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僕の居場所
僕のお願い
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チェーンにぶら下がった薬の容器を目の前にぶら下げながら、僕は長老から言われた事を思い出していた。あの晩餐会の大騒ぎがあってから、辺境の街に帰ると言う前日、長老がわざわざパーカスの屋敷に顔を見せたんだ。
長老は僕をじっと見つめて言った。
『やはりお主は器と中身が少しズレて見えるのう。それに確かに魔素を貯める体質のようじゃの。人間は皆そうなんじゃろうか。よいか、身体が怠くなったら、この薬を飲んで器を大きくして暫く生活するのじゃ。さすれば溜まり過ぎた魔素を消費できるじゃろう。
これは改良版で、眠くならないからの。普通に生活できるじゃろう。今のお前さんなら2日、3日程度じゃな。』
僕は台所で料理をするパーカスを眺めながら、しばし考えた。もし僕が一時的にでも大きくなったら、パーカスの代わりに料理を作ることが出来るだろう。今よりきっと役に立てるはずだ。
でも困った事に大きくなった時の服がない。あの晩餐会の時は眠るだけだったから大丈夫だったけど、半日程度ならともかく、2日も3日も素っ裸で過ごすわけにもいかないだろう。どうにかして服は手に入れないといけないな。
好物の魔鳥のステーキを食べながら、自分が料理できたら唐揚げにして食べたいと思わずニヤついた。そんな僕にパーカスは用心深く尋ねた。
「テディがそんな顔をしている時は、大抵騒ぎの元なのじゃがの。」
さすがパーカス、だてに僕と一緒に暮らしていない。僕は唇の周りの油を側に置いてある濡れた布でちゃんと拭き取ると、ミルをゴクゴクと飲んだ。ああ、そうだ、まだミルを庭に植えてない。僕はチラッと玄関の方を見るとパーカスに尋ねた。
「みりゅ、あちたうえりゅ?」
するとパーカスも玄関の方に目をやって言った。
「ダグラス曰くはまだ小さいから、あのバケツいっぱいになるくらい大きくなってから地面に下ろした方が上手く育つようじゃ。夜は玄関で、昼間は外に出して陽に当ててやろう。」
僕は確かにあの正規品大福サイズじゃ、風に吹かれたら転がっていきそうだと思った。ふと、恐ろしい事を考えてパーカスに尋ねた。
「みりゅちぇっ、ねっこ?ちょれとも、あち…?まちゃか、からら?」
僕はミルの地上部がじつは頭で、地面に本体が埋まっているなんて怖い事を考えてしまった。まさかね。一人顔を強張らせていると、パーカスは笑って言った。
「ははは、もちろんあの白いのが本体じゃよ。地面には根っこ、うーむ、触手?そんな物が埋まっておるな。」
僕はパーカスの説明にますます眉を顰める事になった。想像以上にとんでもないな、ミルは。さすが魔物だ。僕はゾワゾワした身体を手で擦って、さっきから考えていたパーカスへの頼み事をする事にした。
「あにょね、ぼく、ふくがほちいの。んーと、おくちゅりで、おっきくなっちゃら、ちゅっぽんぽんだから。」
僕の発言にしばらく考え込んでいたパーカスは、ふうと溜息をついた。
「…確かに今度の薬は二、三日あの状態が続くと長老も言ってたの。だが、サイズはどうするかの。ジェシーの兄よりは頭ひとつ背が大きかったが、アレよりは細かった様に思ったが。孔雀の店主にお任せで用意して貰う事にしようかの。しかし何と言って頼めば良いのやら。」
僕は椅子からいそいそと降りると、パーカスの椅子の側に立って言った。
「ぼく、おっきくなっちゃら、おとーたんに、おりょうりちゅるの!ふふふ。たのちみ!ねー?」
そう言ってパーカスを見上げると、パーカスは何だか目を潤ませて僕を黙って見下ろしていた。
「まったく、歳を取ると涙脆くなって敵わんわ。そうか、テディは私に食べさせたい料理があるのだな?ははは、それは楽しみだのう。では服も早目に用意しなくてはの?」
そう言うと、僕をサッと抱き上げて立ち上がった。それから僕たちは玄関に行って、バケツの中の大福を観察した。触れるとぷにぷにして確かに可愛いかもしれない。目もまだ開かないし。
地面の中のことは考えない様にして、僕達はそれから片付けや寝支度をすると、ベッドの上で絵本を読んで貰った。王都から戻って直ぐに、僕宛にバルトさんから数冊の絵本が届いていた。魔物図鑑は最近の僕のお気に入りだ。ちょっとゾワゾワもするけど、怖いもの見たさのアレだ。
でもあのブレーベルの湖でパーカスが討伐した巨大魔物が、伝説の魔物にランクインしていたのには本当にびっくりしたけどね。そりゃ、街の獣人達も逃げ惑う訳だ。僕が欠伸をすると、パーカスが絵本を取り上げた。
「さぁ、眠る時間じゃな。おやすみ、テディ。」
僕はやっぱりパーカスの隣に潜って、目を閉じて頬にキスを受けるとニンマリして呟いた。
「…おやちゅみ、おとーたん。」
「本当に行かないのかの?」
僕は台所でいつもより早い朝食の後片付けをしながら、心配そうに尋ねてくるパーカスに言った。
「うん。だってパーカスは夜には戻ってくるんでしょう?僕大きくなったばかりだし、多分小さく縮むのは明後日くらいだろうから。今回は急な要請なんでしょ?早く行ってあげないとブレートさんも困っているんじゃないかな。
あの大きな街の側に大型魔物が出るなんて、流石に被害も出ちゃうんじゃない??怪我人がいないと良いけど。ロバート達が居るのにパーカスに応援要請が来たってことは、相当だよね…。
もし今夜戻れなくても、僕はほら、おチビじゃないから最悪一人でも大丈夫だと思うよ。早く行ってあげて?」
後ろ髪を引かれてなかなか出立しないパーカスを送り出して、いつ見ても立派な黒竜が山の向こうの空に消えるのを見送った。この突然のパーカスの動員要請騒動は、今朝けたたましい鳴き声で始まった。
ダダ鳥の声が僕たちを飛び起きさせた。パーカスが慌てて庭に出ると、柵の向こうに居たバッシュが首から何か袋を下げていた。連絡便だ。ブレーベルの街の近郊に出現した大型魔物の討伐協力依頼だった。
僕もついて行きたかったけれど、丁度昨日長老の薬を飲んでしまって身体が大きくなっていた。流石にこの姿でパーカスと一緒に行動するのは無理だ。
心配するパーカスを見送ってがらんとしたこの家は、成長した身体だとちびっ子の自分とは見え方も感じ方も違う。僕はあつらえて貰った少し大きめのシャツを腕まくりして、まずは掃除をしようと思った。
パーカスはあまり気にしないみたいだったけど、僕はもう少し綺麗な方が好みだ。
ひとしきり拭き掃除までやり終えると、庭に出てミルを見に行った。一応柵の内側に植えたから、森の魔物に夜のうちに食い荒らされたりはしないだろうけど。ミルは今30cm ほどの大きさになっていた。
流石に僕も毎日見ていると慣れてきた。それに段々大きくなるから怖い感じは無い。
「おい、今日は僕と二人ぼっちだぞ?」
そう言いながら指で突っ突くと、瞼をピクピク震わせた。観察していると結構反応するのでちょっと面白い。僕は手元のバケツから水を一杯掛けると、周囲を見渡した。流石にパーカス無しで柵の外へ出るのは怖い気がする。今は魔物らしきものは感じられないけど。
さて、今日は何しよう!僕は腕を伸ばして、大きく背伸びした。まずは髪でも切ろうかな!?
長老は僕をじっと見つめて言った。
『やはりお主は器と中身が少しズレて見えるのう。それに確かに魔素を貯める体質のようじゃの。人間は皆そうなんじゃろうか。よいか、身体が怠くなったら、この薬を飲んで器を大きくして暫く生活するのじゃ。さすれば溜まり過ぎた魔素を消費できるじゃろう。
これは改良版で、眠くならないからの。普通に生活できるじゃろう。今のお前さんなら2日、3日程度じゃな。』
僕は台所で料理をするパーカスを眺めながら、しばし考えた。もし僕が一時的にでも大きくなったら、パーカスの代わりに料理を作ることが出来るだろう。今よりきっと役に立てるはずだ。
でも困った事に大きくなった時の服がない。あの晩餐会の時は眠るだけだったから大丈夫だったけど、半日程度ならともかく、2日も3日も素っ裸で過ごすわけにもいかないだろう。どうにかして服は手に入れないといけないな。
好物の魔鳥のステーキを食べながら、自分が料理できたら唐揚げにして食べたいと思わずニヤついた。そんな僕にパーカスは用心深く尋ねた。
「テディがそんな顔をしている時は、大抵騒ぎの元なのじゃがの。」
さすがパーカス、だてに僕と一緒に暮らしていない。僕は唇の周りの油を側に置いてある濡れた布でちゃんと拭き取ると、ミルをゴクゴクと飲んだ。ああ、そうだ、まだミルを庭に植えてない。僕はチラッと玄関の方を見るとパーカスに尋ねた。
「みりゅ、あちたうえりゅ?」
するとパーカスも玄関の方に目をやって言った。
「ダグラス曰くはまだ小さいから、あのバケツいっぱいになるくらい大きくなってから地面に下ろした方が上手く育つようじゃ。夜は玄関で、昼間は外に出して陽に当ててやろう。」
僕は確かにあの正規品大福サイズじゃ、風に吹かれたら転がっていきそうだと思った。ふと、恐ろしい事を考えてパーカスに尋ねた。
「みりゅちぇっ、ねっこ?ちょれとも、あち…?まちゃか、からら?」
僕はミルの地上部がじつは頭で、地面に本体が埋まっているなんて怖い事を考えてしまった。まさかね。一人顔を強張らせていると、パーカスは笑って言った。
「ははは、もちろんあの白いのが本体じゃよ。地面には根っこ、うーむ、触手?そんな物が埋まっておるな。」
僕はパーカスの説明にますます眉を顰める事になった。想像以上にとんでもないな、ミルは。さすが魔物だ。僕はゾワゾワした身体を手で擦って、さっきから考えていたパーカスへの頼み事をする事にした。
「あにょね、ぼく、ふくがほちいの。んーと、おくちゅりで、おっきくなっちゃら、ちゅっぽんぽんだから。」
僕の発言にしばらく考え込んでいたパーカスは、ふうと溜息をついた。
「…確かに今度の薬は二、三日あの状態が続くと長老も言ってたの。だが、サイズはどうするかの。ジェシーの兄よりは頭ひとつ背が大きかったが、アレよりは細かった様に思ったが。孔雀の店主にお任せで用意して貰う事にしようかの。しかし何と言って頼めば良いのやら。」
僕は椅子からいそいそと降りると、パーカスの椅子の側に立って言った。
「ぼく、おっきくなっちゃら、おとーたんに、おりょうりちゅるの!ふふふ。たのちみ!ねー?」
そう言ってパーカスを見上げると、パーカスは何だか目を潤ませて僕を黙って見下ろしていた。
「まったく、歳を取ると涙脆くなって敵わんわ。そうか、テディは私に食べさせたい料理があるのだな?ははは、それは楽しみだのう。では服も早目に用意しなくてはの?」
そう言うと、僕をサッと抱き上げて立ち上がった。それから僕たちは玄関に行って、バケツの中の大福を観察した。触れるとぷにぷにして確かに可愛いかもしれない。目もまだ開かないし。
地面の中のことは考えない様にして、僕達はそれから片付けや寝支度をすると、ベッドの上で絵本を読んで貰った。王都から戻って直ぐに、僕宛にバルトさんから数冊の絵本が届いていた。魔物図鑑は最近の僕のお気に入りだ。ちょっとゾワゾワもするけど、怖いもの見たさのアレだ。
でもあのブレーベルの湖でパーカスが討伐した巨大魔物が、伝説の魔物にランクインしていたのには本当にびっくりしたけどね。そりゃ、街の獣人達も逃げ惑う訳だ。僕が欠伸をすると、パーカスが絵本を取り上げた。
「さぁ、眠る時間じゃな。おやすみ、テディ。」
僕はやっぱりパーカスの隣に潜って、目を閉じて頬にキスを受けるとニンマリして呟いた。
「…おやちゅみ、おとーたん。」
「本当に行かないのかの?」
僕は台所でいつもより早い朝食の後片付けをしながら、心配そうに尋ねてくるパーカスに言った。
「うん。だってパーカスは夜には戻ってくるんでしょう?僕大きくなったばかりだし、多分小さく縮むのは明後日くらいだろうから。今回は急な要請なんでしょ?早く行ってあげないとブレートさんも困っているんじゃないかな。
あの大きな街の側に大型魔物が出るなんて、流石に被害も出ちゃうんじゃない??怪我人がいないと良いけど。ロバート達が居るのにパーカスに応援要請が来たってことは、相当だよね…。
もし今夜戻れなくても、僕はほら、おチビじゃないから最悪一人でも大丈夫だと思うよ。早く行ってあげて?」
後ろ髪を引かれてなかなか出立しないパーカスを送り出して、いつ見ても立派な黒竜が山の向こうの空に消えるのを見送った。この突然のパーカスの動員要請騒動は、今朝けたたましい鳴き声で始まった。
ダダ鳥の声が僕たちを飛び起きさせた。パーカスが慌てて庭に出ると、柵の向こうに居たバッシュが首から何か袋を下げていた。連絡便だ。ブレーベルの街の近郊に出現した大型魔物の討伐協力依頼だった。
僕もついて行きたかったけれど、丁度昨日長老の薬を飲んでしまって身体が大きくなっていた。流石にこの姿でパーカスと一緒に行動するのは無理だ。
心配するパーカスを見送ってがらんとしたこの家は、成長した身体だとちびっ子の自分とは見え方も感じ方も違う。僕はあつらえて貰った少し大きめのシャツを腕まくりして、まずは掃除をしようと思った。
パーカスはあまり気にしないみたいだったけど、僕はもう少し綺麗な方が好みだ。
ひとしきり拭き掃除までやり終えると、庭に出てミルを見に行った。一応柵の内側に植えたから、森の魔物に夜のうちに食い荒らされたりはしないだろうけど。ミルは今30cm ほどの大きさになっていた。
流石に僕も毎日見ていると慣れてきた。それに段々大きくなるから怖い感じは無い。
「おい、今日は僕と二人ぼっちだぞ?」
そう言いながら指で突っ突くと、瞼をピクピク震わせた。観察していると結構反応するのでちょっと面白い。僕は手元のバケツから水を一杯掛けると、周囲を見渡した。流石にパーカス無しで柵の外へ出るのは怖い気がする。今は魔物らしきものは感じられないけど。
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