言われてレイはゆっくりと魔力注入を止める。
慌ててレイから木板を受け取り、紋様をまじまじと見る。
間違いない。6等級だ。
6等級が光ったということはもしかしたら7等級以上もあるかもしれない。
レイが魔力を注ぎ込む様子を見ていて思ったのだ。
抵抗を感じてなさそうだ……と。
「レイ!今日はここまでだ。続きは明日やるから絶対明日来るんだよ!」
そう一方的に言い残して、あたしは家に駆けこんだ。
オババの家の前にはぢつと手を見るレイだけが残されていた。
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◆あとがき◆
インフォームドコンセントは大事
タイトルはオババ視点なので『才能』という言葉を使っていますが本当は才能ではありません
裏設定の開示は今のところ予定はありませんが、気が向いたらするかも
今回、啄木ネタを入れてみました
今後もちょいちょい入れますが、皆さんはどれくらい気づくかな?
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