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来ちゃった

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流石の光一も叔父さんの様子に、ヤバいのかと俺たちの方に不安げに視線を送ると頷いた。

「あ、ああ。丁度、片付けしてた時に、生垣から覗いてたんだ。しかもその美人の写真が夫婦の写真立てから出てきた。…もしかしてお化けか?」

叔父さんは目を丸くして、急に笑い出した。

「ハハッ、違う違う。いやー、あの美人には困っててさ。あの若い夫婦の友達らしいんだが、お金貸してるみたいであの夫婦が現れないかって近所に住んでるんだよ。時々パトロールしてるんだ。俺もあの美人に何度も色々聞かれてうんざりしてるんだよ。」


俺たちは意外な生々しい人間模様にある意味ゾッとして、一方でお化けじゃ無かったことに胸を撫で下ろした。じゃあ、こいつの背中に張り付いているのは何なのだろうか。俺がそう思って光一越しに真己と目が合うと、真己は正に舌舐めずりをしてニヤリと笑った。

「中川さん、僕にその家見せてもらっても良いですか?僕、ちょっと感じる方なので、何かお役に立てるかも知れませんし。」

そう言って、優等生っぽい笑顔で中川さんに微笑む真己は、うん、普段とはまるで別人だ。俺は密かにため息を吐いた。


中川さんはさすが、光一のおじさんだけあって、豪快に笑うと、快く許可をくれた。光一の言う通り、その家は歩いて10分ほどの場所にあった。真己は道すがら、キョロキョロとあちこちに目をやっていたけれど、何か見つけたのか納得したように鼻歌混じりに歩き出した。

俺は真己の側によると、何か見つけたのかと尋ねたが、真己は相変わらずの無表情で俺を見つめ返すだけだった。こうなると何も言わないので、俺は諦めて光一とその家へ向かって歩いた。たどり着いた家は普通の建売住宅で、特に嫌な感じもしなければ、霊障のある感じもしなかった。俺は不思議に思って見ていたが、その時不意に真己に腕を引き寄せられた。


「良いかい?ここには何もない。だって、彼が全部背負ってるからね。だが、本来背負うべき人間が居るんだ。そいつを待とう。なに、直ぐにやってくるさ。」

俺が真己の言葉を頭の中で噛み砕いていると、俺たちが歩いてきた方向からコツコツという足音が響いて来た。俺は振り向くのが怖くて、光一の顔を見上げた。光一は視線を流すと、ちょっと緊張した顔で俺に囁いた。

「来たぞ。あの女だ。」
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