クジ引き婚ですのであしからずっ‼︎【完結】

一花カナウ

文字の大きさ
7 / 29
結婚までのエトセトラ

7.恋人はいないのか、って私に興味があったんですか?

しおりを挟む
「――特定の恋人はいないんだな」

 会議が終わり、珍しくルビがプライベートについて質問してきた。これまで仕事以外に興味がなさそうな態度で接してきたから意外だ。
 聞き違いかと思ってルビの端正な顔を見つめたが、彼はいたって真面目な顔をしている。

「ええ、まあ」
「恋人を作る気はないのか? 仲のいい鉱物人形はいたよな、オパールとか」
「彼は友だちですよ。向こうも異性として見てないでしょうし」

 聞き違いではなかったようだ。
 自分のことを話す気はなかったのだけれど、ルビがこういう話を振ってくること自体が興味深くてついつい返事をしてしまった。
 異動があり彼と組んで一ヶ月は経つが、仕事以外の話題で喋ったことがあったかどうか怪しい。実家が結婚はしないのかとうるさいのだと愚痴った相手はオパールであって、私が愚痴っていたのをルビが知っているのはたまたまそこに彼が居合わせたからにすぎない。

「む。そうなのか?」
「そうですよ。仕事で何度も組んでいますけど、互いの力量が同等で戦略の選び方が近いからかストレスがないのでそうしているだけで」
「ふむ……」

 彼は何かを思案するような顔をしている。どうしたというのだろう。

「そもそも私、異性にも同性にも興味ないんですよ。だから、恋人を作る気がなくて。友人すら少ないですし。仕事ができればそれでいいというか」

 私は生まれつき魔力量が多く、周囲の魔力も溜め込みやすい。そのため定期的に消費する必要がある。
 この特殊魔物対策部での仕事は危険と隣り合わせではあるが、魔力放出を伴う術を使い放題なので都合がいいのだ。私を私として活かすために、この仕事を辞めるわけにはいかない。

「……そう、なのか?」

 とても驚いたような顔をしている。
 彼は私をどういう人間だと思っているのだろう。鉱物人形の持つ情動が人間とまったく同じだとは思っていないが、この反応は新鮮だ。

「まあそれはそれとして。先ほどの会議では助言をありがとうございました。形だけの結婚は確かに戦略的にアリですね。二十代も半ばときたら、両親も気にしてるんだかうるさくて。同期からも恋愛話はないのかって探られるし。鉱物人形と組んで仕事をしているから、気になるんでしょうね」
「そういうものなのか」

 私の説明にピンとこないようだ。不思議そうな顔をしている。
 私は彼の鼻先に指を向けた。

「ルビさんもすごく美人じゃないですか。きらめく緋色の髪、血の色よりも深い色の瞳もとっても綺麗ですし。一見線が細そうだけれど、そこは鉱物人形ってだけあって力強いですし。素敵だと思いますよ」
「キレイだから気になる、と?」
「目を引くかと。それに、綺麗だと思えるもののそばにいたいって願うのは自然なことじゃないですかね」
「ならば君は俺のそばにいたいと思えるか? キレイだから」

 じっと見つめられる。瞳がキラキラと輝いていて美しい。

「えっと……」
「では、オパールはどうだ? ヤツも綺麗な部類なんだろう?」

 即答できなかったからか、ルビは質問の内容を変えてきた。これはどんな意図のある質問なんだろう。ルビにしてはとても珍しい。

「そうですね……隣にいても困りはしませんが」
「ん? なんだ、オレを呼んだか?」
「あ、オパールさん」

 背後から声をかけられて振り返れば、輝く白い衣装をまとった鉱物人形、オパールが立っていた。片手を上げて挨拶してくれる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんとの親子丼をちょっと書きたくなっただけです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...