御曹司の恋〜君は悪魔か天使か〜

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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新しい関係性

決心

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 裕樹さんの唇が離れても、私は目を開けられなかった。すっかり身体が重く気怠くなってしまって、ようやく目を開けると、私の顔をじっと見つめる裕樹さんの猛々しい眼差しがそこに待っていた。

 私は何だかどこか振り切った気持ちになって、裕樹さんに言った。

「…裕樹さんの家に行きます。」

 それから私たちは何も喋らずに、ただ繋ぐ手だけが熱くて、タクシーに乗って裕樹さんのマンションへ向かった。エレベーターに乗り込むと、裕樹さんは私を抱きしめて貪るようなキスを浴びせた。

 私は裕樹さんの情熱に流されてる気もしたけれど、確かに自分の中でも裕樹さんを欲しいと思ってた。ドキドキする心臓を感じながら、私たちは急ぎ足でマンションのドアの前にたどり着いた。


 その時、マンションの外廊下をコツコツとヒールが響く音がして、私たちは一緒にその音の方へ振り向いた。

「野村さん、話があるの。」

 そう言ってこちらを見つめて立ちすくむ女性は、20代後半に見える女性だった。私はこの状況に混乱して裕樹さんの顔を見上げた。私の手を握る裕樹さんの力が篭ったのがわかった。

 裕樹さんは強張った顔をして、その女性に言った。

「…佐藤さん。何か用?」

 佐藤さんと呼ばれた女性は私を睨みつけた。そして息を吸い込んで咳払いすると思わぬことを言い始めた。

「野村さんと二人で話したいの。話せないかな。」


 野村さんはため息をつくと、酷く険しい顔をして言った。

「俺には何も話すことはないよ、佐藤さん。悪いけど帰ってくれないかな。見てわかるでしょ。俺の彼女の気を悪くしたくないんだけど。大事な人なんだ。」

 佐藤さんと呼ばれたその女性は、唇を噛み締めると悔しげに私を睨みつけて言った。

「…野村さんは、私の恋人よ。あなた誰?」

 野村さんは私の手を握りしめると、険しい顔をしてその女性に言った。

「君とは半年前に別れたよね。しかも君が一方的に。彼女に誤解させるような事は言わないで欲しい。これ以上付き纏う様なら出るところ出るから。」


 そう言うと彼女に背を向けて自宅の鍵をガチャガチャと開けた。その時私は、その女性がゆっくりと私たちに近づいてくるのに気づいた。それからの出来事はまるで映画のような情景のようで、私には何が現実なのかよく分からなかった。

 次の瞬間にはその女性はエレベーターへ向かって走っていて、野村さんの大きな怒号と私の悲鳴が外廊下に響き渡っていた。いくつかのドアが開いて住人らしき人たちがこちらを伺っていた。

 
 野村さんは女性の繰り出したナイフをバックで受けた。少し硬めのカジュアルバックは果物ナイフが少しだけ刺さったものの、特に人的被害は無かった。

 私は凄まじい勢いで心臓が締め付けられるのを感じながら、さっきの女の人の無表情な顔を思い出して震えていた。立ちすくむ私に、マンションの住人らしき年上の女性が声を掛けてくれて、私はぎこちなく大丈夫だと頷くしかなかった。


 エレベーターへ追いかけた野村さんとマンションの住人の男性が、マンションの入り口でさっきの女性を捕まえて、直ぐに警察を呼んだみたいで、少ししてパトカーの赤色灯とサイレンが辺りに響き渡った。

 直ぐに野村さんが私のところに駆けつけて、少し乱れた服装と青ざめた顔で私に尋ねた。

「…美那ちゃん大丈夫?放っておいてごめん。今捕まえないと駄目だと思って。…なんか巻き込んでごめん。俺もなんでこんな事になったのか全然わからなくて…。

 今から警察の事情聴取なんだけど、一緒に来てもらえる?美那ちゃんの目撃情報も必要らしくて。」


 エレベーターの方に警察官が二人顔を見せた。私は裕樹さんに頷くと、寄り添ってくれていたマンションの住人の女性に深く頭を下げるとパトカーに乗り込んだ。

 人生で一度くらいパトカーに乗ってみたいと思ったけれど、こんな事件に巻き込まれた状態で乗りたくはなかったなとぼんやり考え込んでいた。

「…美那ちゃん、ごめんね。変な事に巻き込んじゃって。でも俺にも訳がわからないんだ…。ああ、どうなってるんだ、ほんとに。」

 そう言うと裕樹さんは頭を掻きむしった。


 確かに元カノ?にいきなり刃を向けられたら、動揺するだろう。しかも、さっきの話を聞き齧った感じでは、裕樹さんが一方的に振られた感じだった。私は裕樹さんの手を上からそっと覆うと囁いた。

「私は大丈夫です。裕樹さんの方がショックでしょ?だから気にしないで。」

 裕樹さんは、重ねた私の手を握り込むと力なく微笑んで言った。

「…ありがとう。でも美那ちゃんに怪我がなくて良かった。本当に。」

 私はあの時、女性が私目がけて来たのを見ていた。びっくりして一歩も動けなかった。裕樹さんの反射神経がなければ、もしかして刺されていたかもしれない。私は急に怖さが現実に重なって震えが止まらなくなった。

 裕樹さんの伸ばした腕に包まれても、私はしばらく震えていた。

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