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ちっちゃな身体じゃ物足りない?
救出
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僕は迷っていた。泥を構成している水分と細かな土塊を分離させるのは出来るけど、ゆっくりやっていたらバランスが崩れて決壊して流れ込んで来そうだ。やはり一気にやるしか無い。
「今から一気に周囲の感触を変えますよ!3、2、1!」
頭でイメージした通りにドプンという不気味な音を立てて、彼らの周囲がドロリと溶け出した。料理で使うボールに彼らが入っているイメージで、僕は水分を上部にゆっくり動かした。
「足が動いたら身体を仰向けにして、木に掴まるんだ!」
隊長の声に身体が動く様になった騎士達が、ゆっくりと動いて仰向けになった。まだ膝下が抜けないみたいだ。すると先に木に掴まったパーカスが何か唱えると、辺り一面にゴボゴボと透明な水が吹き出した。
途端に泥から引き上げた足も木に絡めて騎士がしがみつくと、ゆっくりと森に向かって移動し始めた。僕は皆が完全に岸に辿り着くまで念の為に泥を分離し続けた。
森の境目で待っていた騎士達が辿り着いた彼らを引っ張り上げると、僕はホッとしてその場にしゃがみ込んだ。馬鹿みたいに魔力を使ったせいか、鼻血が出そうだ。
泥まみれになったパーカスが僕の側にやって来て、ドサリと僕の側に座り込んだ。
「不覚にも、今度こそはダメかと思ったぞ。ありがとう、テディ。命の恩人じゃ。」
一晩で随分とやつれて見えるパーカスに、僕は思わず抱きついていた。
「…びちゃびちゃだね、パーカス。僕がパーカスの命の恩人だなんて、かっこいいね…。良かった。本当に…。」
僕は自分が泣いているのか、パーカスのせいでびしょ濡れになって顔が濡れてしまったのか判断がつかなかったけれど、大切な人の危機を救えた事に酷く安堵していた。同時に何だか疲れてしまって目が開かなくなっていた。
パーカスが呼びかけているのに、僕は返事が出来なくて、結局何も分からなくなった。
ああ、うるさい。この馬鹿みたいに遠くから聞こえてくる大きな声はダグラスかな。僕は寝心地の良い、爽やかな香りのするベッドの上で寝返りを打った。途端に誰かが僕の頭をなでている気がする。
…この大きな手は誰かな。パーカス?僕は目をしょぼつかせながら目を凝らした。シーツ越しに見える部屋はまるで見覚えがない。ここは何処なんだろう。
「テディ、起きたのかの?」
パーカスの声が聞こえて、僕は安心してもう一度目を閉じた。
「…まだ、ねちぇる。」
パーカスの笑いを含んだ声が、もう一度聞こえてきた。
「フォホホ、眠りながら返事をするとは器用な事じゃな。そろそろ起きて何か食べたほうが良いじゃろう?」
パーカスにそう言われると、途端に空腹を感じた。僕は目を開けると、こちらを覗き込んでいるパーカスに笑いかけて手を伸ばした。
「だっこ。」
ベッドから抱き起こされた僕は、すっかり小さなテディに戻っていた。まぁ口が回らない時点で気づいていたけどね。僕が欠伸を堪えて、パーカスの腕の中から周囲を見渡すと、窓の外に見覚えのある庭園が広がっていた。
「ダグラスのおうち?」
パーカスは僕を腰抱きにしながら、スタスタと部屋を出ると長い廊下を進んだ。
「ああ、死の沼の淵でテディは気を失ってしまったのじゃよ。魔力を使い過ぎたんじゃろうて。あれはこの国の者には出来ない魔法だったぞ。テディは水を出した訳でなく、泥の中から水を取り出したのじゃからな。
私にもそれは無理じゃ。人間というのは、何とも底知れぬの。お陰で助かったぞ。私も何とかしようともがいているうちに手までハマってしまったからの。魔法など手が無ければ役立たずじゃ。
じゃが、テディは気を失ってから長かったの。心配するくらい目覚めなかったのじゃ。」
僕はもう一つ欠伸をしながら尋ねた。
「ちょんなに?僕、いっぱい眠ちぇた?」
パーカスが答える前に、談話室からダグラスが顔を出した。
「テディ!目を覚ましたのか?英雄のお目覚めだ!」
うわ、うるさっ!ダグラスの大声に顔を顰めると、シャルが微笑んで僕の側に来て頭を撫でた。
「テディ、良かった。目を覚ましたんだね。お腹空いたろう。丁度これからお昼なんだ。一緒に食べよう。」
以前より顔色が良くなったシャルは少しお腹も出てきたみたいだった。
婆やとお手伝いに来ているらしい獣人のおばさんが、テキパキと僕らの前に食事を並べてくれた。
「坊やは沢山食べなくちゃ、顔色があまり良くありませんよ?」
そう婆やに言われて、僕は顔を指でひっぱった。眠り過ぎで食べなかったせいかな。
「テディは2日も眠っていたからな。流石に心配になるわな。」
そうダグラスに言われて、僕はギョッとしてパーカスを見た。パーカスは苦笑して、僕にミルを先に飲む様に言って話し出した。
「テディはあの死の沼で我々を助けようとして魔力を使い果たしてしまったのじゃよ。普段どちらかと言うと魔素が多いテディは、魔素が枯渇する方が身体には負担なのじゃ。
流石に丸二日目覚めなかったのは驚いたが、そもそもあの場所で小さなテディに戻ってしまったからのう。よっぽどだったのじゃろう。今日は魔素の多い食事をダグラスが用意してくれたから、しっかり食べなさい。」
僕は慌ててカップを抱えてミルを飲んだ。確かに染み渡る様な美味しさだ。この染みる感じが魔素なんだろうか。しばらく僕はお皿に盛られた魔肉だとか、更に魔肉だとか、時々魔鳥の卵料理を食べるのに忙しかった。
流石にお腹が膨れて、僕は手を止めてパーカスに言った。
「むり。もう…、むりよ。」
なぜか皆が面白そうに笑っている。いや、魔素が枯渇するとヤバいって言ってたよね?
「そんなに一気に食べたからって、魔素が増えたら苦労しないんだがなぁ。まぁ、テディは体質もあるから、それでいいのかもな?」
そう呆れた様に言ってから、ダグラスが大きな魔肉を美味しそうに頬張った。うっぷ。もう人が食べているのを見るのも無理だ。僕は眉を顰めてパーカスに頼んだ。
「ぱーかちゅ、僕おりりゅ。」
椅子から降ろしてもらった僕は、腹ごなしを兼ねてテラスから庭に出た。いつ見てもダグラスの癖に豪勢な庭だ。妙に趣味の良い感じが納得できない。いっそ成金趣味だったらお似合いなんだけど。
そんな事を考えながらニヤついて歩き回っていると、不意に空の向こうから何かが近づいて来るのを感じた。あ?あれって…。それは最初3つの豆粒サイズだったけれど、あっという間に姿をはっきりさせた。
僕が皆に教えようと振り返ると、皆もテラスに出て空を見上げていた。
もう一度前を向くと、彼らが羽ばたきながらダグラスの庭園の向こうの放牧地へと降りて来た。赤竜、青竜、そして白い竜だった。流石に一度に三色の竜が地上に降りるのを見るのは迫力があった。
僕はドキドキしながら、異世界バンザイと心の中で舞い上がっていた。カッコ良すぎる!
三色の竜はあっという間に竜人に姿を変えて庭園の中に入ってきた。気づけばパーカスが僕の側に立っていた。何となくパーカスが緊張している気がして、僕はパーカスの衣装をぎゅっと握った。
するとパーカスは僕をサッと抱き上げて、それでも何も言わずに彼らが近づくのを眉を顰めて見つめていた。それから聞いた事のない強張った声で呟いた。
「…なぜあやつがやって来たのじゃ?」
僕はパーカスと一緒に近づく三人の竜人を見つめた。よく知っている青竜のバルトさんと、赤竜の調子がいい竜人さんと、見たことのない年嵩のパーカスみたいな白い髪のおじいちゃん。誰?
「今から一気に周囲の感触を変えますよ!3、2、1!」
頭でイメージした通りにドプンという不気味な音を立てて、彼らの周囲がドロリと溶け出した。料理で使うボールに彼らが入っているイメージで、僕は水分を上部にゆっくり動かした。
「足が動いたら身体を仰向けにして、木に掴まるんだ!」
隊長の声に身体が動く様になった騎士達が、ゆっくりと動いて仰向けになった。まだ膝下が抜けないみたいだ。すると先に木に掴まったパーカスが何か唱えると、辺り一面にゴボゴボと透明な水が吹き出した。
途端に泥から引き上げた足も木に絡めて騎士がしがみつくと、ゆっくりと森に向かって移動し始めた。僕は皆が完全に岸に辿り着くまで念の為に泥を分離し続けた。
森の境目で待っていた騎士達が辿り着いた彼らを引っ張り上げると、僕はホッとしてその場にしゃがみ込んだ。馬鹿みたいに魔力を使ったせいか、鼻血が出そうだ。
泥まみれになったパーカスが僕の側にやって来て、ドサリと僕の側に座り込んだ。
「不覚にも、今度こそはダメかと思ったぞ。ありがとう、テディ。命の恩人じゃ。」
一晩で随分とやつれて見えるパーカスに、僕は思わず抱きついていた。
「…びちゃびちゃだね、パーカス。僕がパーカスの命の恩人だなんて、かっこいいね…。良かった。本当に…。」
僕は自分が泣いているのか、パーカスのせいでびしょ濡れになって顔が濡れてしまったのか判断がつかなかったけれど、大切な人の危機を救えた事に酷く安堵していた。同時に何だか疲れてしまって目が開かなくなっていた。
パーカスが呼びかけているのに、僕は返事が出来なくて、結局何も分からなくなった。
ああ、うるさい。この馬鹿みたいに遠くから聞こえてくる大きな声はダグラスかな。僕は寝心地の良い、爽やかな香りのするベッドの上で寝返りを打った。途端に誰かが僕の頭をなでている気がする。
…この大きな手は誰かな。パーカス?僕は目をしょぼつかせながら目を凝らした。シーツ越しに見える部屋はまるで見覚えがない。ここは何処なんだろう。
「テディ、起きたのかの?」
パーカスの声が聞こえて、僕は安心してもう一度目を閉じた。
「…まだ、ねちぇる。」
パーカスの笑いを含んだ声が、もう一度聞こえてきた。
「フォホホ、眠りながら返事をするとは器用な事じゃな。そろそろ起きて何か食べたほうが良いじゃろう?」
パーカスにそう言われると、途端に空腹を感じた。僕は目を開けると、こちらを覗き込んでいるパーカスに笑いかけて手を伸ばした。
「だっこ。」
ベッドから抱き起こされた僕は、すっかり小さなテディに戻っていた。まぁ口が回らない時点で気づいていたけどね。僕が欠伸を堪えて、パーカスの腕の中から周囲を見渡すと、窓の外に見覚えのある庭園が広がっていた。
「ダグラスのおうち?」
パーカスは僕を腰抱きにしながら、スタスタと部屋を出ると長い廊下を進んだ。
「ああ、死の沼の淵でテディは気を失ってしまったのじゃよ。魔力を使い過ぎたんじゃろうて。あれはこの国の者には出来ない魔法だったぞ。テディは水を出した訳でなく、泥の中から水を取り出したのじゃからな。
私にもそれは無理じゃ。人間というのは、何とも底知れぬの。お陰で助かったぞ。私も何とかしようともがいているうちに手までハマってしまったからの。魔法など手が無ければ役立たずじゃ。
じゃが、テディは気を失ってから長かったの。心配するくらい目覚めなかったのじゃ。」
僕はもう一つ欠伸をしながら尋ねた。
「ちょんなに?僕、いっぱい眠ちぇた?」
パーカスが答える前に、談話室からダグラスが顔を出した。
「テディ!目を覚ましたのか?英雄のお目覚めだ!」
うわ、うるさっ!ダグラスの大声に顔を顰めると、シャルが微笑んで僕の側に来て頭を撫でた。
「テディ、良かった。目を覚ましたんだね。お腹空いたろう。丁度これからお昼なんだ。一緒に食べよう。」
以前より顔色が良くなったシャルは少しお腹も出てきたみたいだった。
婆やとお手伝いに来ているらしい獣人のおばさんが、テキパキと僕らの前に食事を並べてくれた。
「坊やは沢山食べなくちゃ、顔色があまり良くありませんよ?」
そう婆やに言われて、僕は顔を指でひっぱった。眠り過ぎで食べなかったせいかな。
「テディは2日も眠っていたからな。流石に心配になるわな。」
そうダグラスに言われて、僕はギョッとしてパーカスを見た。パーカスは苦笑して、僕にミルを先に飲む様に言って話し出した。
「テディはあの死の沼で我々を助けようとして魔力を使い果たしてしまったのじゃよ。普段どちらかと言うと魔素が多いテディは、魔素が枯渇する方が身体には負担なのじゃ。
流石に丸二日目覚めなかったのは驚いたが、そもそもあの場所で小さなテディに戻ってしまったからのう。よっぽどだったのじゃろう。今日は魔素の多い食事をダグラスが用意してくれたから、しっかり食べなさい。」
僕は慌ててカップを抱えてミルを飲んだ。確かに染み渡る様な美味しさだ。この染みる感じが魔素なんだろうか。しばらく僕はお皿に盛られた魔肉だとか、更に魔肉だとか、時々魔鳥の卵料理を食べるのに忙しかった。
流石にお腹が膨れて、僕は手を止めてパーカスに言った。
「むり。もう…、むりよ。」
なぜか皆が面白そうに笑っている。いや、魔素が枯渇するとヤバいって言ってたよね?
「そんなに一気に食べたからって、魔素が増えたら苦労しないんだがなぁ。まぁ、テディは体質もあるから、それでいいのかもな?」
そう呆れた様に言ってから、ダグラスが大きな魔肉を美味しそうに頬張った。うっぷ。もう人が食べているのを見るのも無理だ。僕は眉を顰めてパーカスに頼んだ。
「ぱーかちゅ、僕おりりゅ。」
椅子から降ろしてもらった僕は、腹ごなしを兼ねてテラスから庭に出た。いつ見てもダグラスの癖に豪勢な庭だ。妙に趣味の良い感じが納得できない。いっそ成金趣味だったらお似合いなんだけど。
そんな事を考えながらニヤついて歩き回っていると、不意に空の向こうから何かが近づいて来るのを感じた。あ?あれって…。それは最初3つの豆粒サイズだったけれど、あっという間に姿をはっきりさせた。
僕が皆に教えようと振り返ると、皆もテラスに出て空を見上げていた。
もう一度前を向くと、彼らが羽ばたきながらダグラスの庭園の向こうの放牧地へと降りて来た。赤竜、青竜、そして白い竜だった。流石に一度に三色の竜が地上に降りるのを見るのは迫力があった。
僕はドキドキしながら、異世界バンザイと心の中で舞い上がっていた。カッコ良すぎる!
三色の竜はあっという間に竜人に姿を変えて庭園の中に入ってきた。気づけばパーカスが僕の側に立っていた。何となくパーカスが緊張している気がして、僕はパーカスの衣装をぎゅっと握った。
するとパーカスは僕をサッと抱き上げて、それでも何も言わずに彼らが近づくのを眉を顰めて見つめていた。それから聞いた事のない強張った声で呟いた。
「…なぜあやつがやって来たのじゃ?」
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