6 / 29
結婚までのエトセトラ
6.それは一年前のこと
しおりを挟む
* * * * *
一年前のことだ。
精霊使いの魔物化についての政府報告会にて、特殊魔物対策部保護管理課に命じられたのは結婚だった。
「え、おっしゃる意味がわからないんですけど」
プライベートに口出しされることになるとは思っていなかった私は、うっかり大きな声で発言していた。
偉い御役人の方々が咳をする。
私はしまったとは思ったものの、いっそうのこと開き直ることにした。
「結婚しろって? おかしいでしょ。結婚予定のない協会職員は鉱物人形と強制的に結婚って……個人の活動に干渉するのは越権行為じゃないんですかね?」
「女性職員だけでなく、男性職員も鉱物人形との結婚をしてもらうぞ?」
「いやいやいや、論点はそこじゃないですって」
確かに、男性型とはいえ見目麗しい鉱物人形を伴侶にしたいと言っている男性職員がいることはよく知っているつもりではあるのだけれど。
御役人は続ける。
「衣食住の保証もする。子どもを作れと言っているわけではない。未婚で生涯を終えるくらいなら、鉱物人形をパートナーとして仕事に励めと言っているのだ」
「そこは個人の自由の部分じゃないですか」
なおもやり合おうとする私を、同席していたルビが制した。袖を引かれてルビを見やると、彼は私に耳打ちをしてくる。
「――形だけの結婚にしておけばいいんだ。君は最近愚痴っていたではないか、結婚しないのかと実家の圧がうるさいのだと。ここで適当な相手と形だけの婚姻関係を結べば、丸く収まるんじゃないのか?」
それは一理ある。ぐぬぬとなりつつも、私は椅子に座り直した。
「取り乱してしまい失礼いたしました。……懸念点については後日報告書として提出いたします」
私が引いたので、話し合いは進められていく。ほぼ内容が決められてしまったこの婚姻制度について、おそらく覆ることはないのだろう。だが、報告書の提出は認められたので不満はあるがヨシとする。
一年前のことだ。
精霊使いの魔物化についての政府報告会にて、特殊魔物対策部保護管理課に命じられたのは結婚だった。
「え、おっしゃる意味がわからないんですけど」
プライベートに口出しされることになるとは思っていなかった私は、うっかり大きな声で発言していた。
偉い御役人の方々が咳をする。
私はしまったとは思ったものの、いっそうのこと開き直ることにした。
「結婚しろって? おかしいでしょ。結婚予定のない協会職員は鉱物人形と強制的に結婚って……個人の活動に干渉するのは越権行為じゃないんですかね?」
「女性職員だけでなく、男性職員も鉱物人形との結婚をしてもらうぞ?」
「いやいやいや、論点はそこじゃないですって」
確かに、男性型とはいえ見目麗しい鉱物人形を伴侶にしたいと言っている男性職員がいることはよく知っているつもりではあるのだけれど。
御役人は続ける。
「衣食住の保証もする。子どもを作れと言っているわけではない。未婚で生涯を終えるくらいなら、鉱物人形をパートナーとして仕事に励めと言っているのだ」
「そこは個人の自由の部分じゃないですか」
なおもやり合おうとする私を、同席していたルビが制した。袖を引かれてルビを見やると、彼は私に耳打ちをしてくる。
「――形だけの結婚にしておけばいいんだ。君は最近愚痴っていたではないか、結婚しないのかと実家の圧がうるさいのだと。ここで適当な相手と形だけの婚姻関係を結べば、丸く収まるんじゃないのか?」
それは一理ある。ぐぬぬとなりつつも、私は椅子に座り直した。
「取り乱してしまい失礼いたしました。……懸念点については後日報告書として提出いたします」
私が引いたので、話し合いは進められていく。ほぼ内容が決められてしまったこの婚姻制度について、おそらく覆ることはないのだろう。だが、報告書の提出は認められたので不満はあるがヨシとする。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる