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第七章 真犯人
真犯人4
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それからもうひとつ、呪いの噂を故意に流している犯人がいるかもしれないという説を、熊田兄妹にも話した。
「言われてみれば確かにそうかもしれない……。呪い呪いって先入観があるから、クラスで起こった不幸な事件は呪いのせいだって気がしてました」
「犯人は美鈴ちゃんのクラスの誰かだと思うんだけど、心当たりとかない?」
「心当たり……ですか」
「そうね。例えば噂をわざと広めているような、そんな人いなかった?」
ミナミの問いに、美鈴ちゃんは頬に手を当ててしばらく考え込んだ。そして突然、はっとした表情をした。それからすぐに険しい表情になり、なにかを否定するように首を振った。
「どうしたの? 誰か心に浮かんできたんでしょう?」
「あ、はい……。でも違うんです。ただの勘違いで」
「いいから言ってみて。勘違いでもなんでもいいから」
ミナミは美鈴ちゃんに鋭い視線を送った。美鈴ちゃんは小さくこくりとうなずくと、口を開いた。
「……池沢くん、です」
「え?」
思わず僕は声を出していた。一瞬聞き間違いかと思った。
「池沢くん?」
「はい」
「でも、池沢くんは死んでしまった」
池沢くんが噂を流していた張本人? どうしてそんなことを? そして、どうして死んでしまったんだ?
疑問ばかりが増えていく。解決の糸口なんてどこにあるんだ。
「美鈴ちゃん。それ本当なの?」
ミナミが訊くと、美鈴ちゃんはこくりと首を縦に動かした。
「そう、だったと思います。呪いの話をよくしてたのって、たぶん池沢くん。私も池沢くんから呪いのせいで事件が起きてるって聞いたことあります」
「でも、確かに池沢くんなら、呪いを人形のせいにした理由が説明できるわね。彼自身が人形を目撃したことがあるんだから」
「じゃあやっぱり池沢くんの自殺は人形のせいってことですか?」
「慌てないで。まずは噂を広めた犯人が、本当に池沢くんなのか確かめなくちゃ。美鈴ちゃん、ちょっと面倒だけど、クラスの子たちに呪いの噂を誰から聞いたか確認してもらえる? あと、池沢くんの周りによくいた人物の情報も教えてくれるかな?」
ミナミが言うと、美鈴ちゃんは慌てて自分の部屋からクラス写真と名簿を持ってきた。
「池沢くん、あんまり仲の良い友達とかいなかったみたいなんで、それほど親しい人っていうのはいなかったと思うんですけど……」
「そう? よく思い出してみて。クラスの中じゃなくてもいいの。例えば部活とか……」
部活、と聞いて思い出した。それはミナミと美鈴ちゃんも同じようだった。
「百合子ちゃん、か」
僕は思わず天を仰いだ。すべてが百合子ちゃんに繋がる。
「他の部員は誰かいるの?」
ミナミはかまわず質問を続ける。
「うちのクラスはそれだけです。あ、担任の青山先生も美術部の顧問だから人数に入るかな」
「そう。ありがとう。じゃあ、私と誠二くんは青山先生と百合子ちゃんに話を聞いてみるわ。美鈴ちゃんと熊田くんは、他の子たちにちょっと噂の出所聞いておいてもらえるかな」
そう言ってミナミは立ち上がった。
「え、ミナミさん。どこ行くんですか?」僕はミナミを振り返って言った。
「学校よ。さ、早く行くわよ!」
「は、はい!」
一瞬背中に熊田の殺気を感じたが、気にするまい。
僕はさっさと階下に下りていくミナミの背中を追った。
「言われてみれば確かにそうかもしれない……。呪い呪いって先入観があるから、クラスで起こった不幸な事件は呪いのせいだって気がしてました」
「犯人は美鈴ちゃんのクラスの誰かだと思うんだけど、心当たりとかない?」
「心当たり……ですか」
「そうね。例えば噂をわざと広めているような、そんな人いなかった?」
ミナミの問いに、美鈴ちゃんは頬に手を当ててしばらく考え込んだ。そして突然、はっとした表情をした。それからすぐに険しい表情になり、なにかを否定するように首を振った。
「どうしたの? 誰か心に浮かんできたんでしょう?」
「あ、はい……。でも違うんです。ただの勘違いで」
「いいから言ってみて。勘違いでもなんでもいいから」
ミナミは美鈴ちゃんに鋭い視線を送った。美鈴ちゃんは小さくこくりとうなずくと、口を開いた。
「……池沢くん、です」
「え?」
思わず僕は声を出していた。一瞬聞き間違いかと思った。
「池沢くん?」
「はい」
「でも、池沢くんは死んでしまった」
池沢くんが噂を流していた張本人? どうしてそんなことを? そして、どうして死んでしまったんだ?
疑問ばかりが増えていく。解決の糸口なんてどこにあるんだ。
「美鈴ちゃん。それ本当なの?」
ミナミが訊くと、美鈴ちゃんはこくりと首を縦に動かした。
「そう、だったと思います。呪いの話をよくしてたのって、たぶん池沢くん。私も池沢くんから呪いのせいで事件が起きてるって聞いたことあります」
「でも、確かに池沢くんなら、呪いを人形のせいにした理由が説明できるわね。彼自身が人形を目撃したことがあるんだから」
「じゃあやっぱり池沢くんの自殺は人形のせいってことですか?」
「慌てないで。まずは噂を広めた犯人が、本当に池沢くんなのか確かめなくちゃ。美鈴ちゃん、ちょっと面倒だけど、クラスの子たちに呪いの噂を誰から聞いたか確認してもらえる? あと、池沢くんの周りによくいた人物の情報も教えてくれるかな?」
ミナミが言うと、美鈴ちゃんは慌てて自分の部屋からクラス写真と名簿を持ってきた。
「池沢くん、あんまり仲の良い友達とかいなかったみたいなんで、それほど親しい人っていうのはいなかったと思うんですけど……」
「そう? よく思い出してみて。クラスの中じゃなくてもいいの。例えば部活とか……」
部活、と聞いて思い出した。それはミナミと美鈴ちゃんも同じようだった。
「百合子ちゃん、か」
僕は思わず天を仰いだ。すべてが百合子ちゃんに繋がる。
「他の部員は誰かいるの?」
ミナミはかまわず質問を続ける。
「うちのクラスはそれだけです。あ、担任の青山先生も美術部の顧問だから人数に入るかな」
「そう。ありがとう。じゃあ、私と誠二くんは青山先生と百合子ちゃんに話を聞いてみるわ。美鈴ちゃんと熊田くんは、他の子たちにちょっと噂の出所聞いておいてもらえるかな」
そう言ってミナミは立ち上がった。
「え、ミナミさん。どこ行くんですか?」僕はミナミを振り返って言った。
「学校よ。さ、早く行くわよ!」
「は、はい!」
一瞬背中に熊田の殺気を感じたが、気にするまい。
僕はさっさと階下に下りていくミナミの背中を追った。
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