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衝撃

ICU

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大きなクリーム色の扉に緑色で表示されたICUの文字は、俺が人生で関わることがないと思っていたものだ。けれど、後5分後には俺たちは足を踏み入れることになるんだ。きっと青褪めた理玖の横たわるベッドの側に。

俺たち家族の前に看護師が近づいてきて言った。

「これから三好理玖さんの所までご案内します。面会時間は今日は5分だけですが、ご承知おき下さい。明日からは15時より30分間が面会時間になります。それ以外の面会は行っていませんのでよろしくお願いします。」


俺たち家族は、顔を見合わせて頷くと看護師の後をついて、クリーム色の扉の奥へと入って行った。細長いICUの病棟は、奥行きがあって、6、7台のベッドが並んでいる様だった。

入って直ぐに幾つかのデスクとデスクトップに画像や、電子機器のデータが表示されて絶え間ない小さな音が響いていた。数人の看護師や、ドクターらしきスタッフが僕たちを見て会釈をしてくれた。


「こちらです。」

そう言って左奥へ案内されたベッドには仰々しい機器やモニター、点滴や、色々な管がまとわりついていて、その絡んだ巣の様なものの中で理玖は横たわっていた。

青褪めた顔から伸びる人工呼吸器の管が、唇にテープで固定されていて、それが妙に痛々しかった。事故に遭ったというのに理玖の顔には傷ひとつなく、篤哉が身を挺して抱き抱えて守ったという話を思い出した。


本当なら理玖に呼びかけてこっちに連れ戻したかったのに、俺たち家族は誰も声も出なかった。目の前の光景がまるで嘘で出来たものの様だった。

「…理玖。よく手術頑張ったね。篤哉君も無事手術を終えたよ。ゆっくりでいいから戻っておいで。」

そう、父さんが震える声で声を掛けると、母さんが泣き出してしまった。母さんを抱き抱えてベッドの足元から立ち去る両親を感じながら、俺と兄貴は血の気のない理玖の顔をじっと見つめていた。


「三好さん、お時間です。」

看護師の声掛けにハッとして顔を見合わせた俺たちは、理玖にひと言づつ声をかけて離れた。

「理玖、待ってるからな。」

理玖から離れる時に、2mほど離れた隣のベッドに横たわっているのが篤哉だと気づいた。頭を包帯でグルグル巻きにされた篤哉は、理玖と同様青褪めた顔で横たわっていた。


目の前の出来事が、もはやまごう事なき現実で、夢でも何でもなかった。俺はその日、大事な愛する弟と大事な親友の二人が、俺たちと細い糸で辛うじて繋がっている事を思い知ったんだ。


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