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巻き込まれて
お見舞いに行きました
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私が男のことをイケメンだと言うと翼は納得した様にニヤつきながら言った。
「そうでしょうね。まぁ日向コーポレーションの課長さんなら身元もはっきりしてるし、何か困ったことにはならないんじゃないの?美那は、放っておくことが出来ないタチだからしょうがないわね。出来る範囲でやればいいんじゃない?それで今日もお見舞いに行くの?」
「ええ、行くつもりよ。用もないしね。」
私は心のどこかで、翼の賛同が得られたことに少し安心して、これでいいんだと自分を正当化したような気がした。仕事が終わる頃には、私の気分もすっかり普段通りになっていた。
ちょっとした小さなブーケを手に持って、病室の扉から顔のぞかせると、ベッドの上から弟の橘 尚弥が、顔をこちらに向けていた。起きていたようだ。
「お加減はいかが?」
私はうっかり美波に擬態するのを忘れて、いつもの私らしく声をかけてしまった。美波だったら、もう少し可愛らしく話しかけるのではないだろうか?私は少しドキドキしながらベッドに近づくと、尚弥は黙って私を見つめていた。そしてにっこり微笑むと言った。
「今日も来てくれたの?ありがとう。昨日は眠っている間に帰ってしまって、寂しかったよ。ミナ、キスをしてくれないの?」
私は覚悟を決めてベッドの側にかがみ込むとひんやりする頬に口づけた。弟は何か言いたげだったけれど、特に何も言わなかった。
私は体調について、あれこれ尋ねたけれど、尚弥は上の空で私の顔を見つめ続けた。私はこんなに近くにいたら美波でないことは明らかだと焦って、ブーケを見せてアレルギーが無ければ飾るわねと、席を立った。
私の様子を見て、嬉しそうに笑う尚弥の顔を見ながら、私はつくづく美波がどうしてこの男を振ったのかわからないと思った。きっと10人女の子がいれば、10人とも好きになってしまいそうな男だと思ったからだ。
「…俺の顔に何かついているかい?」
私が凝視したせいで、尚弥に怪しまれた気がして慌てて答えた。
「いいえ、ただずいぶん顔色が良くなったなぁと思っただけなの。すぐに元気になるわ。記憶も思い出せるでしょうね。」
私の言葉に、少し考え込みながら尚弥は答えた。
「階段から落ちたらしいんだけど、その時のことを全然覚えてないんだ。まぁ、痛みを覚えてなくて良かったけど。その前の数日のことも全く思い出せない。俺は酒に強いから、階段から落ちるほど飲むなんてないと思うんだ。よっぽどショックなことがあったのかな。」
そう言って私を見上げる眼差しは兄征一によく似ていて、私は胸がドキドキした。兄の眼差しに似て怖くてドキドキしたのか、従姉妹の美波のふりをしている罪悪感でドキドキしたのか、よく分からなかったけれど。
美波に振られてやけになった事を思い出そうとする尚弥に、今じゃないと焦った私は尚弥の手を握って言った。
「無理に思い出そうとしてはダメよ。頭を打ったのだから負担になるでしょ?自然に思い出すってドクターも言ってたし。ね?…そう言えば、私今日は朝からなんだか疲れちゃってたの。でも、先輩に貰った高級チョコ一粒ですっかり元気になっちゃって、あれは何かハイになる成分でも入ってたのかもしれないわ。それでね…」
美波は会社は違うけれど似たような仕事内容だったので、そこでの嘘は必要なかった。お昼に何を食べたとか、くだらない話をしてしまったが、聞いてる尚弥の顔が明るくなったので嬉しく感じた。
気がつけばもう結構時間が経っていたので、そろそろ帰ろうと椅子から立ち上がって言った。
「今日はもうこれで帰るわ。明日はちょっと来られないけど、明後日にもう一度来るわね?今よりきっと良くなってね、約束よ?」
そう言う私の顔をじっと見つめると、尚弥はにっこりと微笑んで手を伸ばした。私が差し出された手を握るとぎゅっと握って言った。
「…君が来るのを楽しみに待っているよ。気をつけて帰ってね。」
私がミッションを終えて、ホッとした気持ちで病室に近いエレベーターに向かっていると、正面からあの男が歩いて来た。橘征一は、少し戸惑う様な表情で私を見つめると言った。
「…来てくれていたのかい?」
「約束ですから。失礼します。」
私がそう冷たく答えると、少し困った顔をして車で来ているから送ると言い出した。私はなんとなく、これ以上この男と接近するのは不味い気がして、本当はまっすぐ帰る予定だったけれど嘘をついた。
「これから人と会う約束してますから結構です。」
すると少し怖い顔をして、誰に会うのかと問い詰めてきた。私はまたムカついてきた。どうしてこの男はこんなに私に偉そうなの!?
「あなたには関係ない話です。失礼します。」
そう言うと、ちょうどやってきたエレベーターに飛び乗った。ほんとに何なんだろう。しかも私はどうしてこんなにイライラしてしまうんだろう。元々温厚で、あまり他人に腹を立てる事なんてほとんどないって言うのに。
私の天敵なのかもしれないな。私もこのミッションが終われば、もう二度と会わなくていいんだ。私はそれだけを励みに頑張ろうと、足早に駅に向かった。
「そうでしょうね。まぁ日向コーポレーションの課長さんなら身元もはっきりしてるし、何か困ったことにはならないんじゃないの?美那は、放っておくことが出来ないタチだからしょうがないわね。出来る範囲でやればいいんじゃない?それで今日もお見舞いに行くの?」
「ええ、行くつもりよ。用もないしね。」
私は心のどこかで、翼の賛同が得られたことに少し安心して、これでいいんだと自分を正当化したような気がした。仕事が終わる頃には、私の気分もすっかり普段通りになっていた。
ちょっとした小さなブーケを手に持って、病室の扉から顔のぞかせると、ベッドの上から弟の橘 尚弥が、顔をこちらに向けていた。起きていたようだ。
「お加減はいかが?」
私はうっかり美波に擬態するのを忘れて、いつもの私らしく声をかけてしまった。美波だったら、もう少し可愛らしく話しかけるのではないだろうか?私は少しドキドキしながらベッドに近づくと、尚弥は黙って私を見つめていた。そしてにっこり微笑むと言った。
「今日も来てくれたの?ありがとう。昨日は眠っている間に帰ってしまって、寂しかったよ。ミナ、キスをしてくれないの?」
私は覚悟を決めてベッドの側にかがみ込むとひんやりする頬に口づけた。弟は何か言いたげだったけれど、特に何も言わなかった。
私は体調について、あれこれ尋ねたけれど、尚弥は上の空で私の顔を見つめ続けた。私はこんなに近くにいたら美波でないことは明らかだと焦って、ブーケを見せてアレルギーが無ければ飾るわねと、席を立った。
私の様子を見て、嬉しそうに笑う尚弥の顔を見ながら、私はつくづく美波がどうしてこの男を振ったのかわからないと思った。きっと10人女の子がいれば、10人とも好きになってしまいそうな男だと思ったからだ。
「…俺の顔に何かついているかい?」
私が凝視したせいで、尚弥に怪しまれた気がして慌てて答えた。
「いいえ、ただずいぶん顔色が良くなったなぁと思っただけなの。すぐに元気になるわ。記憶も思い出せるでしょうね。」
私の言葉に、少し考え込みながら尚弥は答えた。
「階段から落ちたらしいんだけど、その時のことを全然覚えてないんだ。まぁ、痛みを覚えてなくて良かったけど。その前の数日のことも全く思い出せない。俺は酒に強いから、階段から落ちるほど飲むなんてないと思うんだ。よっぽどショックなことがあったのかな。」
そう言って私を見上げる眼差しは兄征一によく似ていて、私は胸がドキドキした。兄の眼差しに似て怖くてドキドキしたのか、従姉妹の美波のふりをしている罪悪感でドキドキしたのか、よく分からなかったけれど。
美波に振られてやけになった事を思い出そうとする尚弥に、今じゃないと焦った私は尚弥の手を握って言った。
「無理に思い出そうとしてはダメよ。頭を打ったのだから負担になるでしょ?自然に思い出すってドクターも言ってたし。ね?…そう言えば、私今日は朝からなんだか疲れちゃってたの。でも、先輩に貰った高級チョコ一粒ですっかり元気になっちゃって、あれは何かハイになる成分でも入ってたのかもしれないわ。それでね…」
美波は会社は違うけれど似たような仕事内容だったので、そこでの嘘は必要なかった。お昼に何を食べたとか、くだらない話をしてしまったが、聞いてる尚弥の顔が明るくなったので嬉しく感じた。
気がつけばもう結構時間が経っていたので、そろそろ帰ろうと椅子から立ち上がって言った。
「今日はもうこれで帰るわ。明日はちょっと来られないけど、明後日にもう一度来るわね?今よりきっと良くなってね、約束よ?」
そう言う私の顔をじっと見つめると、尚弥はにっこりと微笑んで手を伸ばした。私が差し出された手を握るとぎゅっと握って言った。
「…君が来るのを楽しみに待っているよ。気をつけて帰ってね。」
私がミッションを終えて、ホッとした気持ちで病室に近いエレベーターに向かっていると、正面からあの男が歩いて来た。橘征一は、少し戸惑う様な表情で私を見つめると言った。
「…来てくれていたのかい?」
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私がそう冷たく答えると、少し困った顔をして車で来ているから送ると言い出した。私はなんとなく、これ以上この男と接近するのは不味い気がして、本当はまっすぐ帰る予定だったけれど嘘をついた。
「これから人と会う約束してますから結構です。」
すると少し怖い顔をして、誰に会うのかと問い詰めてきた。私はまたムカついてきた。どうしてこの男はこんなに私に偉そうなの!?
「あなたには関係ない話です。失礼します。」
そう言うと、ちょうどやってきたエレベーターに飛び乗った。ほんとに何なんだろう。しかも私はどうしてこんなにイライラしてしまうんだろう。元々温厚で、あまり他人に腹を立てる事なんてほとんどないって言うのに。
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