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辺境の地で
誕生日の後で
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結局次々とダンスパートナーを替えて、クタクタになるまで踊った僕は、すっかり疲れ切ってしまった。気づけば、ラファエルの姿も無く、大人の男達は葉巻の部屋でポーカーに勤しみ、淑女達はラム酒を掲げて、僕たちお子様達はそれぞれ屋敷へと帰って行った。
僕はフレッド兄様とシモン兄様と一緒に、執事見習いに促されるままに、疲れた身体を引き摺って言葉少なに部屋へと戻った。シモン兄様が僕の額に口付けて、優しく囁いた。
「アンドレア、お誕生日おめでとう。生活が一変して、嫌なこともあるかも知れないが、時々乗馬に付き合うよ。」
僕が頷くと、後ろから来たフレッド兄様も、僕を羽交締めにして言った。
「アル、剣の相手もするからな!癇癪を起こすなよ?」
僕はクスクス笑って二人の歳の近い兄弟に礼を言うと、侍女のマリーと一緒に部屋へと戻った。
ふと、フレッド兄様だけが僕を呼ぶ時に使う愛称のアルを、今日誰かに呼ばれた気がして立ち止まった。衣装部屋の奥からマリーともう一人の侍女に呼ばれて歩き出した僕は、直ぐにその事を忘れてしまった。
甘い香りの湯船に沈んで、ダンスの心地よい疲れをほぐすとマリーがにこやかに言った。
「今日のアンドレア様は本当に妖精の様でした。アンドレアは普段あれですから、いつもの剣仲間が唖然としているのを見るのは面白いくらいでしたわ。
それに許嫁が、まさか王都でも評判の、銀の貴公子と呼ばれるグローバンス侯爵家のラファエル様だとは想像もしませんでしたけど。お二人のダンスは息が合って、目を見張るほどのものでしたよ。」
そう言われて、僕は顔を上げた。
「マリーはラファエルの事知ってるの?フレッド兄様が、昔一緒に遊んだって言ったんだけど、全然覚えてなくって。」
マリーは少し考え込むとハッとした様に言った。
「そう言えば、こちらに侯爵と一緒に遊びに来たことがありましたよ。4年ほど前でしたかしら。歳の近いフレッド様と随分気が合う様で、仲良くされてました。時々、フレッド様のところに手紙も届いていた様ですわ。」
僕は湯船から身体を起こして、マリーに水気を拭き取ってもらった。
「フレッド兄様に言われたんだ。一緒に遊んだって。僕は全然覚えてなくってさ。でもフレッド兄様と仲が良いのなら、僕と許嫁になる必要あったのかな。銀の貴公子か。ちょっと怖い目で僕を見たんだ、あいつ。僕はあんまり近寄りたく無いよ。」
マリーと侍女はまぁとか言って、妙にニマニマしていたけど、僕は欠伸を連発してさっさとベッドに飛び込んだんだ。もうちょっと、マリーたちに色々聞いておけば良かったなんて、後で後悔するなんて思わなかったよ。
僕はフレッド兄様とシモン兄様と一緒に、執事見習いに促されるままに、疲れた身体を引き摺って言葉少なに部屋へと戻った。シモン兄様が僕の額に口付けて、優しく囁いた。
「アンドレア、お誕生日おめでとう。生活が一変して、嫌なこともあるかも知れないが、時々乗馬に付き合うよ。」
僕が頷くと、後ろから来たフレッド兄様も、僕を羽交締めにして言った。
「アル、剣の相手もするからな!癇癪を起こすなよ?」
僕はクスクス笑って二人の歳の近い兄弟に礼を言うと、侍女のマリーと一緒に部屋へと戻った。
ふと、フレッド兄様だけが僕を呼ぶ時に使う愛称のアルを、今日誰かに呼ばれた気がして立ち止まった。衣装部屋の奥からマリーともう一人の侍女に呼ばれて歩き出した僕は、直ぐにその事を忘れてしまった。
甘い香りの湯船に沈んで、ダンスの心地よい疲れをほぐすとマリーがにこやかに言った。
「今日のアンドレア様は本当に妖精の様でした。アンドレアは普段あれですから、いつもの剣仲間が唖然としているのを見るのは面白いくらいでしたわ。
それに許嫁が、まさか王都でも評判の、銀の貴公子と呼ばれるグローバンス侯爵家のラファエル様だとは想像もしませんでしたけど。お二人のダンスは息が合って、目を見張るほどのものでしたよ。」
そう言われて、僕は顔を上げた。
「マリーはラファエルの事知ってるの?フレッド兄様が、昔一緒に遊んだって言ったんだけど、全然覚えてなくって。」
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「そう言えば、こちらに侯爵と一緒に遊びに来たことがありましたよ。4年ほど前でしたかしら。歳の近いフレッド様と随分気が合う様で、仲良くされてました。時々、フレッド様のところに手紙も届いていた様ですわ。」
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「フレッド兄様に言われたんだ。一緒に遊んだって。僕は全然覚えてなくってさ。でもフレッド兄様と仲が良いのなら、僕と許嫁になる必要あったのかな。銀の貴公子か。ちょっと怖い目で僕を見たんだ、あいつ。僕はあんまり近寄りたく無いよ。」
マリーと侍女はまぁとか言って、妙にニマニマしていたけど、僕は欠伸を連発してさっさとベッドに飛び込んだんだ。もうちょっと、マリーたちに色々聞いておけば良かったなんて、後で後悔するなんて思わなかったよ。
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