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変わるもの、変わらないもの

変なあっくん

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僕は何度か瞬きをした。はっきり見えなかったから。段々周囲の景色が見えてきた。淡いグリーンの天井が見える。ここはどこだろう。ふと、誰かに見つめられてる気がした。

「…理玖…くん?目覚めたのかい?」

あっくんの声だ。でも僕は身体に力が入らなくて、また目を閉じた。ああ、あっくんが見れなかった。今、あっくん僕のこと『理玖くん』て呼んだ?ふふ。変なの…。


「今、理玖くん目を開けたよね?理玖くん、もう一度だけ目を開けられるかい?…理玖くん?」

何だか最後の方は泣いてる気がして、僕はあっくんが心配になってもう一度目を開けようと頑張った。…よいしょ。あ、開けられた。これっぽっちなのに、凄い疲れる…。

目の前に僕を覗き込むあっくんがいた。…何だかやつれてるみたい。それにやっぱり泣いてる?


あっくん、何で泣いてるの?僕はぼんやりしながら、あっくんの瞳からポロポロと涙が流れるのを見つめていた。あっくんの顔に手を当てて、キスして涙を止めてあげたいのに、僕の身体は鉛の様に重くて動かせないんだ。

でも僕の手があっくんに握り締められてるのに気づいた。僕はまた、よいしょと手を握ろうと頑張った。指先だけがちょっとだけ動いたかな…?


あっくんはハッとして僕の指を目の前に持ってくると僕に尋ねた。

「理玖くん?俺の事分かる?篤哉だ。東篤哉。」

あっくん、何か変だね。僕を理玖って呼ばないのも変だし、自分の名前連呼するのも変だし。何だか、様子が変。僕は段々不安になってきた。

大体ここは何処だろう。あっくんが邪魔で周囲が見えないし。あっくん、退いてくれないかな?


僕は頑張って指先を動かした。あっくんがこの状況を説明してくれる事を願って…。でも、あっくんは涙を流すばかりで、何も言ってくれない。

僕はこんなに使えないあっくんを諦めて、さっきよりも動く様になった首をゆっくりと動かした。…知らない部屋だ。さっきから鳴っていた音は病院によくあるセンサーだった。


僕、病院で大変な事になってるっぽい。道理で身体が重くて動かないんだ。はぁ。参ったな。一体何があったんだろう。その時誰かが部屋に入って来た気がした。

僕は誰が入って来たのかと、そちらの方を見るとバッチリ目が合った。涼兄だ。涼兄は信じられないものを見る眼差しで口をぱくぱくと動かした。

何それ。…何だか僕、ゾンビ扱いっぽいっ?
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