御曹司の恋〜君は悪魔か天使か〜

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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巻き込まれて

橘弟の事情

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 私はドキドキし始めた鼓動を感じ始めると、イケメンは身体に悪いと思いながら、顔をしかめたまま話の続きを待った。

「…弟は2か月前にアメリカから帰国したばかりで、知り合ったばかりの君の従姉妹と直ぐに恋人関係になったみたいだった。久しぶりの日本人の女の子にすっかりハマってしまった尚弥は、色々お金も時間もかけていたようだよ。

 でも、突然もっと好きな人が出来たと振られてしまってね。まぁ、尚弥も変に久しぶりの日本人との恋愛に理想を見ちゃったせいか、ショックが大きかったようだ。酒も弱くはなかったが、まぁ運が悪くて転落事故が起きたんだ。命には別状は無かったんだが、なかなか意識を取り戻さなくてね。…随分ヤキモキさせられたよ。」


 そう言う橘の横顔にはその時の心労が浮かんでいるようで、私は思わず橘の手を握っていた。つい握ってしまった私の手を見ながら、橘はその上から反対の自分の手を重ね合わせた。

「慰めてくれたのかい?…君は優しい人だ。そう、私は心労で疲れ果てているんだ。少しだけこのままで。随分慰められるものだね…。」

 そう言って、私の手を離してくれなかった。私は、もう開き直って、橘の大きな手の感触だとか、温かさだとかを気にしないようにしながら話しの続きを促した。


 「…ああ、さっきの続きだが。目を覚ました弟は「ミナ」に振られた事をすっかり忘れてしまっていた。ヤケになって酔っ払った事も。頭を打ったせいでその前後の記憶がすっぽ抜けたらしい。まぁ、よくある現象だと医者は言っていた。

 だが、困ったことになった。弟は恋人になぜ会えないのか、会いに来ないのか私たちに尋ねて困らせた。医者がショックを与えるのは早いと言うから、本当のことも言えないだろう?

 しょうがなく「ミナ」を連れてくるよう、私の出動となったわけだ。まぁ、恋人たちが別れるのはしょうがないことだ。でも君の従姉妹の場合、さっさと別の男と旅立ったって事はなかなかの強者だ。弟も見かけの清純さに騙されたんだろう。」


 私は従姉妹の美波の悪口を聞いていたが、あえて反論はしなかった。実際、美波は男癖が悪くて、常に4~5人の恋人をローテーションしてるような悪い女だったからだ。

 私がいつもそろそろ一人に絞るように忠告していたのだけれど、私の方が恋愛下手過ぎて問題だと説教される羽目になるばかりで、最近は忠告もせずに傍観していたのだ。その結果が、美波の尻拭いに巻き込まれているのだから割りに合わない…。

 私が美波の事を黙り込んで考えていると、私の手を橘が優しく握り返した。

 「君も、従姉妹にだいぶ振り回されているようだ。私たちは似たもの同士かもしれないね?」


 私は何だか可笑しくなって、クスッと笑うと頷いた。

「ええ。そう言えば私は中学生の頃から、美波の尻拭いに巻き込まれてきた気がします。おかげで男の子と付き合うことに慎重になってしまって。でも外見が派手だから誤解されやすいんですよね。お陰で外見だけで寄ってくる異性をシャットアウトはしやすいです。」

 橘は私を見つめると耳元でささやいた。

「君にキスすれば、大概のことは直ぐに分かるよ…。」

 私は顔が熱くなって、橘の手を振り払うと横目で睨んだ。

「突然キスしてくるような人もシャットアウトですっ!」


 丁度その時、タクシーが停車して病院に到着したようだった。私は通常の一般の入院棟とは別のエレベーターへ案内されて、一緒に乗り込んだ。

 いよいよ橘弟と面会だ。美波のフリは出来なくても、優しくすることは出来る。まだはっきりとしてない様子ということだし。緊張した私の表情が固かったのか、橘は私を引き寄せてそっと抱きしめた。

「大丈夫。上手くいくさ。わたしも病室に一緒に居るから…。」

 私は自分の事でいっぱいになっていて、橘がどんな顔をしているのか見ていなかった。橘が咳払いした丁度その時、エレベーターが到着した軽いベル音がした。


 私は自分が、この出会ったばかりの男の腕の中にいたことに、我ながらギョッとしてしまった。どうかしてる。今までの自分では考えられないことばかりしている様に思ったけれど、きっとこんなトラブルは滅多にない事だからだろうと気持ちを切り替えた。

 最初の、嫌な男だと思った印象がどんどん薄れていく事には気づかなかったフリをして…。

 特別室というプレートを見ながら入室した豪華な部屋の真ん中のベッドに、青褪めた顔でこちらを見つめる若い男が横になっていた。

 「尚弥、起きてたのか。ミナを連れてきたよ。どうも連絡が取れなかったらしくて、来るのが遅くなってしまったらしい。」


 橘はそう言うと、先に部屋に入って行った。私はなるようになれと、思い切って美波を演じようと思った。私は橘を追い越すと、尚弥の枕元にかがみ込んで少し高い声で呼びかけた。

「尚弥、早く来れなくてごめんね。階段から落ちたの知らなくて…。大丈夫?」

 そう言って、尚弥の青褪めた頬をそっと触った。尚弥はクシャリと嬉しげに笑うと、傷に触ったのか痛そうな顔をして言った。

「ミナ、来てくれたんだ。キスはしてくれないの?」


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