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フィールドワークは危険がいっぱい⁉︎
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しおりを挟む私が黙っていると、アナスタージウス室長は言葉を続ける。
「だから、僕の助手が務まる人間は、手間がかからないほうが長続きするのかもね。僕はあまり他人にものを教えるのは向いていないから、初めから僕の研究に興味を持っていて教えをこおうとした人たちはすぐに辞めてしまったよ」
「え、それって皮肉ですか?」
自分は質問は少ないほうだと思う。彼の手を煩わせたくなくて、気になったことはまずは自分で調べてから、それでもわからないときだけ質問をするようにしている。実家にいたときからの習慣でもあるので、別に室長が説明下手だからそうしてきたわけではない。
すると、アナスタージウス室長は妖しく笑んだ。
「ふふ、どうだろうね。少なくとも僕はフィルギニア君が助手になってから、この研究がより楽しくて仕方がないよ」
「私は役に立っていますか?」
「邪魔にはなっていないね」
軽く肩をすくめて流されてしまった。
むぅ……別にムードメーカーとして就職したわけではないんですけど。
彼からの評価をどう受け取ったらいいのか正直わからなかった。大人の男性が何を考えているのかよく見えないというか、たんにアナスタージウス室長がわかりにくいだけなのか。
仕事で成果をあげないと、ずっと一緒にいられないのに。
助手として、まだ日が浅い。だから評価をしにくい部分はあるだろう。でも、どうしたら、評価をもらえるのだろう。
「――この先に少し開けた場所があるんだ。そろそろ昼食にしようか」
食事の後で植物採集をして帰ろうね――と説明されている途中で、私はあることに気づいた。
「室長、お弁当、忘れてきていませんか?」
アナスタージウス室長の持つ荷物を見るに、お弁当が入った袋がない。入れ替えている様子もなかったので、雑木林の入口にある東屋に忘れてきたのだろう。
私の指摘を受けて、アナスタージウス室長は自分の持つ鞄を慌てた様子で確認し、がっくりと肩を落とした。
「え、あ……本当だ。うっかり置いてきてしまったようだ。仕方がない、戻ろうか」
彼はすぐに迷うことなく引き返そうとする。しかし、私は手を引っ張って止めた。
「ん?」
「私が一人で取りに戻ります。室長はここで待っていてください!」
「おや、また僕を年寄り扱いかい?」
困った顔をするアナスタージウス室長に、私は大真面目な顔で首を横に振った。
「違います。――先ほどの説明ですと、ここまでの道に危険な植物はありませんでした。このあとの植物採集や帰路での馬の移動を思うと、室長は体力を残しておいたほうがいいと思うのです。荷物だってこうして全部持っていただいていますし。なので、ここでお待ちください。走っていけばすぐでしょうし」
私がグイグイと迫りつつ説得したからか、アナスタージウス室長はやむなしといった感じで顔を綻ばせた。
「フィルギニア君がそこまで言うなら、お願いしようかな。昨日渡した虫除けオイルは塗っているんだよね?」
「はい。露出する部分以外もしっかりと塗ってきましたよ」
虫除けオイルは着替える前に念入りに塗ってきた。肌が荒れないことをちゃんと確認した上で、二度塗りしたくらいである。これで足りないなら、そもそもの虫除け効果が薄かったか、効き目がない虫に遭遇したかになるだろう。
私が胸を張って答えると、彼は安心した顔をした。
「それなら問題ないかな。植物自体に危険がなくても、そこに集まる虫や動物に危険があることも多いからね」
「そうですね。周囲には常に意識を向けるようにします」
私はついつい植物限定での話をしてしまったが、ここには虫や動物だって生息している。当然ながら、それらに危険がないとは言えないだろう。私は真剣な顔をして頷いた。
「じゃあ、頼んだよ。一応待っていてあげるけれど、遅くなってきたら迎えに行くから」
「はい。承知いたしました!」
ハキハキと元気に答えると、私は自分たちが歩いてきた獣道を引き返す。曲がりくねっているとはいえ、一本道なので迷いようがない。
私は早足で東屋に向かった。
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