御曹司の恋〜君は悪魔か天使か〜

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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新しい関係性

野村さんとの再会

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 待ち合わせ場所で会った野村さんは遠目に見ても少し痩せていた。 私に気がついた野村さんは嬉しそうに顔を輝かせたけれど、その次の瞬間には少し悲しげな顔で微笑んだ。

 私たちには何か言わなくても、その先の答えが出ている事をお互いに分かっていたからだ。目の前のコーヒーを前に、野村さんは私に言った。


「俺 どうしようもない事が人生にあるんだって、しみじみ思い知らされたんだ。俺がどんなに美那ちゃんを好きでも、俺達の縁は繋がらなかった。

 …俺は彼女を恨んだよ。美那ちゃんとの仲を邪魔したから。でも彼女もまた、俺を恨んでた…。理由はともかく、俺の今まで適当に付き合った女の子達の恨みだと思えばそうかもしれない…。

 結局自業自得だったのかもしれないって、最近は思うよ。俺が本当に大事にしたかった美那ちゃんと俺との縁はもうないから …。残念だけどこれが事実だよね。

 俺が美那ちゃんを責めることはないよ。美那ちゃんには幸せになってもらいたい。本当にそう思うし、シンプルにそれだけだ。俺がこれから誰かを好きになったとしても、美那ちゃんのことはずっと覚えてると思う。

 俺の人生で眩しい恋だったから…。美那ちゃん以上に好きになれる子はいるのかな…?でも人生なんてそう思っていても、また新しいことが始まるんだろうね。

 だから美那ちゃんは、俺に悪いとか全然罪悪感とか持たないでね。俺たちに縁がなかった、ただそれだけのことだから。」


 そう言って寂しそうに野村さんは微笑んだ。私は野村さんの話に只々頷くしかなかった。

 そして私も野村さんと付き合うと思っていたあの瞬間は、嘘じゃなかったって知っていた。もしあの女が現れなければ、私たちは結ばれていたんだと思う。

 ただやっぱり縁がなくてそういうことにはならなかったんだと、野村さんの言うことがシンプルに腑に落ちた。野村さんは私に言った。


 「俺は翼ちゃんとは仲良くして貰っているけど、美那ちゃんにはもう会わない方がいいと思う。俺は美那ちゃんのことがやっぱり好きだから、会わない方がいい…。

 それに俺、転勤願い出したんだ。海外に行くか、他の都市に行くか…。とにかく心機一転やり直そうと思って。だから10年ぐらい経って、もうお互いに結婚してたり、子供がいたりして…。

そういう時にもし皆で会う機会があったら、あの時怖かったよねって笑い飛ばせるようになってるといいなって、そう思うんだ。実際怖かったしね 。

 美那ちゃんが病院に通って少しづつ上手くいってるって翼ちゃんに聞いて、本当に安堵したんだ。でも、俺のせいでこんなことになって本当にすまなかった。」


 私は野村さんに何も言えなかった。頷いて、ただ一言さようならとしか。そしてお互いに幸せになろうと言う野村さんに、今までありがとうとしか言えなかった。

 私も野村さんと過ごした時間は楽しくて、ドキドキしたのは本当だから。

 少ししょぼくれた気持ちで野村さんと別れると、私は店を出て通りを歩き始めた。いつの間にか街中を通り過ぎて、大きな神社の側まで来ていた。学生の頃にパワースポット巡りにハマっていた私は、何度か参拝したことのある神社だった。

 大きな鳥居を見上げると、その厳かな空気を感じた。すると後ろから私の名前を呼びながら近づいてくる足音がした。ハッとして振り返ると、征一が困った顔をして立ち止まった。


「征一さん、ごめんなさい!勝手に歩いてきちゃって…。」

 私を心配した征一と、野村さんとの話が終わったら、店の外で待ち合わせする約束をしていたのだった。すっかり忘れてしまった私は、連絡もせずにぼんやりとここまで来てしまった。

 征一は、微笑むと全然大丈夫と言って、私の手をそっと繋いで境内に向かってゆっくり歩き始めた。私たちは特に何を話すこともなく、この静かな澄み切った空間を楽しんだ。


「…征一さん、私ここには、学生の頃時々来ていたんです。ほらパワースポット巡りが流行り出した時で、若気の至りであちこち面白がって出歩いてたんです。

 でも、そのうち自分の心の中がリフレッシュする気がして、ここは何度か一人でも来てました。はぁ、そう言えば社会人になってからは、日々に追われて来てなかったかも…。

 やっぱりスッキリしますよね?征一さんはどう感じますか?」


 征一は私を見つめて微笑んだ後、立ち止まって、神社の大木を見上げて呟いた。

「そうだね。…人間なんてちっぽけなものだと、畏怖さえ感じるよ。私にはここは少し怖い場所だ。自分の矮小な心根が試されてるような気がする。

 ふふ、こんな事久しぶりだ。良かった、美那と出会えて。…こんな気持ちになったのも本当に久しぶりだから。」

 そう言って、征一は私の手を少し力を入れて握った。私たちは、また本殿まで歩き始めた。結局、参拝した後、一度自分のシェアマンションに戻ることにした。

「本当に送っていかなくて大丈夫?」

 心配そうな征一に、私は頷いて言った。


 「ええ、ちょっと部屋の空気を入れ替えたりするだけですから。…夕食までには戻ります。あの、何か買っていきましょうか?」

 征一はにっこり明るく笑って言った。

「食べてくれる人がいるなら、ご飯作るのも苦じゃないさ。簡単なもので良かったら作るから、気にしないでくれ。…そうだな、何か美那の食べたいデザート的なものを買って来てくれると助かるかな?」

 征一と別れて電車に揺られながら、私は今日、新しい何かが始まるのをじわじわと感じ始めていた。
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