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結婚までのエトセトラ
7.恋人はいないのか、って私に興味があったんですか?
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「――特定の恋人はいないんだな」
会議が終わり、珍しくルビがプライベートについて質問してきた。これまで仕事以外に興味がなさそうな態度で接してきたから意外だ。
聞き違いかと思ってルビの端正な顔を見つめたが、彼はいたって真面目な顔をしている。
「ええ、まあ」
「恋人を作る気はないのか? 仲のいい鉱物人形はいたよな、オパールとか」
「彼は友だちですよ。向こうも異性として見てないでしょうし」
聞き違いではなかったようだ。
自分のことを話す気はなかったのだけれど、ルビがこういう話を振ってくること自体が興味深くてついつい返事をしてしまった。
異動があり彼と組んで一ヶ月は経つが、仕事以外の話題で喋ったことがあったかどうか怪しい。実家が結婚はしないのかとうるさいのだと愚痴った相手はオパールであって、私が愚痴っていたのをルビが知っているのはたまたまそこに彼が居合わせたからにすぎない。
「む。そうなのか?」
「そうですよ。仕事で何度も組んでいますけど、互いの力量が同等で戦略の選び方が近いからかストレスがないのでそうしているだけで」
「ふむ……」
彼は何かを思案するような顔をしている。どうしたというのだろう。
「そもそも私、異性にも同性にも興味ないんですよ。だから、恋人を作る気がなくて。友人すら少ないですし。仕事ができればそれでいいというか」
私は生まれつき魔力量が多く、周囲の魔力も溜め込みやすい。そのため定期的に消費する必要がある。
この特殊魔物対策部での仕事は危険と隣り合わせではあるが、魔力放出を伴う術を使い放題なので都合がいいのだ。私を私として活かすために、この仕事を辞めるわけにはいかない。
「……そう、なのか?」
とても驚いたような顔をしている。
彼は私をどういう人間だと思っているのだろう。鉱物人形の持つ情動が人間とまったく同じだとは思っていないが、この反応は新鮮だ。
「まあそれはそれとして。先ほどの会議では助言をありがとうございました。形だけの結婚は確かに戦略的にアリですね。二十代も半ばときたら、両親も気にしてるんだかうるさくて。同期からも恋愛話はないのかって探られるし。鉱物人形と組んで仕事をしているから、気になるんでしょうね」
「そういうものなのか」
私の説明にピンとこないようだ。不思議そうな顔をしている。
私は彼の鼻先に指を向けた。
「ルビさんもすごく美人じゃないですか。きらめく緋色の髪、血の色よりも深い色の瞳もとっても綺麗ですし。一見線が細そうだけれど、そこは鉱物人形ってだけあって力強いですし。素敵だと思いますよ」
「キレイだから気になる、と?」
「目を引くかと。それに、綺麗だと思えるもののそばにいたいって願うのは自然なことじゃないですかね」
「ならば君は俺のそばにいたいと思えるか? キレイだから」
じっと見つめられる。瞳がキラキラと輝いていて美しい。
「えっと……」
「では、オパールはどうだ? ヤツも綺麗な部類なんだろう?」
即答できなかったからか、ルビは質問の内容を変えてきた。これはどんな意図のある質問なんだろう。ルビにしてはとても珍しい。
「そうですね……隣にいても困りはしませんが」
「ん? なんだ、オレを呼んだか?」
「あ、オパールさん」
背後から声をかけられて振り返れば、輝く白い衣装をまとった鉱物人形、オパールが立っていた。片手を上げて挨拶してくれる。
会議が終わり、珍しくルビがプライベートについて質問してきた。これまで仕事以外に興味がなさそうな態度で接してきたから意外だ。
聞き違いかと思ってルビの端正な顔を見つめたが、彼はいたって真面目な顔をしている。
「ええ、まあ」
「恋人を作る気はないのか? 仲のいい鉱物人形はいたよな、オパールとか」
「彼は友だちですよ。向こうも異性として見てないでしょうし」
聞き違いではなかったようだ。
自分のことを話す気はなかったのだけれど、ルビがこういう話を振ってくること自体が興味深くてついつい返事をしてしまった。
異動があり彼と組んで一ヶ月は経つが、仕事以外の話題で喋ったことがあったかどうか怪しい。実家が結婚はしないのかとうるさいのだと愚痴った相手はオパールであって、私が愚痴っていたのをルビが知っているのはたまたまそこに彼が居合わせたからにすぎない。
「む。そうなのか?」
「そうですよ。仕事で何度も組んでいますけど、互いの力量が同等で戦略の選び方が近いからかストレスがないのでそうしているだけで」
「ふむ……」
彼は何かを思案するような顔をしている。どうしたというのだろう。
「そもそも私、異性にも同性にも興味ないんですよ。だから、恋人を作る気がなくて。友人すら少ないですし。仕事ができればそれでいいというか」
私は生まれつき魔力量が多く、周囲の魔力も溜め込みやすい。そのため定期的に消費する必要がある。
この特殊魔物対策部での仕事は危険と隣り合わせではあるが、魔力放出を伴う術を使い放題なので都合がいいのだ。私を私として活かすために、この仕事を辞めるわけにはいかない。
「……そう、なのか?」
とても驚いたような顔をしている。
彼は私をどういう人間だと思っているのだろう。鉱物人形の持つ情動が人間とまったく同じだとは思っていないが、この反応は新鮮だ。
「まあそれはそれとして。先ほどの会議では助言をありがとうございました。形だけの結婚は確かに戦略的にアリですね。二十代も半ばときたら、両親も気にしてるんだかうるさくて。同期からも恋愛話はないのかって探られるし。鉱物人形と組んで仕事をしているから、気になるんでしょうね」
「そういうものなのか」
私の説明にピンとこないようだ。不思議そうな顔をしている。
私は彼の鼻先に指を向けた。
「ルビさんもすごく美人じゃないですか。きらめく緋色の髪、血の色よりも深い色の瞳もとっても綺麗ですし。一見線が細そうだけれど、そこは鉱物人形ってだけあって力強いですし。素敵だと思いますよ」
「キレイだから気になる、と?」
「目を引くかと。それに、綺麗だと思えるもののそばにいたいって願うのは自然なことじゃないですかね」
「ならば君は俺のそばにいたいと思えるか? キレイだから」
じっと見つめられる。瞳がキラキラと輝いていて美しい。
「えっと……」
「では、オパールはどうだ? ヤツも綺麗な部類なんだろう?」
即答できなかったからか、ルビは質問の内容を変えてきた。これはどんな意図のある質問なんだろう。ルビにしてはとても珍しい。
「そうですね……隣にいても困りはしませんが」
「ん? なんだ、オレを呼んだか?」
「あ、オパールさん」
背後から声をかけられて振り返れば、輝く白い衣装をまとった鉱物人形、オパールが立っていた。片手を上げて挨拶してくれる。
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