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結婚までのエトセトラ

9.見合いの場に現れた意外な相手

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「え、待ってください。私の相手って、ルビさんだったんですか?」

 協会がセッティングしたお見合いの席に現れた超美形の相棒を前に私は呆然としていた。
 見慣れている戦闘服でも制服でもない姿はとても新鮮だ。鉱物人形はなにを着せてもよく似合うと言われてはいるが、パーティーなどに参加できる盛装がこんなに華やかで見栄えが良いだなんて予想外だった。

「……不満か?」
「あ、いえ。そのお姿が眩しすぎて」

 そう返すと、ルビはドレスアップした私を爪先から頭のてっぺんまでじっと見て、はにかんだように笑った。そんな顔をするなんて想定外。キラキラしている。
 仕事中はどちらかというと無表情なのだ。それはそれで整った顔をしているのだから魅力的ではあるし、何を考えているのかわからない不気味さと、本来備わっている強靭さからくる威圧感が滲んでいるから、声をかけやすいタイプではない。静かに佇んでプレッシャーを与えてくるようなタイプ。圧をかけに行く仕事だからそれでいいのだけど。
 今、目の前にいるルビは話しかけやすい気さくさが感じられ、表情が自然だ。こっちはこっちで魅力的だと思う。

 ――別人、というか、同位体のルビかと思ったけど、この気配は私と組んでいるルビさんだな……

 私が驚いたのはそういうことだ。同僚のルビがここにいたから、しかも別人のようにドレスアップし、雰囲気まで柔らかくなった彼がいたから、だ。

「君も綺麗だ」
「あ、ありがとう。あなたと並んだら霞んでしまいそうですが」
「そんなことはない。俺たちの目から見れば、君も輝いて見えている」

 そう説明して、私に椅子を勧めてくる。拒む理由もないので私は大人しく座り、ルビは正面の席に腰を下ろした。

「……私、輝いているんですか?」

 そんなことを言われたことはなかったが。
 私が戸惑えば、ルビはこちらを見て穏やかに笑んだ。

「君から漏れ出す魔力が、俺たち鉱物人形には眩しく映る。それゆえに、鉱物人形たちは君を欲しいと願うはずだ。人間が鉱物人形を欲するように」

 マジか、と受け止めそうになったところで首を大きく横に振る。

「いやいや、それはないですよ。だったら、くじ引きになる前にあちこちから求婚されているはずじゃないですか。私、告白されたことは一度だってないですし、むしろ私がフラれたところをあなた、見ていたでしょ」

 告白をされたことはない。幼い頃から美人だと言われてきたが、もっと綺麗な鉱物人形を侍らせる生活をしていたら、だからなんだという感じだ。
 告白をされたことがないことはわきに置いておくにしても、私が勢いでした求婚があっさり失敗したのを、この目の前にいる彼は見ている。振り返ってみるに、私は同族からも彼らからも求められていない。
 むすっとして告げれば、ルビは至極真面目な顔をした。
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