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文化祭の打ち上げ

ジャグジー

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ガラス張りのテラスに設置されたジャグジーは南国調で、さっきまでの温泉の雰囲気とはまた違っていた。僕はさっきのちょっと怖い感じの出来事を振り払いたくて、キヨくんの前を歩いて先に立ってジャグジーに入った。数人の先客がいたけれど、クラスメイトは居なくて、身体の周囲に渦巻く大きな泡が非日常で楽しかった。

「さっき何か慌ててた?」

僕の側に腰掛けたキヨくんが、僕に尋ねて来た。僕は何て言えば良いか分からなかったので、首を振った。眼鏡を掛けていないキヨくんは、目を細めて僕を見つめたけれど、僕は思わず顔を逸らした。


先客がドヤドヤと出て行って、突然僕たちは二人だけになった。するとキヨくんはさっきよりも強めの口調で僕に尋ねた。

「玲、本当に何もなかった?様子が変だったろう?」

僕はキョくんが伊達に委員長の役割をして来なかったのを、まざまざと感じてしまった。圧が強くて黙ってる方が難しい。僕は諦めて言った。


「…あの、ロッカーで隣になった男の人が親切にしてくれたんだけど、露天風呂で、その、股間を触られた感じがして。一瞬だったけどね!」

キヨくんの顔が怖くて、僕は慌て言った。キヨくんはザブリとお湯の中で立ち上がった。

「は!?痴漢ってことか!?もしかしてさっき通り過ぎた奴…!」

僕はキヨくんの声が大きくて、慌てて宥めながら言った。

「ちょ、声大きいよ。多分、もう逃げちゃったと思うから。ちょっと触れられた気がしただけだし。それだけだから!キヨくん大袈裟にしないで、ね?僕も恥ずかしいし。」


キヨくんは明らかに怒った様子で、イライラしていたけど、ふと僕の方を向いて言った。

「こんな事はもう起こさせないから。やっぱり玲は危なっかしい。それにもっと色々警戒しないと。」

そう、キヨくんがブツブツ言うのを聞きながら、僕は本当の事は言えないなと思った。本当はもっと誘われる様な事言われたし、一瞬どころか結構ガッツリ握られたし、僕もうっかり露天風呂について行っちゃったし、キヨくんが青筋立てて怒るのが目に見えてたから。


そうは言っても、僕の代わりに凄く怒ってくれて、何だか大事にされてる様で嬉しかった。僕は思わず泡の中のキヨくんの手を握って言った。

「ふふ、キヨくんの方が凄く怒ってて、僕が怒る必要ないみたい。今度は変な人について行かないから。ね?」

すると、お湯の中でキヨくんが僕の手をぎゅっと握って、ジロリと僕を見た。

「…玲。やっぱり痴漢を親切な人だと思ってついて行ったんだな?まったく、本当昔から全然玲は成長してない。…これ以上心配させないでくれよ。」


僕はそう言われてもしょうがないのは分かっていたけど、少し面白くなくて手を離そうと引っ張った。けれど、キヨくんは結局ジャグジーを出るまで手を離してくれなかった。もう、お陰でのぼせそうだったよ!


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