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本編
讃美歌うたいます!
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「おい、アレ見ろよ」
「マジか…」
隣のベンチに座っていた冒険者がチラチラとコチラを見ている事に気付いたのは食べ終わってからだった。
芋やスープなど、比較的柔らかそうに見える物以外は手を出さない事に決めた為、あの肉の様な失態は回避できていて安心していた。
パパがゴミを捨てに行ってくれている間、ギル兄様と2人でベンチでジュースを飲みながら待っていたのだ。
向かい合わせになるように座り直してもらったので、ギル兄様のご尊顔を見ながらニコニコしていたのだが、一瞬、ギル兄様の表情が曇ったのを見逃さなかった自分を褒めてあげたい。
「どちたの?」
「何でもないよ。ルシー、ごめんね」
何を謝っているのだろうか。
「僕と居ると嫌な目で見られちゃうかもしれないのに、離してあげられなくて…」
何故急にそんな事を言うのだろう。
離されて困るのは自分だ。
いや、大号泣するのは確定しているので周りが1番困るのかもしれないが…。
とりあえず離されるのは嫌だ。
「だめよぉ。じゅっと、いっちょ!」
ジュースを持っている為、抱きつけないので仕方なくジッと見つめておく。
ギル兄様は困った様に苦笑してから、ギュッと抱きしめてくれた。
どうして急に不安になってしまったのだろうか。
自分のギル兄様への惜しみない愛が伝わっていないとは考えられないが、もっと伝えても良いということなら、毎日、一日中ギル兄様への愛を叫びたい。
ギル兄様がどれだけ神々しく、慈悲に溢れ、素晴らしいかを布教するお役目を頂けるのなら、こんなに幸せな事は無いだろう。
手始めに歌でも作ってみようか。
鳥とペンギンにお願いすればトリオで活動できる。
自分が歌を担当し、鳥がメロディー、ペンギンは勝手なイメージだが陽気に打楽器を叩けそうだ。
人気が出るかはわからないが、間違いなくパパはファンになってくれるだろう。
もちろん歌詞はギル兄様への想いのみで構成する。
神様を讃える讃美歌だ。
そういえばもう1人、ギル兄様の信者がいた。
馬の相棒だ。
自分だけがこの幸せなお役目を享受するのは申し訳ないので彼も誘おうと思う。
大人の男性が加われば歌に重厚感が出るだろう。
自分の歌っている姿を微笑みながら見守ってくれているギル兄様を想像して、ニヤけてしまう。
幻想的な教会っぽい建物で歌う聖歌隊まで妄想したところで、ハッと我に返った。
今は妄想癖を爆発させている時ではない。
ギル兄様の笑顔が曇ってしまった事が大問題ではないか。
原因を考えろ。
やはりぶらり街歩きが苦痛だったのではないだろうか。
自分の為に無理をさせてしまった可能性がある。
ただ、例の蛍光ピンクを食べている時は楽しそうだったし、肉事件の時はいつも通りちょっと過保護気味だが、優しさが溢れ出して光り輝くギル兄様だった。
ふふっと笑う姿は神々しく、憂いはおびていなかったはずだ。
あの時と今とで決定的に違うことが1つある。
まさか…。
パパが近くに居ないのが原因ではないだろうか。
「マジか…」
隣のベンチに座っていた冒険者がチラチラとコチラを見ている事に気付いたのは食べ終わってからだった。
芋やスープなど、比較的柔らかそうに見える物以外は手を出さない事に決めた為、あの肉の様な失態は回避できていて安心していた。
パパがゴミを捨てに行ってくれている間、ギル兄様と2人でベンチでジュースを飲みながら待っていたのだ。
向かい合わせになるように座り直してもらったので、ギル兄様のご尊顔を見ながらニコニコしていたのだが、一瞬、ギル兄様の表情が曇ったのを見逃さなかった自分を褒めてあげたい。
「どちたの?」
「何でもないよ。ルシー、ごめんね」
何を謝っているのだろうか。
「僕と居ると嫌な目で見られちゃうかもしれないのに、離してあげられなくて…」
何故急にそんな事を言うのだろう。
離されて困るのは自分だ。
いや、大号泣するのは確定しているので周りが1番困るのかもしれないが…。
とりあえず離されるのは嫌だ。
「だめよぉ。じゅっと、いっちょ!」
ジュースを持っている為、抱きつけないので仕方なくジッと見つめておく。
ギル兄様は困った様に苦笑してから、ギュッと抱きしめてくれた。
どうして急に不安になってしまったのだろうか。
自分のギル兄様への惜しみない愛が伝わっていないとは考えられないが、もっと伝えても良いということなら、毎日、一日中ギル兄様への愛を叫びたい。
ギル兄様がどれだけ神々しく、慈悲に溢れ、素晴らしいかを布教するお役目を頂けるのなら、こんなに幸せな事は無いだろう。
手始めに歌でも作ってみようか。
鳥とペンギンにお願いすればトリオで活動できる。
自分が歌を担当し、鳥がメロディー、ペンギンは勝手なイメージだが陽気に打楽器を叩けそうだ。
人気が出るかはわからないが、間違いなくパパはファンになってくれるだろう。
もちろん歌詞はギル兄様への想いのみで構成する。
神様を讃える讃美歌だ。
そういえばもう1人、ギル兄様の信者がいた。
馬の相棒だ。
自分だけがこの幸せなお役目を享受するのは申し訳ないので彼も誘おうと思う。
大人の男性が加われば歌に重厚感が出るだろう。
自分の歌っている姿を微笑みながら見守ってくれているギル兄様を想像して、ニヤけてしまう。
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今は妄想癖を爆発させている時ではない。
ギル兄様の笑顔が曇ってしまった事が大問題ではないか。
原因を考えろ。
やはりぶらり街歩きが苦痛だったのではないだろうか。
自分の為に無理をさせてしまった可能性がある。
ただ、例の蛍光ピンクを食べている時は楽しそうだったし、肉事件の時はいつも通りちょっと過保護気味だが、優しさが溢れ出して光り輝くギル兄様だった。
ふふっと笑う姿は神々しく、憂いはおびていなかったはずだ。
あの時と今とで決定的に違うことが1つある。
まさか…。
パパが近くに居ないのが原因ではないだろうか。
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