人形の輪舞曲(ロンド)

美汐

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第七章 真犯人

真犯人3

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 熊田家に着くと、熊田兄妹が出迎えてくれた。それに、その母親も今日は顔を現した。
「ごめんなさいね。今日はちょっとうちに友達が来ることになっているから、上に行っててもらっていいかしら」
 なんだかとても上品なお母さんだった。それにとても若々しい。
「というわけなんで、今日は僕の部屋に上がってもらっていいですか?」
 と言う熊田の案内で、二階にある一室に僕たちは足を踏み入れた。熊田は少々照れていたが、入ってみるとわりと片付いていていい部屋だった。ただ部屋のあちこちに、ダンベルやらエアロバイクやらが置いてあるのが少し気になるくらいだ。
「いやあ、すみません。こんなむさ苦しい部屋で」
 熊田が恐縮してそう言うと、ミナミは部屋を見回した。
「そう? 綺麗にしてるじゃない。誠二くんの部屋よりよっぽど清潔よ」
 まるで僕の部屋は不潔と言っているようなものじゃないか。
 しかし熊田はそこではなく、別の部分が気になったらしい。
「え? ミナミさん、間木田くんの部屋に行くことあるんですか?」
「あるわよ。しょっちゅう」
「え、え? しょ、しょっちゅう?」
 熊田は思いきり動揺を顔に表していた。
 残念だけど、きみの想像するようなことはなにもないのだよ。熊田くん。
 心の中でそう言葉にして、なんだか空しくなってしまった。
「まず二人に報告しなきゃならないことがあるの」
 熊田にかまうことなくミナミは話を続ける。そして視線を僕に向けた。つまり報告するのは僕ということだ。
 熊田兄妹も、ミナミに倣って僕に視線を集中させた。
「ええと。見たんですよ、僕も。その例の人形」
 そう言ったあとの熊田兄妹の反応は微妙だった。ぽかんと僕を見つめているだけである。もっとすごい反応を期待していたのに、拍子抜けだ。
「あ、あのぅ……。それってどういう……?」
 美鈴ちゃんが瞬きをしながら訊いてきた。
「うん。昨夜僕のところに来たんだ。偶然とかじゃなくて、目的は僕だったみたい」
 美鈴ちゃんはそれを聞いて、しばらく考え込んだ。
「えっと、それって、えええ? ええーーーっ!」
 急に美鈴ちゃんは声を上げた。熊田も驚いた表情で僕を見つめ返してきた。
「淡々と言うからわからなかったじゃないですか! なんでそんなことになっちゃってるんですか!」
 どうやらようやく理解してくれたらしい。
「なんでかっていうのはよくわからないんだけどね」
 美鈴ちゃんと熊田は、心配そうに僕の顔を見つめていた。
「でも、どうして間木田さんが? 間木田さんはうちのクラスとなんの関係もないじゃないですか」
 そうなのだ。僕もそれが気になっていた。なぜ標的が僕になったのか。
「昨日、葬式に忍び込んだせいかな」
 僕はそう口にする。思い付くのはそれくらいだ。だが、葬式に来ていたのは他にも大勢いた。しかも葬式がほぼ終わったころに紛れ込んだのだ。
「潜入捜査なんかして罰が当たったとか?」
 熊田が冗談めかしてそう言ったが、誰も否定しなかった。今の状況ではとても冗談に聞こえない。
「その後、百合子ちゃんとファミレスに行ったわよね」
 ミナミは僕の顔を見つめた。ミナミがなにを言いたいのか、わかっていた。
「あのとき、僕が橋の上で彼女がなにかを捨てていたのを見たと言ったから……?」
 僕はそう口にしてみて、急に恐ろしくなった。
 それは、つまり。
「……警告、みたいなものなんでしょうか。これ以上首を突っ込むなっていう」
 考えたくはなかった。百合子ちゃんがそんなことをするなんて、とても考えられなかった。
 しかし、考えれば考えるほど、そうとしか思えなかった。
「まあ、また百合子ちゃんと話す機会もあるだろうし、そのことも含めて追求しましょう」
 ミナミの言葉に、美鈴ちゃんは心配そうに言った。
「でも、大丈夫なんですか? また出てきたりしたら……」
 しかしミナミは、僕と美鈴ちゃん、熊田の顔を順番に眺めてから、
「大丈夫よ。私がついてるんですからね」
 と不安を吹き飛ばすように、明るく胸を叩いた。美鈴ちゃんと熊田もそれを聞いて、少し安心したようだった。僕も少し心が軽くなったような気がする。
「そのためにも、早くこの事件を解決しなくちゃね」
 ミナミの言うとおり、そうするしかないようだった。
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