〝吾輩は小説である。|題名(なまえ)はまだにゃい〟な小説の供養場

月夜桜

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魔術学園の講師を始めました2

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 授業初日、僕は入学生の中でも特に優秀な成績を納めた生徒を集めたSクラスに来ていた。
 なんで僕なんかが優秀な生徒を見ないといけないんだよ。もっと他にいい人材がいるでしょ。
 はぁ、まぁ、仕方ないか。

「えー、皆さん、入学式以来ですね。改めて自己紹介を。僕はノワールって言います。よろしくお願いしますね? 〝早速授業を〟と言いたいところですが、まずは自己紹介をしてくれますか? まずは僕から。名前は先程言いましたので……そうですね。僕は、14歳で王立魔術学校に入学、その年には飛び級制度で王立魔術学園に転入。その翌年には飛び級で王立魔術大学校に入学し、半年後に飛び級で卒業しました。その後はここの講師としてやってます。まぁ、飛び級で卒業したのは私自身の力ではなく、伯爵令嬢のお目付け役として引き摺られた形なんですけど……。なので、飛び級したから凄いってことではありません」

 え? 入学式で言っていたことと違うって? 気の所為じゃないかな?? 両方嘘じゃないし。ただ、一昨年は飛び級が二人居て、その両方とも成績が全く同じだったことを言ってないだけだし。そのうちの1人がチームメイトだった伯爵令嬢なだけだし。

「ここまで言えばお分かりかと思うのですが、年代は君たちと同じです。なので、僕の呼び方は家名を呼ぶ以外ならなんでもいいですよ。あとそこ、今年の首席さんでしたか? 僕に向かって魔術を使うならもう少し魔術の展開速度を早めた方がいいですよ。僕の【強制破棄ディスカード】が間に合ってしまいます」

 何故か、光系統の魔術を放とうとしてきた、教室の向かって左前に座っている首席の魔術を破棄して助言をしてあげる。

「──!?」
「そうですね、この際だから言っておきます。僕に対してなら、何時でも攻撃してきていいですからね? 遠距離に限らず、近距離でも。その代わり、事前察知した魔術は全て破棄させてもらいます。では、首席さんから順番に、自己紹介をどうぞ」

 首席の方を見て微笑む。
 ……やっぱり何処かで……? いや、気の所為か。

「……ソフィア。よろしく」
「ソフィア、ですね。よろしくお願いします」

 ソフィア……ソフィアかぁ……懐かしいな。今頃、何処で何をしてるのかな。

「生徒ソフィア、得意属性ぐらいは教えてもらっても? 今後の授業の内容の参考にしますので」
「……光収束系が得意です。が、全属性のA級まで使えます」
「……ふむ。分かりました。ありがとうございます」

 ……あんまり使いたくないけど、伯爵令嬢──ルミナ嬢の伝手を使ってちょっと調べてみるか、この違和感の正体を。流石にソフィとの合致点が多すぎる・・・・・・・・

「次」

 そう促すと、赤髪の屈強な男が立ち上がった。……きみ、ほんとうにぼくとおないどし??

「ラズスタだ。得意な魔術系統は炎熱系だ。近接戦闘も得意だ」
「……ありがとうございます」

 そして、次っと促す。
 立ったのは少し大人しそうな茶髪の女の子。

「あ、あの、えと、その……リズリーと言いますっ、えっと、あの、幻術系統が得意ですっ、よろしくお願いしますっ!」

 バサッとお辞儀をする彼女。うん、元気で大変よろしい。

「はい、よろしくお願いします」

 そんな感じで15名全員の自己紹介が終わった。

「さて、実は、学園長からは『初日の授業は何をやっても良い』と伝えられているのですが……何かやりたいことってありますか? あと20分ほどで終わるものですけど」

 すると、すっとソフィアが手を挙げる。

「貴方に模擬戦を申し込む」

 彼女の目に紫電が走る。
 ……これは、魔力の事象干渉だね。

「分かりました。今年度の首席の実力がどのようなものか知りたかったですし、やりましょう。A級までの魔術を使っていいですよ。それでは、演習場に行きましょうか。こちらです」

 教室を出た。微笑むのを忘れずにね

 ☆★☆★☆

 ──演習場入口──
 そう書かれた看板の前に僕達はやってきていた。

「さぁ、入ってください? 挑戦するのは生徒ソフィアだけですか?」

 念の為尋ねたけど……誰もいなさそうだね。

「それじゃあ、生徒ソフィア、始めるよ。アリシア先生、合図だけお願いします」

 そう言って、僕は氷結系魔術で錬成した氷の杖を指揮棒を握るようにして持つ。

「では、これより、講師ノワールと生徒ソフィアの模擬戦を行います。ルールは即死性の魔術・体術の使用は禁止とさせていただきます。では──始めッ!」

 刹那、ソフィアが腕をしならせて魔術を起動する。
 この魔力よ流れは予め仕込んでたね。というか、さっきとは比べ物にならないほど展開速度が早いんだけど。

「《アクティベート》」

 次の瞬間、僕を起点とした氷の茨が彼女の【閃雷】を防ぐ。
 先日、入学式の時に生徒イリーナが僕に使おうとしていた【氷花ひょうか】だ。花というよりは茨だから、【氷茨ひょうし】の方がいいんじゃないかって彼女に言ったら『花の方がかわいいじゃないですかっ! 凍らせますよっ!』と言われてしまった。女の子はよくわからない。

「流石です。今の術式は破棄出来ませんでした。今度はこちらから行かせてもらいますよ」

 そして、杖を真一文字に振る。
 すると、20個の魔術式が空中に浮かび、彼女へ指向する。
 ふむ。やっぱり、この杖──イリーナが編み出した【氷杖ひょうじょう】は魔術触媒として優秀だ。無詠唱でここまで簡単に魔術を振るえるとは。
 流石、僕のお気に入りの生徒──初弟子なだけはある。あの子は正しく天才だ。

「生徒ソフィア! この魔術達は全部C級魔術です! 手段はなんでも構いません! 全て凌いでください!」
「──!?《霧散せ──》」
「──遅いッ!」

 彼女が起動式や魔術式を破棄する【強制破棄】を唱え終わる前に魔術が起動する。
 こうなれば、今の魔術を解除キャンセルして別の対抗魔術カウンタースペル……例えば、既に発動し終わった魔術に直接干渉する、難易度がかなり高い【解呪ディスペル】とかで打ち消すしかない。
 さあ、どうする?

「くっ──」

 生徒ソフィアは、跳ね上がるようにしてその場から飛び退き、魔術から逃れようとする。
 残念。それ、全部、全自動追尾式なんだ。君が魔術を使えば使うほど追ってくる。追尾目標マーカーは魔力だからね。
 ん? 急に魔力が大きくなった? ほう……術式の魔力許容量キャパシティ以上の魔力をぶつけて無理矢理分解・・したんだ。やるね。

「んじゃ、今度は追加でB級魔術行ってみよー」

 さっきと同じように真一文字に杖を振り、魔術を起動する。
 今度はB級魔術の全属性だ。
 その中に幾つか、相性のいい複合魔術を混ぜている。例えば、炎と風とかね。
 今度はどんな避け方をしてくれるかな?

「おっとあぶな!? 光収束系が得意ってだけはあるね」

 彼女に向かって放った魔術の中で【閃雷】に炎熱系魔術を複合させたモノが僕の制御を離れて襲ってきた。
 意趣返しとして面白いものを見せてあげようか。

「《爆ぜよ》」

 瞬間、僕と彼女に爆風が襲った。
 まぁ、その正体は、僕が今この場に展開していた魔術を全部暴走させて爆破しただけなんだけどね。
 A級魔術が使えない? なら、自分の魔力で術式に干渉して爆破すればいいのよ。貴方になら出来るでしょ? ……これ、ルミナの言葉ね。
 その言葉を借りました。

「ちょっ、なにそれ!?」
「お、やっと驚いてくれた。これ? 我が愛しの君の言葉を再現した対抗魔術だね。理論さえ分かれば、割と簡単だよ? 授業でやる予定もあるしね」
「そんなのを使えるなら、これはどうかしら」

 すると、彼女は杖の中腹程を両手に持ち、自らの身体の前に掲げた。

「《我は神を殺せし者・我が望を贄とし・遥かな虚無の果てに・追放せよ》」

 次の瞬間、杖の前に巨大な魔術式が展開、直後に極光が僕に向かって飛んでくる。
 ……この魔法・・……ッ、まずいっ!

「《災禍須らく殲滅せよ》──ッ!」

 ☆★☆★☆

 僕は、今はエルトリンデを名乗っているけど、昔は違った。

 昔は、アルフェルド=ディストーレだった。分家だけどね。
 そこに残された2つの遺物……というよりは、2つの魔術式があった。
 1つは、本家に伝わる、全属性複合魔術【消滅】。そして、もう1つは、分家に伝わる全属性複合魔術【分解】。
 その2つは、2つで1つの魔術だった。そして、僕はそのうちの【分解】を覚えてしまった。だから、【消滅】を覚える可能性のあるソフィから引き離され、勘当を受けた。
 どうも、言い伝えによると、【消滅】と【分解】が揃うと厄災が発生するらしい。
 んな言い伝えで僕とソフィを引き離さないで欲しかったね。まぁ、今となってはそんなのどうでもいいけど。
 今は、エルトリンデ主家……ルーラー伯爵家のお嬢様、エルミアナ嬢に仕える身だから。
 はぁ……でも、これはまずそう。【分解】が【消滅】に負けてる。多分、単純魔力量で負けてるんだろうな。なら、逸らすか。

「なんて魔力量……ふふ……成長したねソフィ・・・!」

 前方に突き出した魔術式を傾けて蒼空に逃がす。……あ、誰かの氷製・・の鳥の使い魔が死んだ。
 遠くの方から「あああああぁぁぁあああ!!?!? 私の鳥ちゃんがっ!! ようやく、ようやく、氷と炎で複合した火を吹く氷鳥・・・・・・を完成させたのにぃぃぃいっ!!!! 凍らすッ! 絶対に凍らせてやるぅぅぅぅッ!!」と聞こえてくる。……後で謝っておこう。
 チラッとアリシア先生の方を見る。
 彼女はコクリと頷き、こう告げる。

「はい、そろそろ時間だから、おしまいね?」

 次の瞬間、彼女を中心とした妨害結界が起動し、全ての魔術を消滅させた。

 僕は【消滅】を使ってきた少女に近寄り、ゆっくりと抱き締める。

「ソフィ……久しぶり……。て、抱きしめてからだけど、本当にソフィだよね? ソフィア=ディストーレだよね?」
「うん、うんっ! アル兄様……ようやく気付いてくれた……私の存在に……ようやくっ、会えたっ、兄様にっ!! 名前と家名を変えても、私からは逃げられないっ! そこに、兄様がいる限りっ!」
「あはは、ありがとう、ソフィ」

 ああ、この感覚、久しい。
 彼女の頭を撫でながらそう思う。
 背は小さい。けど、可愛さの中に美しさを感じさせる。
 これは、将来、大物になりそうだ。

「ソフィ、久しぶりに甘えてくれるのは嬉しいけど、もう授業も終わるから、ね?」
「むぅ……分かった」

 何処か名残惜しそうに離れていくソフィ。うん、かわいい。

「さて、生徒ソフィア。これからよろしくね? さっきも言ったけど、何時でも攻撃してきてくれたらいいから。最悪、【分解】を使うし」

 そう言うと、彼女は少し呆れたような顔をした。……ような気がした。
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