異世界魔法、観察してみたら

猫チュー

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第6話 ……え?結界!?

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オババ視点ですがレイの心の声も入っています


 翌朝、まだ小鳥がさえずり始めたばかりの静かな時間。
 庭で魔法水薬ポーションの準備をしていると約束通りレイが訪ねてきた。

「おはようございます」

「あぁ、よく来たね。おはよう」

 レイはじっとあたしの顔を見て、首をかしげた。何を気にしているんだい?

「あれ?もしかして寝不足ですか?」

 ああ、それかい。

「まぁちょっとね。そんなことより昨日の続きを始めるよ」

 そう言って木板を手渡す。

「今日はここで、ですか?」

「そうだよ。ほれ、それは7等級だ。やってみな」

 レイの表情が真剣なものに変わる。
 ゆっくりと魔力を流し込んでいき、中心の魔石が柔らかく光った。

「なんか少し重い感じがしました」

「一般的な男ならその重さは3等級で感じるもんさ。大したもんだね」

 まったく、どうなってんだいこの子は。
 本当に7等級を破裂もさせずに通すとはね。
 もうここまで来ると驚き疲れてきたよ。

 当のレイは木板を返して自分の手を見ながら開いたり閉じたりしている。

 (重い扉を開けるような感じがした。これが魔力抵抗ってことなのかな?)

 念のためで昨日作った8等級の木板を差し出しつつ言った。

「これが最後の魔力測定器。8等級だよ」

 8等級より上は存在しない。
 というより、そもそも8等級の測定に成功した者がいないのさ。
 7等級に到達できたのは歴代すべて“男”で、みんな魔石を破裂させてきた。
 男は魔力量こそ多いが、魔力操作の細やかさが足りないのは既に話した通り。
 だからどうしても壊しちまう。

 だが……。と心の中で続けてレイを見る。
 だがこの子は違う。
 7等級を破裂させずに通した。
 つまり、それだけの精密な魔力操作ができるってことだ。

 (8等級かぁ。オババの反応からすると高等級っぽいし、魔力量だけじゃなくてもし魔法が使えるなら夢が広がるぞー!)

 ワクワク顔のレイを横目に、あたしは一応、念のために告げる。

「一応水の結界を張っておくよ」

 これに慌てるのはショタ。

「はい。けっ……え?結界!?」

 (そう言えばポーションを用意してた気がする!何に使うつもりなんだ!?)
 
 急に怖くなり慌てだしたレイに笑いかける。

「あくまで念のためだからそんなにビビんなくても大丈夫さね」

 あからさまにホッとするレイ。
 破裂させるといっても怪我をするほどじゃない。
 ただ、8等級となると威力がどう跳ねるかわからないからね。

「じゃあ結界を張るよ」

「は、はい!」

 あたしが意識を集中させると、バケツの水が浮きあがり、レイと木板の間に移動して壁になった。
 レイは目を輝かせている。さっきのビビりはなんだったんだい。

「それじゃあ魔力を流してみな。慌てずゆっくりやるんだよ」

「はい!」

  レイは元気よく応えると、しかしゆっくりと魔力を流し込んでゆく。
 じんわりと回路が満ち、ライトが点灯する。
 それを見つつレイは思う。

 (なんとなくだけどまだ余裕がある気がする)
 
 やれやれ、本当に点けちまったよ。

 しかし困ったね。こんな才能、国が放置するとは思えない。
 なんせ魔力量だけじゃない。魔力操作もだ。あまりに卓越しすぎている。
 レイはまだ五つか六つ。こんないとけない子どもを国が利用しようとしたら……。
 もしかしたら戦争に駆り出されるかもしれない。意味もわからぬまま人を殺める道へ……なんてなったらあまりにもむごい。

 気付けばレイは魔力注入を止め、心配そうにこちらを見ていた。

 「そう……だね。うん、今日からお前さんはあたしの弟子だ」

 レイの目が丸くなる。

 (あれ?魔力操作は?)

 その反応に少し笑って続けた。

「今からお前さんちに行って話を付けてくるよ。その間店番、できるかい?」

「お客さんが来たら時間を置いて出直してもらえばいいですか?」

 本当に大人びているねぇ。

「そうしておくれ。じゃあ行ってくるよ」

 そう言い残し、あたしは早足でレイの家へ向かった。



 朝の風が、庭の薬草を優しく揺らしていた。
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