伯爵令嬢の秘密の愛し子〜傲慢な王弟は運命の恋に跪く

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

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新しい日々

王との拝謁

「エリザベス、そんなに緊張しなくても大丈夫だ。今日の拝謁は兄と弟の気楽なものだからね。」

そうヴィンセントになだめられたものの、この国の王に拝謁するのだから緊張しないはずがない。けれども、ヴィンセントは少し拗ねた様子で私の腰を引き寄せた。

「私だとて王族の一人には違わないのだけどね。エリザベスは私が王弟である事をすっかり忘れているのではないかい?」

そう言うヴィンセントを思わずまじまじと見つめて、私はぽつりと囁いた。

「そうかもしれないわ。ヴィンセントの事は王弟というよりは、あの仮面祭りの正体不明の大人の男としての印象が強いのだもの。ごめんなさい、王弟閣下。」


するとヴィンセントはクスクス笑って、私の手を持ち上げて唇を押し当てると言った。

「そんな君だから、ますます惹かれてしまう。私の事を王弟ありきで見ない人物の方が少ないのだからね。兄上も羨ましがる事だろうね。ははは。」

いつの間に扉が開いたのか、気づけばヴィンセントに面影を残した王が部屋に入って来ていた。私達はソファから立ち上がると礼をとった。王は手を振り言った。

「ここは公の場ではないから、堅苦しい挨拶はやめてくれ。ヴィンセント、元気そうだな。いや、そんなお前は初めて見るかもしれない。腑抜け過ぎて、何だかゾッとするぞ?まぁ、座りなさい。」


ヴィンセントが私も一緒に座らせてしまったので、私は王に礼を欠いたのではと不安になって王の顔を見つめた。ところが王もまた私をじっと見つめていたので、私はヴィンセントと王が同じ抜ける様な明るい金髪で、けれども瞳は稀に見るほどの青い瞳だと無意識に観察してしまった。

そんな緊張している私にヴィンセントと同じ表情で微笑む王が話し掛けて来た。


「エリザベスだったかな。貴女には状況的にどうしようもなかったとは言え、随分辛い目に遭わせてしまった様だ。子供と引き剥がして、修道院へ送られなかったのがせめてもの救いだった。伯爵も貴族の体面を失うぎりぎりまで貴女を守ろうとしたと聞いて、私も考えを改めたよ。

貴族令嬢が身籠もるのは相手あってのことだからね。令嬢ばかりが責任を取らされるのもおかしな話だ。今後は修道院へ送る様な悪習は禁止して、相手にもきっちり責任を取らせようと思う。今回のことは王家にとっては非常に身につまされる出来事だった。ヴィンセントの兄としても弟の不始末を謝らせてくれ。」


王の心からの同情混じりの言葉は、私を酷く恐縮させたし、嬉しく思った。私の様に若気の至りで苦悩する令嬢が減るのは嬉しいことだった。ヴィンセントは私の手を握りながら、微笑んで王に言った。

「兄上、私はエリザベスに償いきれない悲しみと苦悩を与えてしまいました。私が悪いのは本当にその通りだったんです。私はいい歳をして、運命の恋に抗えなかったとは言え見境の無い事をしてしまったのですから。けれど、王である兄上がそうして私のためにエリザベスに謝って下さるのは、兄弟の愛を感じますね。」


私はヴィンセントと王様が、想像以上に仲が良いのだと嬉しく思った。この国が平和なのはやはり王族の雰囲気が良い事も大きいと感じた。この若き王が他国の老獪な王達と渡り合えているのも、王弟であるヴィンセントが面に裏に外交して来た成果のお陰もあったのだろう。

王はヴィンセントの言葉に楽しげに笑って言った。


「私もお前に今まで任せっきりの面があったのだからね。そのせいでお前にも十分苦労をかけた。エリザベス、ヴィンセントが数年身動き出来なかったのは、王族と明かせずにヴィンセントが捕虜として囚われている事をなかなかこちらでも掴めなかったせいでもあったのだ。

二人には苦労をかけた分、何か償いをしなければならないが…。ヴィンセントの今の幸せそうな顔を見るとどんな償いも必要がない様に思えるよ。」


そう言って王が揶揄うと、ヴィンセントはニヤリと笑って言った。

「確かに私は得難い人を得ました。エリザベスとテオは私にとってどんなモノとも比べることの出来ないものです。私達が王族でありながら、この様な運命に巡り会える事など望んでも叶えられない事の方が多いのでしょうからね。」

すると、王が微笑んで私に向いて言った。

「我が正妃もまた得難い方なのだ。まだ公にはしていないが、今日は悪阻が酷くて其方らに会えないのを事の他残念がっていた。また落ち着いたら是非会ってやってくれ。其方達の運命の恋物語には涙と歓喜で一時期は大変な興奮ぶりだったのだ。お陰で、私達も出会った頃の熱い気持ちを思い出したよ。」


それを聞いたヴィンセントが眉をあげて楽しげに言い募った。

「兄上、もしかしてそれで今回のめでたいご懐妊と相成ったのですか?まさか私たちの恋物語が王家の発展に貢献出来ていたとは。とは言え兄上、おめでとうございます。第一王子とテオも年が近いですし、落ち着いたら是非一緒に引き合わせたいですね。」

そうヴィンセントに揶揄われて王がしどろもどろになったので、私達はまた楽しく笑い合った。そして私はこの拝謁でヴィンセントが王族であるのだと、まざまざと自覚したのだった。

















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