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プロローグと魔法の覚醒

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私は、辺境の開拓村に住むカイト15歳。
ここは辺境の開拓村だけのことはあって、危険と隣り合わせの日常を送っていた。
家族は、両親が居たが魔物に襲われて私が10歳と12歳の時に亡くなった。

私は誰も居なくなった家(小屋)で3年間過ごした。
そして今日成人の儀式を迎える。この儀式で私は、成人と認められ自由に行動ができるのだ。
父のようにここで開拓に従事するか、冒険者や商人に成り旅をするかは本人の自由である。

簡易の教会に近くの街から神父が訪れ、儀式を行う。
この開拓村での参加者は3人だ。

私は余り人との交わりを求めなかったためか、儀式を受ける子供の顔は見知っていたが話したことはなかった。


神父に呼ばれ、簡易な教会の祈りの場所で膝をつき目を閉じて祈りの姿になる。
「目を瞑り、祈りなさい。」
と言われて目を瞑る。すると何か温かいものが流れ込んできた。

儀式は無事に終了し、特別なこともなく一枚の紙を貰った。儀式を受け成人した証明書だ。
これを持ってどこかのギルドに加入し、身分証を手にできる。

直ぐに冒険者ギルドに向かい、会員証を作ってもらう。今までは仮の会員証で活動していたが、これからは正式な会員としての報酬がもらえる。

その夜は特別に酒を購入して、夕食を摂った。その夜はいつもより深く眠ったようだ。


ーー  前世の記憶


その夜に見た夢は、とても不思議だった。

とても不思議な世界で生まれた私は、学校という学問を習得する施設に。
7歳から22歳まで通ったのだ。そしてその後会社という職場に何年も通ったのだ。
ただただ同じ時間に起きて、同じ時間に帰る。変化もない生きてるだけの人生だった。

しかしそこで使う物や目にするものは、この世界では見たことも聞いたことも無いものばかりだった。
その世界で、私は後藤健二と呼ばれていた。余り幸せを感じたことはなかった。

そして私は、朝起きるまでにはその夢が前世の自分だと実感し始めていた。

朝起きてから私は新しい人生を迎えたような気分で、旅の支度を始めた。



ーー  旅立ち


大した家財道具もないが、売れるものは売り旅に必要な物を買い込んだ。

開拓村の村長と、世話になった日地に挨拶をすると直ぐに旅たった。

目的地は特にないが、まずはこの国の王都に向かうことにした。

舗装されていない街道を歩きで王都を目指す。大きな袋一つを背負い腰には大型のナタを下げて歩く私は新米冒険者に見えただろう。

武術の腕については、よく分からない。父が教えてくれた練習を真面目に繰り返していただけなので。


夕方が迫る頃、その日の野宿をする場所を決めテントの準備をする。
テントは丈夫な布地に防水処理して適当な木や手槍などで立てるテントだ。

そういえば成人の儀式の時に不思議な感覚が入ってきたが、あれは何なのだろう。
そう思いながらテントで横になる私は、昔の記憶を呼び起こしていた。

こう言う世界で無双したりする小説があったな。私の場合そのようなスキルはないと思うが・・。

この時私がふと考えていたのは、
『この世界にもスキル自体は存在する。ただそれを確かめるには、特別な魔道具と呼ばれるものが必要だと言われている。もし私に特別なスキルがあれば、旅も楽になるかもしれないが。』
と言うものだった。

朝になり、身支度をすると旅を続けた。

途中森を突き抜ける道があるが、そこは魔獣と呼ばれる凶暴な生き物が生息している。

商人らはそれらの場所を安全に通行するために、冒険者の警護を雇い旅をするのだ。

森をに抜けるのに歩きでは、早朝から夕方までかかると聞いていた私は。森の少し手前でその日の野宿地を決めていた。

今夜の野宿は夜に警戒をしていなければ、危険があるので森の浅い部分で切り倒した木を杭にしてテントの周りに突き刺していった。
これで少しは防御になったかと思いつつ夕食の準備をした。

乾燥した米をお湯で戻して肉を入れて塩で味付けする。
これは昔の記憶で思い出した保存食の食べ方だ。
「意外といけるな。」
そんな呟きをしながら食事を終える。

旅には水や火が必須だ。これらを自由に使えればかなり楽になるのにと思いつつ。
「私にも出来るかな。」
と言いながら目を瞑り瞑想する、そして体の中に特別な感覚がないか探る。
「ん?。」
臍の下丹田という辺りに何か熱の塊があるような気がする。
それを強く意識すると、じわりと体が熱くなってきた。その塊から何かエネルギーのようなものが溢れるような気がすると力が漲ってきた。

思わず、木の杭を拳で叩く。
「ドーン」
予想以上の音がして、直径20センチほどの木の杭が爆散する。
「おお!どうしたんだ。」
思わず声を上げてしまった。

拳を見るが怪我らしいものはない。
これは世に言う「身体強化」かもしれない。

このスキルは、冒険者や騎士などが取得しようと訓練するもので、ものに出来る者は僅かと聞いている。

気分を良くした私は、これの発展形を考えた。つまり手足だけではなく、目や耳だ。
目を閉じ集中しながら塊に意識して溢れ出すエネルギーを耳や目に行くように誘導する。

耳にそれが流れ込んだ感じがした瞬間。世界中の音が流れ込んだような気がした。
周囲の音が洪水のように流れ込む、それを選り分けながら聞きたい音を探すと。
「水の音だ。森の中に川が流れているようだ。」
「・・距離はおそらく・・・3kmくらい先。」
この感覚は新鮮だった。その音が聞こえたのはそれから10分ほどの間だった。
『継続時間は約10分か。』

目に誘導したエネルギーが目に達すると、遠くの風景が直ぐ目の前に見え出した。
「これが遠視のスキルか」
そう呟きながら時間を測ると、これも10分ほどだった。

今のところ、身体強化のスキルで。
・手足を強化
・耳を強化
・目を強化
出来ることがわかった。

体のだるさを感じ、眠気が襲ってきた。
「少し怖いが一眠ることにしよう。」
私は浅い眠りについた。
どのくらい寝ていただろう、何かの気配で目を覚ました。
周囲は暗く見えないが、何かが近くに来ている気がした。

私はエネルギーを目に集めながら『よく見えろと』と願った。
すると突然、周りが昼のように明るく見えるようになった。するとオオカミのような獣が5頭、直ぐ近くまで来ているのが見えた。
手槍を手に持ち、身体強化のエネルギーを手足に行き渡らせる。

昼のうちに練習したのがよかったのか、スムーズに出来た。地面を蹴り飛び上がると軽々と柵を飛び越えた。

1番近くのオオカミに走り寄り、手槍を突き出す。
手槍は狼の眉間から脳に達したようで、声を出すこともできず倒れた。素早くその場から離れながら、次のオオカミを襲う。
逃げようとしたオオカミの喉を槍が裂く。
「ギャン。」
オオカミの悲鳴、直ぐに別のオオカミが襲い掛かる。
それを手槍で受けて、腹を蹴り上げる。
直ぐ後ろに迫っていたオオカミを振り向き様に手槍で刺す。
肩口に突き刺さった手槍をそのまま捻り喉の方に振り抜くと、鮮血を飛ばしながら倒れる。

腹を蹴られたオオカミが起き上がり唸るが、少しずつ後退りして逃げ始める。

3頭のオオカミの死骸が残った。
すると身体に異変が。エネルギーの塊のあった場所がさらに熱くなりその熱が全身に回り始めたのだ。

テントに戻り横になると激しい痛みが全身を襲い出した。
『これは何だ』『毒でも喰らったか』
そう思いながら私は意識を失った。そのまままた前世の夢を見た。


                  ◇

数時間後、目を覚ました私は周囲の気配を確認しつつ焚き火に火をつけた。
柵を乗り越え、オオカミの死骸を集めると皮を剥ぎ始める。
多分このオオカミの毛皮は良いものだと思う。次に穴を掘り、死骸の残りを埋めて土をかぶせる。

水袋の水で、血を洗い流し杭にかけて乾燥させる。

火を少し大きくして、獣避けを兼ねる。
不思議な体験をしたもんだと思いながら少し体の違和感を感じる。
背が少しばかり伸びているのだ。
「あの全身痛は、この為だったか。」
納得しながらも、流石異世界と思った。



ーー  森の中で修行する


次の朝、目覚めると私は森に向かった。
耳を強化し水の音を探す、直ぐに場所を見つけ小走りで川にたどり着く。
水袋に水を補給し、口に含んで飲み干す。
「美味い。」
周りを見渡すと、果物を見つけた。
リンゴによく似た果物だ、匂いを嗅ぎ少し口に含むと甘酸っぱい香りと味が口一杯に広がる。
「いい物を見つけた。」
熟れた果物を選んで10個ほど袋に入れテントに帰る。

帰りに、小鬼と呼ばれる魔獣を見つけナタで首を刎ねる。
10匹ほど倒したところで、また身体が熱くなった。

テントに戻って私は
『これはレベルが上がって、身体能力が上がったのではないか。』
と思った。
開拓村に来た冒険者の話でもそんな話は聞かなかったが・・ひょっとしてこれが私のスキルなのかもしれない。

その日から数日私は、森の中で魔獣を狩ると外で野宿した。
何度か熱を感じる現象を体験して、かなり強くなった気がしていた。

もう少し強くなるためには、森の中に拠点を作る必要がある。
毎日のように拠点にできる場所を探して歩き、その場所を見つけた。

岩山があり、3mほどの高さに横穴が開いているのを見つけたのだ。
身体を強化してジャンプすると、軽々と穴まで飛び上がり出入りできる。
穴は、深さ10m程で奥が少し広くなっている。
出入り口を塞ぐ木の扉を作り蓋をするとかなり安全だ。

その日からそこを拠点に森を探索し始めた。
ここで見かける魔獣は。
・オオカミ型の魔獣
・小鬼
・豚顔の大鬼
・角のあるウサギ
・大鷲
・犬顔の中鬼
・大蛇
・大蜘蛛
である。

その生態や狩の状況を観察し、的確に倒してゆく。
するといつの間にか「看破」と言うスキルが生まれていた。

何故、スキルに気づいたかと言うと、相手をよく見ようと思うと。
頭の中に、[看破しますか]と流れるからだ。


ーー 新たなスキルたち


私はこの世界では、効率的に訓練したりすればスキルを取得しやすいのではと思い始めた。

そこで旅で必要と思われるスキルを取得することにした。
スキルは3つ
・水魔法~飲み水を確保するため
・火魔法~火を起こし攻撃をするため
・収納魔法~荷物や獲物をたくさん持つため
これを最優先で鍛え取得することにした。

水辺に行き、エネルギーを手に纏い水に浸けて
「水を産む魔法を」
と毎日望みながら試した。

焚き火をしながら、火に手を翳しエネルギーを纏い
「火の魔法を」
と毎日望んだ。

荷物をできるだけ多く持ち移動しながら、自分と違う場所にエネルギーを置くような感覚で
「収納魔法を」
と望んだ。

最初に発現したのは、水魔法だった。
いつもの様に水に手を入れ念じていたが、手を水から抜き出すと手先から溢れる様に水が出ていた。

次に発現したのは火魔法だ。
焚き火をしようと手を薪に近づけた時に火が飛び出し薪に火が付いたのだ。

最後の収納は中々発現しなかった。
半ば諦めかけた時に、手から落ちた荷物を取ろうと手を伸ばした時にそれが消えた。そして頭に
[毛皮1枚収納しました。]
と流れた。

「やった。これで問題なく旅ができる。」
私は喜び今後のことを計画し始めた。この森では自分を害する存在はほぼ居ない。
残りの必要なスキルを習得したら旅に出よう。


ーー  私はチート持ちではないよね。


その後30日をかけて、私はいろいろなスキルを習得した。
そのスキルは
身体強化、水魔法、火魔法、土魔法、風魔法、雷魔法、氷魔法、闇魔法、光魔法
解毒、身体異常回復、気配察知、気配遮断、瞬間移動、治療魔法、看破、鑑定、収納
の18個だ。

これだけの数のスキルを手に入れた私は、チート持ちになるのか?いや努力で身に付けたのだから違うだろう。

旅の準備をしながら地図がないなと今更思い出した。その日から旅を続けながら自分の歩いた道を思い出したり遠くの道を眺めて想像したりしているとある日。
[スキルMAPを取得しました。]
と流れた。

すると自分を中心に周囲の地図が現れるようになった。
「こりゃあ便利だ。」
思わず呟いた。
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