三好家の末っ子は今日もご機嫌 

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26

文字の大きさ
99 / 122
変わるもの、変わらないもの

優しいささやき

しおりを挟む
 またあの良い匂い…。時々感じるあの匂い。そんな時だけ、僕は意識が浮上する。僕は微睡みから浮かび上がって、あの匂いを吸い込んだ。

 時々感じる良い匂いが、僕を幸せにする。そんな時はここから出たいと思うのに、僕の前には半透明なカーテンがこれでもかって重なっていて、向こうが見えない。

 だからそれが何の匂いかは分からない。でも最近はその良い匂いが長く感じられて嬉しい。やっぱりここから出てあの匂いの元が知りたいな…。



 また、あの匂いだ。今日は凄く近くから匂ってくる。ああ、良い匂い。あ、目の前のカーテンが薄くなってる。向こう側が目を凝らせば見えるかもしれない。

 僕は手を伸ばしてカーテンを押し退けた。さっきより明るい。僕は匂いのする方へ向かってゆっくりと歩き始めた。薄いカーテンが何枚も身体にまとわりついて前に進めない。


 僕は諦めて立ち止まった。すると、カーテンの向こう側から、呼び声がする。あ、あの声。僕の好きな声だ。やっぱり匂いと一緒で、懐かしく感じる。

 何て言ってるかは分からないけど、優しい声だ。僕は頑張って一枚づつカーテンをめくりながら、辛抱強く進んだ。薄らと向こう側が見える気がする。僕は後ろを振り返った。


 随分暗い場所に居たんだな…。僕はあんな場所は本来好きじゃないのに。僕が好きなのは…ああ、そうだ。あっくんの腕の中だ。そう、こんな感じ。

 僕の前に立ち塞がっていたカーテンは、いつの間にか無くなっていた。感じるのは耳元で優しく僕の名前を呼ぶ声。それと僕の頬に感じる温かい体温。


 ああ、何で目が開かないんだ。僕の大好きなあっくんがここに居るのに。痛い。…何か身体が痛い。ああ、嫌になる。もう一度あっちに行こうか。

 その時、僕の頬に温かな雫を感じた。それは次々と僕の頬を濡らしているみたいだった。僕はあっくんが泣いてるのかもしれないと焦った。


 あっくん?何で泣いてるの?ああ、早く目を覚まして、あっくんを悲しみから引っ張り出してあげなくちゃ。僕は頑張った。重たい瞼をこれでもかと持ち上げようと頑張った。

 突然押し込まれる様な光の渦が眩しく僕の目の中に飛び込んできた。僕は焦点の定まらない目の前の光景がはっきりして行くのをボンヤリと見つめていた。

「…理玖くん…?」

 僕の耳元であっくんの声がした。






しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

処理中です...