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俺が譲れる事は

教室での注目

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それから俺は志望校調査表に、応明大学の生命科学学部を第一志望に書いて提出した。高校2年の秋だから、ほとんど予定も未定だけど、自分のビジョンにはなるだろう。

秋良も応明大学だって言ってた。椿と聖は一年頑張るって言ってたから、やっぱり応明大学を志望校に入れたみたいだ。多分俺のせいでみんなに無理させてるみたいだから、何だか申し訳ない気がする。


俺は席替えで離れた秋良の後ろ姿を見つめた。俺の視線を感じたのか、秋良がふと俺の方を振り返って見た。ニヤリと口元を引き上げて笑うと、人差し指で自分の唇をゆっくり撫でて見せた。

俺はその意味深なジェスチャーに顔を熱くさせて、俯いた。教室のしかも授業中にそんな事されたら、恥ずかしさをより感じてしまう。俺はぼんやりと目の前の自分の手のひらを見つめて、俺を慌てさせた仕返しをしようと思った。


休み時間になったら、この手で秋良を捕まえてあの唇を奪ってやろう。きっとびっくりするだろ?俺はふと、音がしなくなった事に気付いて顔を上げると、みんなが俺を見つめていた。先生まで、俺を見てる…。

秋良の方を見ると、片手で頭を抱えていた。何?俺何かしちゃった⁉︎

先生は咳払いをすると、また何事も無かったように授業を再開させた。俺は隣の田中にどうしたのか聞こうとしたけれど、田中は赤い顔をしてそっぽを向いてしまった。うー、何なんだ!


授業が終わった途端、秋良が俺の机まで急いでやってきて手を掴んで何も言わずに教室から連れ出した。

「秋良!何だよ。おいっ。」

俺は秋良に引き摺られて、資料室へ押し込まれた。

「何じゃないだろ?雪、教室で発情しただろ?」

え?俺発情したの?全然気づかなかった。確かに秋良が思わせぶりなジェスチャーした時はドキドキしちゃったけど、それだけだったし。俺が眉をひそめて考え込んでいると、秋良は俺を壁側に追い詰めて言った。


「無自覚とか、本当やばい。俺が雪に思わせぶりな事したのが原因なのは分かってるんだけど、あれしきのことであんなにオーラ撒き散らしたら、授業にならないだろ?一瞬だったけど一緒にフェロモン出てたし。」

そう言って、俺の首筋に鼻をつけると息を吸い込んだ。俺は自分のしでかしに落胆したものの、きっかけは秋良のせいだ。俺は首から秋良の顔を両手で引き剥がして文句を言った。

「秋良のせいだろ?俺仕返ししようと思って…。」

あ、しまった。言ったら仕返しにならないじゃんね。しかも秋良の目が捕食者のそれだ。俺はうっかり獣に餌を与えてしまったのかな?





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