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精霊の国
過保護が過ぎる
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数日寝込んでいたせいで歩くのもままならない僕は、とは言えリカルドに抱っこされっぱなしだ。
「リカうど?ぼく、あうくよ?」
見上げてそう言い張っても、リカルドは微笑むばかりで僕を下そうとはしない。抱っこされるのは嫌いじゃないから良いんだけど、何となくリカルドが怒ってる気がしてそれ以上駄々を捏ねるのをやめてしまう。
まぁどうせリカルドは時間になれば学校に行ってしまうのだから、それからリハビリに勤しめば良い。
「私はしばらく学校には行きません。ライオネルが完全に回復するまで心配で勉強どころじゃないですから。」
朝食時にそう宣言するリカルドに僕が一番びっくりした。どうしてそうなるの?でもお父上もお母上も、顔を見合わせて困惑している様だ。いや、ちょっと待って!
「リカうど、ぼく、らいじょうぶ!もう、なおっちゃ!」
思わず懸命に主張してしまう程には、全然元気なんだってば。
「いや、今回の体調不良はライオネルがあの原っぱで妖精に出会ったせいなんだから、病気と違ってタチが悪いんだ。私がライオネルを発見したあの時だって、確かに妖精らしき姿を見た。
もしもう一度妖精がライオネルに接触してきたら何が起きるか分からない。私はそれが心配です。」
…あれ、バレてる。そのせいでお父上とお母上がリカルドの暴走を止めないのかもしれないな。ここは僕がひと肌脱ぐしかない。
「ようちぇい?ちらないよ?ぼく、ちょんなの、ちらない。」
「寝込んでいた時、うなされていたでしょ?怖いって…。多分あれは妖精のことなんじゃないの?」
…何だって?流石にうわ言の事までは責任取れないな…。でもリカルドがぼくに執着するのはあまり良くない傾向だよね。僕のリハビリも進まない。
「ゆめでちょ…。リカうどがっこ、いかにゃい。ぼくのちぇい。かなちい…。」
実際悲しい気分になって涙まで出てきた。演技してると暗示に掛かるのか本当にそんな気分になるのだから、おチビってのは単純だ。
「…ライオネル。」
リカルドも流石に自分のせいで僕が泣いてるのを見て、決心が揺らいだ様だった。
「リカルド、ライオネルが自分のせいだと思ってしまう様だよ。こうして見ていてもライオネルは以前と変わらないくらい元気に見える。寝込んでいたから体力が落ちてしまって心配するのはしょうがないけれど、子供は直ぐに回復するよ。
リカルドはライオネルのためにも学校へ行きなさい。」
お父上にそう諭されてリカルドは不承不承頷いた。良かった。これで僕のリハビリも捗る。こうなったら頑張って元気にならないと、リカルドに余計な心配掛けちゃうな。
朝食後、僕を抱っこして運ぼうとするリカルドに僕は首を振った。
「ぼく、あるくお?」
実際歩けないことはないんだ。リカルドが歩かせてくれなかっただけで。僕はリカルドと手を繋ぎながら、一歩一歩歩いた。ちょっぴり身体が重く感じる。食べ過ぎたせいもあるかもしれない。
「…やっぱり抱っこする?」
リカルドが心配そうに覗き込むので、僕は首を振って微笑んだ。まったく過保護なんだから。
「リカうど?だっこばっかちてるちょ、ぼく、あるけにゃくなっちゃうお?」
リカルドは何を考えているのか読めない表情のまま、テラスの方へと向かって寝転べる椅子に一緒に座った。それから朝の気持ちの良い空気の中、ポツリポツリと広い庭を眺めながら話し出した。
「…ライオネルが妖精に遭遇したせいで熱が出たのだと知った時、私は心臓が止まりそうだったんだ。初めてライオネルに会った時もライオネルの側に妖精が居た事を考えると、ライオネルがここに来た事もそれに関係するんじゃ無いかって考えちゃうからね…。
私はライオネルを失いたくない。ある日突然現れたように、突然消えてしまいそうで怖くなる。」
リカルドの心配は的を得てると言って良い。確かにあの怖い顔の物体は、僕にそれっぽい事を言ってたじゃないか。でも時間が掛かるとも言ってたはずだ。
僕は元の自分に戻りたいのかどうかもよく分からなくなっていたので、日に日に逞しく成長するリカルドの首に抱きついてハーブの様な爽やかな匂いを吸い込んだ。
「ぼく、ここちゅき。リカうどいるかりゃ。」
「…。うん、ライオネルはどこにも行っちゃダメだよ。ずっと私の側に居てね。」
大人っぽく見えるとしても、今はまだ12歳のリカルドがそう言うのは自然に思えて、僕は不安に揺れる新緑色の瞳を覗き込んでにっこり微笑むと、特別に唇にチュウして言った。
「リカうど、だいちゅき。ずっといっちょよ?」
「リカうど?ぼく、あうくよ?」
見上げてそう言い張っても、リカルドは微笑むばかりで僕を下そうとはしない。抱っこされるのは嫌いじゃないから良いんだけど、何となくリカルドが怒ってる気がしてそれ以上駄々を捏ねるのをやめてしまう。
まぁどうせリカルドは時間になれば学校に行ってしまうのだから、それからリハビリに勤しめば良い。
「私はしばらく学校には行きません。ライオネルが完全に回復するまで心配で勉強どころじゃないですから。」
朝食時にそう宣言するリカルドに僕が一番びっくりした。どうしてそうなるの?でもお父上もお母上も、顔を見合わせて困惑している様だ。いや、ちょっと待って!
「リカうど、ぼく、らいじょうぶ!もう、なおっちゃ!」
思わず懸命に主張してしまう程には、全然元気なんだってば。
「いや、今回の体調不良はライオネルがあの原っぱで妖精に出会ったせいなんだから、病気と違ってタチが悪いんだ。私がライオネルを発見したあの時だって、確かに妖精らしき姿を見た。
もしもう一度妖精がライオネルに接触してきたら何が起きるか分からない。私はそれが心配です。」
…あれ、バレてる。そのせいでお父上とお母上がリカルドの暴走を止めないのかもしれないな。ここは僕がひと肌脱ぐしかない。
「ようちぇい?ちらないよ?ぼく、ちょんなの、ちらない。」
「寝込んでいた時、うなされていたでしょ?怖いって…。多分あれは妖精のことなんじゃないの?」
…何だって?流石にうわ言の事までは責任取れないな…。でもリカルドがぼくに執着するのはあまり良くない傾向だよね。僕のリハビリも進まない。
「ゆめでちょ…。リカうどがっこ、いかにゃい。ぼくのちぇい。かなちい…。」
実際悲しい気分になって涙まで出てきた。演技してると暗示に掛かるのか本当にそんな気分になるのだから、おチビってのは単純だ。
「…ライオネル。」
リカルドも流石に自分のせいで僕が泣いてるのを見て、決心が揺らいだ様だった。
「リカルド、ライオネルが自分のせいだと思ってしまう様だよ。こうして見ていてもライオネルは以前と変わらないくらい元気に見える。寝込んでいたから体力が落ちてしまって心配するのはしょうがないけれど、子供は直ぐに回復するよ。
リカルドはライオネルのためにも学校へ行きなさい。」
お父上にそう諭されてリカルドは不承不承頷いた。良かった。これで僕のリハビリも捗る。こうなったら頑張って元気にならないと、リカルドに余計な心配掛けちゃうな。
朝食後、僕を抱っこして運ぼうとするリカルドに僕は首を振った。
「ぼく、あるくお?」
実際歩けないことはないんだ。リカルドが歩かせてくれなかっただけで。僕はリカルドと手を繋ぎながら、一歩一歩歩いた。ちょっぴり身体が重く感じる。食べ過ぎたせいもあるかもしれない。
「…やっぱり抱っこする?」
リカルドが心配そうに覗き込むので、僕は首を振って微笑んだ。まったく過保護なんだから。
「リカうど?だっこばっかちてるちょ、ぼく、あるけにゃくなっちゃうお?」
リカルドは何を考えているのか読めない表情のまま、テラスの方へと向かって寝転べる椅子に一緒に座った。それから朝の気持ちの良い空気の中、ポツリポツリと広い庭を眺めながら話し出した。
「…ライオネルが妖精に遭遇したせいで熱が出たのだと知った時、私は心臓が止まりそうだったんだ。初めてライオネルに会った時もライオネルの側に妖精が居た事を考えると、ライオネルがここに来た事もそれに関係するんじゃ無いかって考えちゃうからね…。
私はライオネルを失いたくない。ある日突然現れたように、突然消えてしまいそうで怖くなる。」
リカルドの心配は的を得てると言って良い。確かにあの怖い顔の物体は、僕にそれっぽい事を言ってたじゃないか。でも時間が掛かるとも言ってたはずだ。
僕は元の自分に戻りたいのかどうかもよく分からなくなっていたので、日に日に逞しく成長するリカルドの首に抱きついてハーブの様な爽やかな匂いを吸い込んだ。
「ぼく、ここちゅき。リカうどいるかりゃ。」
「…。うん、ライオネルはどこにも行っちゃダメだよ。ずっと私の側に居てね。」
大人っぽく見えるとしても、今はまだ12歳のリカルドがそう言うのは自然に思えて、僕は不安に揺れる新緑色の瞳を覗き込んでにっこり微笑むと、特別に唇にチュウして言った。
「リカうど、だいちゅき。ずっといっちょよ?」
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