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剣姫 編

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「ここか。」

俺、苺花まいか、レイの3人で、内閣特殊調査課の依頼で受けた場所に着く。


苺花まいかが符を取り出す。

「結界を張るぞ。」

「あいよ。」

「お願いします。」

「結界術・解!」

苺花まいかの言葉に反応して符が消えて異層結界が展開される。

時間にして、15分ほどだろうか。

次元軸の亀裂が現れる。

次元の亀裂の出現時間は、或る程度は前もって判るのだが。

飽く迄も或る程度なので。 早い時は着いて3分もしない内に。

遅い時は、4時間くらいは待つ時も有る。

今回の亀裂は、地面の側と上空に出現した

地面の亀裂からは豚人オーク大鬼オーガ

上空の亀裂からは小型の竜が現れた。

小型の竜とは言っても、体長は5メートル以上は或る。

飛竜ワイバーンかよ。」

渋い表情をしながら言う苺花《まいか》。

「強いのか?」

小型とは言え竜なのだから強いと思って聞いてみる。

「強い事は強いけど。 強敵って訳じゃない。
 ただアイツら、休む時か獲物を食う時以外は降りてこないから厄介なんだよ。」

苺花まいかも、空の敵への対処法は幾つか有るが。

それでも、高さ的に限界がある。

俺も、風の精霊に頼めば、かなりの高度の敵まで攻撃を届かせる事が出来るのだが。

如何せん。

動き回られる敵に攻撃を当てきる自信はない。

なんせ、1度のズレで。1メートルだと2センチだっけか?

100メートル近く離れた的に当てるなんて神業は無理。

ましてや動き回る的に当てるなんて天文学的確率に為る。

因みに、クレー射撃での銃弾は散弾。

風の刃の範囲を広げればいいだろうと思うが。

それだと、上下に的が入りにくくなる。

風の刃を線から面にすると、ただの強風に煽られるだけと為るので切断能力が落ちる。

などど、無い知恵を絞っていると。

芳乃よしのさん。」

レイが声をかけてきた。

「ん?」

思考を止めてレイの方を見る。

「浮いてますよ。」

「へ?」

思わず変な声が出る。

「はっ?」

俺を見て、苺花まいかも間の抜けた声を上げた。

自分の足元を見れば、何故か10センチほど浮いていた。

「・・・・・。」

「浮遊術?」

「いえ。どっちかと言えば。霊体の時の、私の浮遊現象に近いかと?」

俺を見て、レイが言う。

「何でも良い。 上の奴は芳乃よしの! 任せたぞ!」

「ちょ!? どうやって?」

「風の精霊に頼んで、風向きを変えて貰えば高速移動できるんじゃね?」

と、苺花まいかに言われて。

風の精霊シルフ。 頼めるか?」

と言うと。

「うぅおっ!」

俺の身体が、物凄い勢いで上空に向かって上昇した。

「大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫だろう? 精霊がついてるし。 生半可な事じゃ、芳乃よしのに怪我をさせるのは難しいからな?」

「なんか、最後は疑問形に聞こえたのは気のせいでしょうか?」

「気のせいだ。」

そう言うと、苺花まいかは何処から出したのか鞘から刀身を抜く。

刀身は水色に輝き、その刀身にはかたな特有の波紋は無く。

まるで、鏡の様に苺花まいかの顔を映し出していた。

「レイ。 此処から動くなよ。

もし見つかっても、無駄に逃げ回るな。

精霊に頼んで、自分の身を護る事だけに専念しろよ。」

「わかりました。」

「硬化・強化・剛力。」

符を3枚使い。 自身と武器に硬化と強化と剛力の術を発動させて、豚人オーク大鬼オーガに向かって行く苺花まいか
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