17 / 43
侯爵家
アドラーとの朝食
「聞いたぞ、エド。」
アルバートが立ち去ってから、何となく気まずい空気を醸し出しているゼインと朝食のためにこじんまりした部屋に入ると、先に座っていた大魔法師のアドラーが悪戯っぽい目つきで絵都を見た。
絵都はアドラーの言ってる事が朝のアルバートとの一幕のことなのか、それともゼインとの昨夜のことなのか、それ以外なのか分からずにギクリと身体を強張らせた。
「もう《壁》をそこそこ使える様になったらしいな。さすが魔物だ。魔力の扱いが半端ないな。ああ、ゼインから聞いたが杖が欲しいんだろう?丁度今日杖の業者が来るから、実際に見て選ぶと良い。手に馴染むものが良いからな。
代金はエドが変えた虹色魔石で賄うから好きなものを選べるぞ。ああ、そうだ。魔石の色分けも出来る様になった方がいいのか…。
護身魔法は相手から身を守る《壁》と《足止め》が最低限必要だ。《攻撃》はレベルが色々あるが、《足止め》出来れば急ぐ必要もないだろう。それは通いでも大丈夫だ。
一人や従者と二人でも外出しても危険がない様に今日はゼインから《足止め》を習うと良い。ゼイン任せたぞ。」
アドラーの話の内容にホッとしながら、絵都はゼインに微笑んだ。
「…ゼイン、今日もよろしくお願いします。」
ゼインはハッとした様子で絵都とアドラーを交互に見ると、取り繕った様子で頷いた。そんなゼインの様子をアドラーが片眉を上げてチラリと見たけれど特に何を言うわけでもなかった。
ゼインが先に朝食の部屋を出ると、ゆっくりお茶を飲んでいたアドラーがゼインの立ち去った扉を見つめながら絵都に聞くともなしに呟いた。
「ゼインの様子が変だな。エド何かあったのか?」
アドラーにそう尋ねられて、絵都は朝のアルバートとの出来事は門番にしっかり見られていたのだし、いずれ噂になるだろうと考えた。だったら尾鰭のついた噂が入る前に大魔法師であるアドラーに話しておいた方が良いだろう。
絵都が昨夜のゼインとのお試し以外について一通り話し終えると、アドラーはニヤリと笑った。
「…なるほどな。エドが一時的に元の姿に戻るというのは中々興味深い話だ。主の生気が無いと不調をきたすのは、エドがこの世界に呼ばれたと言う事と鳥籠の時間に何か関係があるのだろう。
確かにその姿のエドとアルバートが口づけしているのは、ゼインも驚いた事だろう。あいつは案外生真面目なところがあるからな。エド、その生気はアルバートでなくてはならないのか?それだと何かと不便もあるだろう?」
エドはそう言われて、ゼインが生真面目かどうかは昨夜の様子から疑問だと思いつつも、アドラーの口元を見つめた。アルバートほどでは無いけれど、ゼインよりは光って見える。
「アルバートの生気は効率が良いんです。それに僕に心地良いですし。主と魔物は何処か絆の様なものが発生してるのかもしれません。もっともアルバートが調達できない時は、少しくらいなら代用で我慢できます。
…夕方アルバートが僕に生気を与えにきてくれる様なので、何処か落ち着ける場所に入室許可をいただけますか?ここは部外者が入れないのでしょう?」
アドラーは少し考え込んでいる様子だったけれど、顔を上げてニヤリと笑った。
「ああ。ではエドの部屋に入室許可を出そう。ただし一時間だけだぞ?一応規則を曲げての事だからな。エドには機嫌良く虹色魔石をまた作って貰いたいからな。ははは。」
アドラーは何とも実際的な男だった。この柔軟さと豪快さが大魔法師になる所以なのだろうか。絵都は苦笑して言った。
「では僕も虹色魔石を積み上げた方が良さそうですね。今後も色々便宜を図って貰いやすそうですから。」
「エドは魔力を魔法に変えるコツを掴んだ様ですね。昨日より習得がずっと早いですし。《足止め》はどんな形でも良いんです。その場にあった方法に変化させるのが一番だけれど、自分がイメージしやすい方法で訓練して自由に操れる方が良いのですよ。
《足止め》は咄嗟の時に使う場合が多いからね。今のエドも、元々の姿であるエドも一番に考えられる危険は誘拐だと私は思います。魔物だと知らなくても、エドの姿はひと目を引いて人攫いに目をつけられるでしょうから。
まして魔物だと知られたら、その危険は減るどころか増すでしょう。」
そうゼインに脅されて、絵都は分かりやすく顔を顰めた。結局前の世界でも、ここ夢の中の様な異世界でも、絵都は自分の見かけに振り回される羽目になってしまっている。
絵都は目の前の訓練所の土埃を押し流す様に腕を突き出すと渦巻きの水流を巻き起こした。川の側の街に住んでいたせいで、足元を掬う水の流れの力は簡単にイメージ出来た。
「ああ、良い感じですね!エドの水魔法は完璧です。そろそろ時間です。休憩がてら杖を見に行きましょう。」
そう微笑んで踵を返すゼインの後ろをついて歩きながら、絵都は朝のあの気まずい空気が和らいだのを感じてほっと息を吐き出した。
アルバートが立ち去ってから、何となく気まずい空気を醸し出しているゼインと朝食のためにこじんまりした部屋に入ると、先に座っていた大魔法師のアドラーが悪戯っぽい目つきで絵都を見た。
絵都はアドラーの言ってる事が朝のアルバートとの一幕のことなのか、それともゼインとの昨夜のことなのか、それ以外なのか分からずにギクリと身体を強張らせた。
「もう《壁》をそこそこ使える様になったらしいな。さすが魔物だ。魔力の扱いが半端ないな。ああ、ゼインから聞いたが杖が欲しいんだろう?丁度今日杖の業者が来るから、実際に見て選ぶと良い。手に馴染むものが良いからな。
代金はエドが変えた虹色魔石で賄うから好きなものを選べるぞ。ああ、そうだ。魔石の色分けも出来る様になった方がいいのか…。
護身魔法は相手から身を守る《壁》と《足止め》が最低限必要だ。《攻撃》はレベルが色々あるが、《足止め》出来れば急ぐ必要もないだろう。それは通いでも大丈夫だ。
一人や従者と二人でも外出しても危険がない様に今日はゼインから《足止め》を習うと良い。ゼイン任せたぞ。」
アドラーの話の内容にホッとしながら、絵都はゼインに微笑んだ。
「…ゼイン、今日もよろしくお願いします。」
ゼインはハッとした様子で絵都とアドラーを交互に見ると、取り繕った様子で頷いた。そんなゼインの様子をアドラーが片眉を上げてチラリと見たけれど特に何を言うわけでもなかった。
ゼインが先に朝食の部屋を出ると、ゆっくりお茶を飲んでいたアドラーがゼインの立ち去った扉を見つめながら絵都に聞くともなしに呟いた。
「ゼインの様子が変だな。エド何かあったのか?」
アドラーにそう尋ねられて、絵都は朝のアルバートとの出来事は門番にしっかり見られていたのだし、いずれ噂になるだろうと考えた。だったら尾鰭のついた噂が入る前に大魔法師であるアドラーに話しておいた方が良いだろう。
絵都が昨夜のゼインとのお試し以外について一通り話し終えると、アドラーはニヤリと笑った。
「…なるほどな。エドが一時的に元の姿に戻るというのは中々興味深い話だ。主の生気が無いと不調をきたすのは、エドがこの世界に呼ばれたと言う事と鳥籠の時間に何か関係があるのだろう。
確かにその姿のエドとアルバートが口づけしているのは、ゼインも驚いた事だろう。あいつは案外生真面目なところがあるからな。エド、その生気はアルバートでなくてはならないのか?それだと何かと不便もあるだろう?」
エドはそう言われて、ゼインが生真面目かどうかは昨夜の様子から疑問だと思いつつも、アドラーの口元を見つめた。アルバートほどでは無いけれど、ゼインよりは光って見える。
「アルバートの生気は効率が良いんです。それに僕に心地良いですし。主と魔物は何処か絆の様なものが発生してるのかもしれません。もっともアルバートが調達できない時は、少しくらいなら代用で我慢できます。
…夕方アルバートが僕に生気を与えにきてくれる様なので、何処か落ち着ける場所に入室許可をいただけますか?ここは部外者が入れないのでしょう?」
アドラーは少し考え込んでいる様子だったけれど、顔を上げてニヤリと笑った。
「ああ。ではエドの部屋に入室許可を出そう。ただし一時間だけだぞ?一応規則を曲げての事だからな。エドには機嫌良く虹色魔石をまた作って貰いたいからな。ははは。」
アドラーは何とも実際的な男だった。この柔軟さと豪快さが大魔法師になる所以なのだろうか。絵都は苦笑して言った。
「では僕も虹色魔石を積み上げた方が良さそうですね。今後も色々便宜を図って貰いやすそうですから。」
「エドは魔力を魔法に変えるコツを掴んだ様ですね。昨日より習得がずっと早いですし。《足止め》はどんな形でも良いんです。その場にあった方法に変化させるのが一番だけれど、自分がイメージしやすい方法で訓練して自由に操れる方が良いのですよ。
《足止め》は咄嗟の時に使う場合が多いからね。今のエドも、元々の姿であるエドも一番に考えられる危険は誘拐だと私は思います。魔物だと知らなくても、エドの姿はひと目を引いて人攫いに目をつけられるでしょうから。
まして魔物だと知られたら、その危険は減るどころか増すでしょう。」
そうゼインに脅されて、絵都は分かりやすく顔を顰めた。結局前の世界でも、ここ夢の中の様な異世界でも、絵都は自分の見かけに振り回される羽目になってしまっている。
絵都は目の前の訓練所の土埃を押し流す様に腕を突き出すと渦巻きの水流を巻き起こした。川の側の街に住んでいたせいで、足元を掬う水の流れの力は簡単にイメージ出来た。
「ああ、良い感じですね!エドの水魔法は完璧です。そろそろ時間です。休憩がてら杖を見に行きましょう。」
そう微笑んで踵を返すゼインの後ろをついて歩きながら、絵都は朝のあの気まずい空気が和らいだのを感じてほっと息を吐き出した。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
黒に染まる
曙なつき
BL
“ライシャ事変”に巻き込まれ、命を落としたとされる美貌の前神官長のルーディス。
その親友の騎士団長ヴェルディは、彼の死後、長い間その死に囚われていた。
事変から一年後、神殿前に、一人の赤子が捨てられていた。
不吉な黒髪に黒い瞳の少年は、ルースと名付けられ、見習い神官として育てられることになった。
※疫病が流行るシーンがあります。時節柄、トラウマがある方はご注意ください。
名もなき花は愛されて
朝顔
BL
シリルは伯爵家の次男。
太陽みたいに眩しくて美しい姉を持ち、その影に隠れるようにひっそりと生きてきた。
姉は結婚相手として自分と同じく完璧な男、公爵のアイロスを選んだがあっさりとフラれてしまう。
火がついた姉はアイロスに近づいて女の好みや弱味を探るようにシリルに命令してきた。
断りきれずに引き受けることになり、シリルは公爵のお友達になるべく近づくのだが、バラのような美貌と棘を持つアイロスの魅力にいつしか捕らわれてしまう。
そして、アイロスにはどうやら想う人がいるらしく……
全三話完結済+番外編
18禁シーンは予告なしで入ります。
ムーンライトノベルズでも同時投稿
1/30 番外編追加
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
後天性オメガは未亡人アルファの光
おもちDX
BL
ベータのミルファは侯爵家の未亡人に婚姻を申し出、駄目元だったのに受けてもらえた。オメガの奥さんがやってくる!と期待していたのに、いざやってきたのはアルファの逞しい男性、ルシアーノだった!?
大きな秘密を抱えるルシアーノと惹かれ合い、すれ違う。ミルファの体にも変化が訪れ、二次性が変わってしまった。ままならない体を抱え、どうしてもルシアーノのことを忘れられないミルファは、消えた彼を追いかける――!
後天性オメガをテーマにしたじれもだオメガバース。独自の設定です。
アルファ×ベータ(後天性オメガ)
後悔なんて知ったことではありません!~ボクの正体は創造神です。うっかり自分の世界に転生しました。~
竜鳴躍
BL
転生する人を見送ってきた神様が、自分が創造した世界に誤って転生してしまった。大好きな人を残して。転生先の伯爵家では、醜く虐げる人たち。
いいよ、こんな人たち、ボクの世界には要らない!後悔しても知ーらない!
誰かに似ている従者1人を伴って、創造神スキルで自由に無双!
…………残してきた大好きな人。似ている侍従。
あれ……?この気持ちは何だろう………。
☆短編に変更しました。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。