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衝撃

電話の告げる恐怖

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「嘘だろ…。」

俺はスマホを耳にぎゅっと押し当てながら、強張った彗の声が発する言葉の意味を解読していた。直ぐに来いと言われて切られた手の中のスマホを見つめながら、呆然と突っ立っていた。

俺の様子がおかしいことに気づいた蓮が、立ち上がって俺の手を掴むと、眉を顰めて俺に尋ねた。

「どうした?何かあったのか?」


俺は処理できないまま、蓮の顔を見つめて言った。

「何かの冗談かな…。理玖と篤哉が交差点で信号無視のトラックに追突されたって。篤哉は理玖を乗せてる時に無茶な運転なんか絶対しないやつだぜ?イタズラだとするとタチが悪すぎるだろ?」

俺が覚えてるのはそこまでだった。気づけば蓮に連れられてタクシーに乗せられて病院まで一緒に向かっていた。俺はドキドキ緊張しすぎて、何なら吐き気まで襲って来た。


葵を亡くして、これ以上の事なんて起きるはずないって思っていたけれど、神様は俺が嫌いみたいだ。俺は項垂れたまま顔を両手で覆ったまま蓮の腕の中で、なすすべもなく病院へ到着するのを待っていた。

手術室の前には、青褪めた見たことのない表情の彗が俺を待っていた。状況は予想したものより全然良くなかった。二人とも緊急手術中で、大丈夫だって思える要素が何一つなかったんだ。


病院到着時に、理玖の心臓が止まっていたとか何の冗談なんだ。俺はもう一度動き出した理玖の命の炎を守ってくださいと只々祈ることしか出来なかった。

家族室で項垂れる両親を前に、俺は篤哉が大好きな理玖がこのまま離れてしまうなんてことあるはずがないって言った。実際篤哉も酷い状況らしくて、俺は口が裂けても二人がこのまま死んでしまうかもしれないなんて言えるはずが無かった。


篤哉の手術がとりあえず終わって、状況は厳しいものの命を繋いでいると聞いた時に、俺は理玖も助かると思った。あいつらは馬鹿みたいに愛し合っていたから、引き離される様な運命なんてあるはずがないって思ったんだ。

それはある種の確信でもあって、切実な願いでもあった。蓮と壱太が三好家と東家の連絡係になって走り回ってくれていたけれど、俺は只々理玖の手術室の赤いランプが消えるのを待つことしか出来なかった。


術後執刀医の予断を許さない厳しい状況説明を聞きながら、今出来るのは理玖の側に居ることだけだった。蓮たちには先に帰ってもらって、俺は理玖の待つICUに足を向けた。



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