【梅雨が招いた雲の下の花鈴】

充ちる

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梅雨の出会い。

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「あ、雨……梅雨、か……」
会社を出てパラパラと小雨が降ってきていることに気がついた。
「雨……雨、か……」
この時期になると思い出す……あの雨の日のことを……。

一一一7月初旬、僕はあの子に出会った一一一。

雨の日、仕事終わりにコンビニに寄って酒と晩飯を買って家に帰る途中、どこかから視線を感じ辺りを見渡してみた。

ふと、コンビニと隣の建物の間を見ると、華奢な子供が傘もささずにフードを深く被ってこちらを見ていた。

残念ながら僕は見知らぬ人間に優しく声をかけてあげるなんてそんなことができるようなできた人間じゃないから、見て見ぬふりするんだけどね。

その子供を自分の中でなかったことにするために、子供から目を逸らして歩き出した。

「ねぇ、お腹空いた」

「っ?!」

「お兄さん、何かちょーだい」

(子供の方から僕に話しかけた……?

しかもめっちゃ図々しい……。

声的に女…か?)

「あ…いや、その…これが、欲しいの?」

僕が晩に食べようと買った弁当を指さしてたずねた。

そしたら子供はコクン。と小さく頷いて上目遣いでこっちを見てくる。

「いいけど…こんな雨の中で食べるのか?」

子供はまたコクン。と小さく頷いた。

(いやいや、雨の中って…ダメだろ……親子さんは……。

雨の中に子供が放り投げられてるのに、いるわけないか……)

辺りを見渡す事さえせずとも分かりきった事だよな……。

「はぁ……食べるんだったらウチおいで……」

「……うん」

子供は少し嬉しそうな顔をしてまた小さく頷いた。

一一一一一一。

「はぁ……ただいま……」

一人暮らしのくせに、癖になってしまった家への「ただいま」をいつも通りため息混じりに口にした。

「おかえり……なさい……?」

「え、あ…ありがとう」

僕は返ってくるはずないと思っていた言葉が返ってきて少し嬉しくなり、子供の頭を撫でて微笑んだ。

「よし、飯食う前に風呂にするか。さすがにそんな格好じゃ風邪ひくだろ」

「……え?」

「え、じゃねぇよ。ほら、風呂の準備してやるから、とりあえずこのタオルで頭拭きな」

僕は洗面台からタオルを1枚取り子供に渡した。

「…………」

「ん?どした?」

「んーん。なんでもない」

「そっか。ならいいんだけど」

タオルをじっと見つめてる子供に違和感を覚えたがすぐ頭を拭き始めたので、あまり気にせずに風呂の用意を始めた。
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