御曹司の恋〜君は悪魔か天使か〜

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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モテ期到来

征一sideピリピリした空気

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 美那は明らかに動揺しているようだった。私は咄嗟にエレベーターへ乗り込んだが、美那は取り付く島もなくて、「尚弥と恋人なら当然の事」は私のせいだと暗に示して足早に歩き去っていった。私はこれ以上美那にかける言葉も見つからなくて、自分を罵るとエレベーターが上昇するに任せた。

 部屋に入るといつになく機嫌の良い尚弥は随分元気になっていた。後で退院の目処がつくかドクターに聞いてみる必要がありそうだ。それより私は尚弥に確認する必要があった。


 「…尚弥、さっきエレベーターでミナさんに会ったけど様子が変だったが。何かあったのか?」

 尚弥は私の様子に肩をすくめて言った。

「…兄さんがそんなに心配する必要はないよ。俺と彼女の問題だ。」

 私は、尚弥の様子を見つめて、ハッとした。

「尚弥、お前気づいてるだろ?当然だ。彼女と恋人のキスしたら簡単にわかる事だ。」


 尚弥はしばらく私を真っ直ぐ見つめて言った。

「何が言いたいの?それにその言い方は気に入らないな。まるで兄さんが彼女と恋人のキスをした事があるのかと思わせるだろ?」

 私は苦々しい気持ちで尚弥に近づいた。

「…思い出したのか?ミナとの事。」

 尚弥は私を少し不思議そうな顔で見つめると、少し笑って言った。


 「そうか、兄さんは勘違いしてるんだね。俺がミナと会いたがっていたのは恋しかったからじゃないんだ。彼女と別れたかったのに掴まらなくて、それが気になってて会いたかったんだ。

 まぁ、それを思い出したのは彼女と2度目に会った時だけどね。彼女がミナじゃないって気付かされて、俺がミナと別れたかった事を思い出したんだ。

 彼女は一体誰なんだい?俺が恋人のふりを続けたいくらい彼女は素敵な人だ。ぱっと見はミナによく似てるけど中身はまるで逆だ。優しくて、心が綺麗でキスに慣れてない。俺はこのまま彼女を自分のものにするつもりだよ。…兄さんがどう思っていようが関係ない。」


 そう言って私を見る眼差しは、美那を誰にも渡さないという強いものだった。だが私もまた、尚弥が美那とキスしたことを知ってから騒ついているこの心が、今ハッキリしたのだった。

 「…そうだな。お前のためにと思ってこんな状況になってしまったが、今となっては私もこの出会いに感謝しているよ。」

 尚弥は顔を顰めて言った。

「ベッドに括り付けられてる俺と違って、自由に動ける兄さんの方が有利だね。…彼女が誰なのかぐらいは教えてくれても良いだろう?」

 私は、病室の冷蔵庫からミネラルウォーターを2本取り出すと、一本を尚弥へ放り投げて壁際の椅子へ腰掛けた。水をごくごく飲んで気を落ち着けると、尚弥を見つめて言った。


「…彼女は田辺美那。お前が付き合ってる田辺美波の従姉妹だ。よく似てるだろう?お前は知っていたか?田辺美波は彼女とルームシェアしていたんだ。

 …お前はミナにこっ酷く振られたせいで、やけ酒を煽って事故にあったんだと私たちは思っていた。お前の意識が朦朧としてる時に、しきりにミナに会いたいって言うものだから、私は彼女の部屋へ押しかけてお前に顔を見せて欲しいと頼みに行った。


 当然、私はお前の彼女の顔は知らなかったし、偶然にも二人ともミナと呼ばれていた。私は随分酷いことを彼女に言ったが、誤解だと分かっても、彼女はミナの代わりにお前に会ってくれると言ってくれた。私はお前のことが心配でほとんど八つ当たりに近かったんだ。

 実はお前の彼女の美波は男と海外旅行へ行ってしまったらしい。彼女は言ったよ。昔から尻拭いをさせられてきたって。だからか、今回も諦めてお前を元気にするために身代わりになってくれたんだ。

 まさか、お前が気づいてたなんて思わなかったが…。考えてみれば意識がはっきりすれば自分の彼女かどうかなんて、当然分かるはずだよな。」


 私は自分の愚かさ具合にため息が出たけれど、心のどこかで美那と会いたくて、この状況を見て見ぬふりをしていたのかもしれないと思った。俯いて考え込んでいた私に、尚弥が声を掛けてきた。

「…兄さんや父さんたちに心配かけたのは申し訳なかったよ。そこまで心配してくれてたなんて俺知らなかったんだ。ありがとう。」

 私はこんな時でもちゃんと冷静に気持ちを伝えてくる尚弥の素直さに、ちょっと羨望すら感じた一方、照れ臭くもなって黙って頷いた。私達はしばらく黙り込んでいたけれど、尚弥が気まずい空気を払って言った。


「俺、ちゃんと美那にお礼を言いたい。実際、彼女が見舞いに来てくれたお陰で早く元気になったのは確かだ。キスしたのは後悔してないけど、彼女にはちゃんと謝りたいし。兄さん、彼女の連絡先教えてくれよ。」
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