上 下
109 / 140

エリアミッション:15

しおりを挟む
 * * * * * *


悠夜ゆうやくん。 竜騎兵ドラグーンの最適化が終わったよ。」

「有り難う御座います。」

「ただし、貫通効果の最適化にともなって。

重力制御砲グラビティーカノン以外の全ての兵装のエネルギー消費量が、通常の1・5倍~2倍近くになっているからね。

いつもの調子で戦闘していると、すぐにエネルギーが尽きるから注意してくれ。」

「分かりました。 それじゃ、行ってきます。」

ステータスウィンドウを開き、竜騎兵ドラグーンのコクピットに転送する悠夜ゆうや

竜騎兵ドラグーン! 悠夜ゆうや! 行きますっ!」

竜騎兵ドラグーンは一気に加速して、デススパイダーの近くに接近する。


悠夜ゆうや。 桂子けいこさんと、一緒に後部からの攻撃を頼む。」

竜騎兵ドラグーンの接近を見て、アイザックが言う。

「了解。」


もとより悠夜ゆうやもその気だった。

何せ竜騎兵ドラグーンの装甲は、紙どころかトイレットペーパー並みの薄さなのだから。

エリアボスの攻撃なんぞ、直撃でもしたらHP耐久値の半分近くは奪われてしまうだろう。


デススパイダーの後部に距離を取りながら回り込む。

すでに最前線では、桂子けいこの駆る三頭獣ケルベロスネイルで引っ掻き、ファングで食らいつきながら、デススパイダーにダメージを与えている。

悠夜ゆうや竜騎兵ドラグーンも、桂子けいこに負けじと、ライフル銃を構えると、次々にビームを撃ち出していく。

次々と、機体の最適化を施し終わった機体も参戦しデススパイダーに攻撃を仕掛ける。

オランタムスナイパーが、デススパイダーのHP耐久値を1本の半分近くを削ったのが大きい。

デススパイダーのHP耐久値は残り1本を切り、残りのHP耐久値は7割弱といったところだ。


プレイヤー達の奮闘で、デススパイダーのHP耐久値が最後の1本の半分に差し掛かった時。


再び、デススパイダーの周囲に黒いもやが大量に溢れるエフェクトが発生する。

デススパイダーの全周囲範囲マップ攻撃がプレイヤー達を襲う。


絶対障壁アブソリュート・シールド!」

アイザックがデススパイダーの攻撃に合わせて、特殊能力スキルを発動して味方の機体を護る。


吐息ブレスアイス&ファイア!」

桂子けいこも攻撃を中断して、後方に飛びのきながら防御する。


炎の壁ファイヤーウォール!」

サムソンも防御態勢を取る。


「「「きゃぁっ!」」」

「「「ぐぉ!」」」

「「「あべしっ!」」」

だが、防御手段をともなわない機体も多く。

2度目の範囲攻撃に耐えきれずに、大ダメージを受けた機体が続出。


「「「ごめん!」」」

「「「すまんっ!」」」

「「「わりぃ。」」」

ダメージを受けて、戦闘続行不可能になった機体のプレイヤー達の声が聞こえてくる。


「アイザック! 今の攻撃で、かなりの数のプレイヤーが戦闘不能になったっ!

戦闘続行可能の機体数は68よっ!」

アイラの声が響く。


「くそっ!」


デススパイダーの残りのHP耐久値ゲージは残り4割と言ったところ。

かなり厳しい状況に追い込まれてきた。



そのころ、竜騎兵ドラグーンも。

悠夜ゆうや

今の攻撃で、竜騎兵ドラグーンの損傷率が60%を超えたせいで回避運動能力が低下!

このままじゃ、迎撃されちゃう!』

今の範囲攻撃を、辛うじてバリアフィールドを最大出力で展開して防いだのは良いけど。

もともと、トイレットペーパー装甲の竜騎兵ドラグーン

一気にHP耐久値を削られた上に、バリアフィールドを最大出力で展開した事により、エネルギーの消費量も相当食われてしまった。

「レイ。 重力制御砲グラビティーカノンで攻撃した場合、エリアボスのHP耐久値をどのくらい削れそうだ?」

『3割強かな?』

「上等。 アイザック……。」

連合チャットで、アイザックの名前を呼び、悠夜ゆうやは自分の作戦を伝える。


「「「「「本気かっ!?」」」」」

悠夜ゆうやの作戦を聞いて、アイザック処か、他のプレイヤー達も驚きの声を上げた。


「どのみち、このままじゃジリ貧だ。 最悪あと1~2回は範囲攻撃を撃ってきかねない。

そうなりゃ、全滅しかねない。

なら、エリアクリアを第一目的に考慮した場合、俺の言った作戦が良い手だと思わないか?」

後1度でも、デススパイダーの範囲攻撃を食らったら、一気に半壊しかねない状況だ。

そこからエリアボスを攻略できるとは考えにくい。

そうなれば、次の攻略戦まで立て直し期間として3~4日は必要になる。

その間に、他のプレイヤー達に攻略される可能性も出てくる。

さすがに、それは遠慮したい。


悠夜ゆうやの作戦に、意義のある奴はいるか?」

連合チャットで、他のプレイヤー達に尋ねるアイザック。

返事はない。


恐らく、この場に居る全プレイヤーが理解しているのだろう。

このままでは、クリアできないかも知れないと。
しおりを挟む

処理中です...