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僕の居場所
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妙に居心地の良い感触に、僕は顔を動かした。暖かくてすっぽり包まれるこの感触は嫌いじゃない。しかも何処となくずっと嗅いでいたい様な良い匂いだ。僕は少し笑ったのかも。誰かが僕に話しかけている気がする。パーカス?
「もっと、だっこしてて…。」
僕の声が耳まで届いて、僕は思わずニンマリ笑ってしまった。何だ、僕っていつの間にかちゃんと喋れてるじゃないか。幼児かと思ってたけど、あれは夢だったのかな。夢でも楽しかったけどね。
…いや、夢じゃない。僕は3歳児のテディだ。長老の薬で大きくなって、大きな木にぶら下がってた気味の悪い黒い虫が肩にへばりついて…。もしかして、僕死んだ!?
僕は重い瞼を懸命に開こうと頑張った。ふと誰かに瞼を撫でられた気がした。頬に落ちる少し濡れた柔らかな感触は気持ちが良い。もっとしてくれても良いのに、けれどもそれは二度目が無かった。
「…テディ。目が覚めたのかい?…テディ。目を開けてくれ。」
この声はパーカスじゃないけど、聞いた事がある。青髪の竜人のバルトさんだ。絵本やお菓子を僕に貢いでくれる騎士だ。随分心配そうな声に、僕は頑張って瞼を開けた。
僕の直ぐ目の前に、心配そうな眼差しのバルトさんが顔を寄せていた。僕と目が合うと、バルトさんの瞳が一気に色々な色味の青と虹色に目まぐるしく染まった。パーカスもそうだけど、竜人の瞳は美しくて幾らでも眺めていられる。
僕が黙ったままバルトさんの瞳を鑑賞していると、少し戸惑った様子でバルトさんが僕に優しく尋ねてきた。
「…調子はどうかな。吸虫球に取り付かれたのは覚えているかい?一体何処であれに遭遇したのか教えてくれるか。ああ、こんなに色々一度に尋ねても、まだ具合の悪いテディに聞くのは酷なのに…。」
そう言われて、急に具合が悪い気がしてきた。具合が悪いと言うか、お腹が減ったと言うか。僕は目の前で一人苦悩しているバルトさんを少し面白い気持ちで眺めながら言った。
「僕…、お腹ちゅいた。」
あれ、なんかバグってる。それとも僕はちっちゃなテディに戻っちゃったのかな。でもそれを確認する間もなく、僕は力が入らなくて目を閉じてしまった。目を閉じながら、身体の感覚で、今がどう言う状況なのか探った。
何か柔らかな布ですっぽり包まれてるみたいだ。少し肩が痛む。‥痛い。え?めっちゃ痛い!僕は目をぱっちり開けて、やっぱり眉を顰めて僕を見つめていたバルトさんに訴えた。
「いちゃい!肩いちゃいよ!」
そう懸命に言いながら布から這い出ようとした。するとバルトさんが僕をサッと抱き上げて、浴室の鏡の前まで連れて行った。僕は大きく成長したままだった。そしてバルトさんが僕を縦抱きにしながら、柔らかな布を引き剥がして肩の部分を見せてくれた。
そこには白い包帯の様なもので巻いてあって、少し血が滲んでいた。
「さっき薬草で治療したけれど、傷を見たいかい?吸虫球は何とか剥がれたんだけど、少し噛み跡の様なものが出来てしまったんだ。パーカス殿がいらっしゃれば治してもらえるだろうが。‥具合はどうかな。」
僕は血の滲んだ包帯を見て、何となく気分が悪くなった。あの気持ち悪い黒いものがへばりついた感覚を思い出してしまったし。僕はガクリとバルトさんの首元に頭を乗せると、首を小さく振って言った。
「見ちゃくない。…あれ、どうやってとっちゃ?」
まだ口がバグってる。さっきは上手く喋れたのに。ま、いいか。それより本当にあんなにガッチリくっついてた黒いものをどうやって取ったんだろう。無理矢理?実際傷が痛いし。跡残りそうだなぁ。
するとバルトさんは僕を抱っこして歩き出しながら、思いがけない事を言った。
「…吸虫球は、普通は豊富な魔素を狙って魔物に取り付くんだ。滅多に見かけないが、付いていたとしても数えるほどもない。だから今回テディに取り付いたのが本当に不思議なんだ。
私達、竜人や獣人だって魔素は魔肉などから摂取してるだろう?だから微量ながら皆魔素を持ってるが、吸虫球が取り付く話は聞いたことがない。だから目を疑ったよ。前例がないからどうして良いか分からなかったし。
ただ、魔素の多い魔物が居たら、其方へ移ってくれるんじゃないかと思った。私の目論見は叶えられたよ。」
僕は魔素の多い魔物にあの黒い虫を乗り移らせたのかと、それでもこんなにヒリヒリするのだと思った。ふと、その魔物をどうしたのかと思って顔を上げてバルトさんを見た。バルトさんは僕を抱えたままソファに沈み込むと優しく微笑んで言った。
「ミルは魔素含有量の多い魔物なんだよ。」
僕はハッとして玄関の方を見た。僕の代わりにミルが犠牲になったんだ…。なんか可哀想だ。それに大事な事を今更ながら思い出した。
僕はやっぱり虹色に煌めく青い瞳を見つめながら尋ねた。
「何でバルトしゃんが…。ぱーかちゅはどこ…?」
バルトさんは慌てて僕に、ブレーベルの街の魔物討伐でパーカスが怪我をした事。僕に何か起きたのは分かったが、飛んで来れなくなったのでバルトさんに見てきてくれる様に頼んだ事を教えてくれた。
「え!ぱーかちゅ、怪我だいじょぶ!?」
バルトさんから治療したら直ぐに戻ると言っていたと聞いて、僕はほっとしてもう一度ドサリとバルトさんの肩に寄り掛かった。ああ、良かった。ホッとしたら何だかますますお腹が空いてきた。何ならお腹が空き過ぎて気持ち悪い。
「お腹ちゅいた…。何か食べなくちゃだ…。」
僕はよっこらせと起きあがろうとしたけれど、なぜだかバルトさんが僕をガッチリと抱き抱えて離してくれない。確かにバルトさんの弾力のある胸板は気持ち良いけれどね。
「…バルトしゃん?」
僕がバルトさんの顔を見上げると、急に焦った様に腕の力を抜いて僕をソファにそっと下ろすと立ち上がって言った。
「…私がなにか簡単に食べるものを見繕って持ってこよう。ちょっと待ってて。」
そう言って台所へ向かうと、あちこちの扉を開ける音がした。あのバルトさんにまともな食事の用意が出来るのかは疑問だったけれど、簡単に摘めるものなら僕にも用意出来るので、まぁ期待しないで待っていよう。
僕はパーカスの怪我が気になったけれど、治療したら戻ってくると言う言葉を頼りに心配するのはやめた。僕もパーカスに心配かけない様に、今より元気になって迎えてあげなくちゃだ。
しばらく時間が経って、少し火の通り過ぎた魔鳥のステーキや果物が運ばれて来た。ステーキは小さく切られていて、食べやすくなっている。案外気が利いているのかな。
僕が手を出そうとすると、バルトさんは妙ににっこりして、僕の口元まで肉を運んでくれた。パーカスが焼くものよりは少し硬い気がしたけど、今の成長した僕にはなんて事ない。
思わぬ食欲を感じて、僕はバルトさんに介助されながらペロリとサイコロステーキを食べ切ってしまった。目の前で半分に切られた柔らかな果物は、僕の大好きなアイスクリーム味のノラの実だった。
「ノラの実があるなんて驚いたな。」
そう言いながらスプーンで掬ったノラの果肉を僕の口の中へ放り込む。バルトさんはこんな面倒な事を妙に楽しげにやっている。騎士なのに、ちまちました事が好きなのかな。
僕はノラの実が希少価値である事を思い出して、僕に差し出されたバルトさんの手を掴んでスプーンをバルトさんの口元へ方向転換して言った。
「バルトしゃんも食べちぇ。おいちいよ。」
僕がそう言うと、バルトさんは一瞬妙な間があった。僕はゆっくりとスプーンを口の中に運んだ。形の良い唇が閉じると、僕はにっこり笑って言った。
「ね?おいちいでちょ?」
バルトさんは微笑んで言った。
「ああ、すごく甘いよ。…ありがとう。」
その時、柵の向こうに大きな羽ばたきが聞こえて、僕とバルトさんはハッとして見つめ合った。パーカス!?
「もっと、だっこしてて…。」
僕の声が耳まで届いて、僕は思わずニンマリ笑ってしまった。何だ、僕っていつの間にかちゃんと喋れてるじゃないか。幼児かと思ってたけど、あれは夢だったのかな。夢でも楽しかったけどね。
…いや、夢じゃない。僕は3歳児のテディだ。長老の薬で大きくなって、大きな木にぶら下がってた気味の悪い黒い虫が肩にへばりついて…。もしかして、僕死んだ!?
僕は重い瞼を懸命に開こうと頑張った。ふと誰かに瞼を撫でられた気がした。頬に落ちる少し濡れた柔らかな感触は気持ちが良い。もっとしてくれても良いのに、けれどもそれは二度目が無かった。
「…テディ。目が覚めたのかい?…テディ。目を開けてくれ。」
この声はパーカスじゃないけど、聞いた事がある。青髪の竜人のバルトさんだ。絵本やお菓子を僕に貢いでくれる騎士だ。随分心配そうな声に、僕は頑張って瞼を開けた。
僕の直ぐ目の前に、心配そうな眼差しのバルトさんが顔を寄せていた。僕と目が合うと、バルトさんの瞳が一気に色々な色味の青と虹色に目まぐるしく染まった。パーカスもそうだけど、竜人の瞳は美しくて幾らでも眺めていられる。
僕が黙ったままバルトさんの瞳を鑑賞していると、少し戸惑った様子でバルトさんが僕に優しく尋ねてきた。
「…調子はどうかな。吸虫球に取り付かれたのは覚えているかい?一体何処であれに遭遇したのか教えてくれるか。ああ、こんなに色々一度に尋ねても、まだ具合の悪いテディに聞くのは酷なのに…。」
そう言われて、急に具合が悪い気がしてきた。具合が悪いと言うか、お腹が減ったと言うか。僕は目の前で一人苦悩しているバルトさんを少し面白い気持ちで眺めながら言った。
「僕…、お腹ちゅいた。」
あれ、なんかバグってる。それとも僕はちっちゃなテディに戻っちゃったのかな。でもそれを確認する間もなく、僕は力が入らなくて目を閉じてしまった。目を閉じながら、身体の感覚で、今がどう言う状況なのか探った。
何か柔らかな布ですっぽり包まれてるみたいだ。少し肩が痛む。‥痛い。え?めっちゃ痛い!僕は目をぱっちり開けて、やっぱり眉を顰めて僕を見つめていたバルトさんに訴えた。
「いちゃい!肩いちゃいよ!」
そう懸命に言いながら布から這い出ようとした。するとバルトさんが僕をサッと抱き上げて、浴室の鏡の前まで連れて行った。僕は大きく成長したままだった。そしてバルトさんが僕を縦抱きにしながら、柔らかな布を引き剥がして肩の部分を見せてくれた。
そこには白い包帯の様なもので巻いてあって、少し血が滲んでいた。
「さっき薬草で治療したけれど、傷を見たいかい?吸虫球は何とか剥がれたんだけど、少し噛み跡の様なものが出来てしまったんだ。パーカス殿がいらっしゃれば治してもらえるだろうが。‥具合はどうかな。」
僕は血の滲んだ包帯を見て、何となく気分が悪くなった。あの気持ち悪い黒いものがへばりついた感覚を思い出してしまったし。僕はガクリとバルトさんの首元に頭を乗せると、首を小さく振って言った。
「見ちゃくない。…あれ、どうやってとっちゃ?」
まだ口がバグってる。さっきは上手く喋れたのに。ま、いいか。それより本当にあんなにガッチリくっついてた黒いものをどうやって取ったんだろう。無理矢理?実際傷が痛いし。跡残りそうだなぁ。
するとバルトさんは僕を抱っこして歩き出しながら、思いがけない事を言った。
「…吸虫球は、普通は豊富な魔素を狙って魔物に取り付くんだ。滅多に見かけないが、付いていたとしても数えるほどもない。だから今回テディに取り付いたのが本当に不思議なんだ。
私達、竜人や獣人だって魔素は魔肉などから摂取してるだろう?だから微量ながら皆魔素を持ってるが、吸虫球が取り付く話は聞いたことがない。だから目を疑ったよ。前例がないからどうして良いか分からなかったし。
ただ、魔素の多い魔物が居たら、其方へ移ってくれるんじゃないかと思った。私の目論見は叶えられたよ。」
僕は魔素の多い魔物にあの黒い虫を乗り移らせたのかと、それでもこんなにヒリヒリするのだと思った。ふと、その魔物をどうしたのかと思って顔を上げてバルトさんを見た。バルトさんは僕を抱えたままソファに沈み込むと優しく微笑んで言った。
「ミルは魔素含有量の多い魔物なんだよ。」
僕はハッとして玄関の方を見た。僕の代わりにミルが犠牲になったんだ…。なんか可哀想だ。それに大事な事を今更ながら思い出した。
僕はやっぱり虹色に煌めく青い瞳を見つめながら尋ねた。
「何でバルトしゃんが…。ぱーかちゅはどこ…?」
バルトさんは慌てて僕に、ブレーベルの街の魔物討伐でパーカスが怪我をした事。僕に何か起きたのは分かったが、飛んで来れなくなったのでバルトさんに見てきてくれる様に頼んだ事を教えてくれた。
「え!ぱーかちゅ、怪我だいじょぶ!?」
バルトさんから治療したら直ぐに戻ると言っていたと聞いて、僕はほっとしてもう一度ドサリとバルトさんの肩に寄り掛かった。ああ、良かった。ホッとしたら何だかますますお腹が空いてきた。何ならお腹が空き過ぎて気持ち悪い。
「お腹ちゅいた…。何か食べなくちゃだ…。」
僕はよっこらせと起きあがろうとしたけれど、なぜだかバルトさんが僕をガッチリと抱き抱えて離してくれない。確かにバルトさんの弾力のある胸板は気持ち良いけれどね。
「…バルトしゃん?」
僕がバルトさんの顔を見上げると、急に焦った様に腕の力を抜いて僕をソファにそっと下ろすと立ち上がって言った。
「…私がなにか簡単に食べるものを見繕って持ってこよう。ちょっと待ってて。」
そう言って台所へ向かうと、あちこちの扉を開ける音がした。あのバルトさんにまともな食事の用意が出来るのかは疑問だったけれど、簡単に摘めるものなら僕にも用意出来るので、まぁ期待しないで待っていよう。
僕はパーカスの怪我が気になったけれど、治療したら戻ってくると言う言葉を頼りに心配するのはやめた。僕もパーカスに心配かけない様に、今より元気になって迎えてあげなくちゃだ。
しばらく時間が経って、少し火の通り過ぎた魔鳥のステーキや果物が運ばれて来た。ステーキは小さく切られていて、食べやすくなっている。案外気が利いているのかな。
僕が手を出そうとすると、バルトさんは妙ににっこりして、僕の口元まで肉を運んでくれた。パーカスが焼くものよりは少し硬い気がしたけど、今の成長した僕にはなんて事ない。
思わぬ食欲を感じて、僕はバルトさんに介助されながらペロリとサイコロステーキを食べ切ってしまった。目の前で半分に切られた柔らかな果物は、僕の大好きなアイスクリーム味のノラの実だった。
「ノラの実があるなんて驚いたな。」
そう言いながらスプーンで掬ったノラの果肉を僕の口の中へ放り込む。バルトさんはこんな面倒な事を妙に楽しげにやっている。騎士なのに、ちまちました事が好きなのかな。
僕はノラの実が希少価値である事を思い出して、僕に差し出されたバルトさんの手を掴んでスプーンをバルトさんの口元へ方向転換して言った。
「バルトしゃんも食べちぇ。おいちいよ。」
僕がそう言うと、バルトさんは一瞬妙な間があった。僕はゆっくりとスプーンを口の中に運んだ。形の良い唇が閉じると、僕はにっこり笑って言った。
「ね?おいちいでちょ?」
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