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結婚までのエトセトラ
10.予想していた相手と違うので
しおりを挟む「あれは君が悪いだろ。オパールが気の毒だ」
「……どうせ脈なしじゃないですか」
あーあ、と唸って、私は頬杖をつく。どうしてこうなってしまったんだろう。
ルビが不思議そうな顔をした。
「――ここにオパールが来ると思っていたのか?」
「少しは期待していました」
私は正直に答える。
オパールは友人だけれど、この仕事を始めたときの最初のパートナーでもある。付き合いは長いし、休日でもお出かけをする仲だ。一緒に泊まりがけの旅行もしたことがある。ちなみに泊まる時は同室だった。
この事態を知っていたのだから、挙手してくれるんじゃないかと、あのときはルビもいたから断っただけで本心はそうじゃないかもしれない……なんて、思っていた。
「俺じゃなくて?」
ルビが問う。
全く予想していなかったわけではない。
「……だって、正直、ルビさんとは知り合って日が浅いですからね。仕事のパートナーとしてはオパールさんと同等、状況によってはそれ以上の優秀な鉱物人形だと思っていますよ。ですけど、結婚ってなると、話は別というか。契約結婚にしていただけたとしても、職場でも自宅でもずっと私と一緒って……キツくないですか?」
仕事しかしていない女だ。それも、生傷の絶えない部署の、である。仕事に使える特技しかないつまらい人間だ。一応、見た目としてスタイルは悪くはないと思うが、相手からしたら抱けない女のスタイルの良し悪しなんてどうでもいい話だろう。
私にメリットがあっても、相手にメリットがあるようには考えられない。
「へえ。オパールなら平気だと?」
「平気というか、放っておいてくれるから」
オパールと買い物に出た時のことを思い返す。
バラバラで行動したいときはそうするし、一緒にいたほうが良いと判断すればそうする。相談せずともそれが自然にできるのがオパールだ。
「俺も放っておくタイプだと自己評価していたが……違うのか?」
「干渉することが好きとは思っていないですけど、正直わかりませんね。仕事中は食事も一緒にとっているし」
放っておいてはくれるが、視界に必ずいるのが彼だ。雛が親鳥を追いかけているみたいな可愛さを感じていたので、それが嫌だったわけではない。
私が答えると、ルビは一瞬言い淀んだ。
「それは……前に魔物に不意打ちを喰らって魔力供給が必要な状態に陥ったって聞いたから、食事中も気を抜かないようにって見張っていただけで……」
――護衛のつもりだった?
心配されていたとは思わなかった。私はこれでも部署内戦闘技能ランキング上位者なのだ。相性の問題で首席になれないものの、かなり強いと自負している。あのときは運がなかっただけだ。
「……そうだったんですか?」
「じゃあなんだと思っていたんだよ?」
そう返されるとは思わなかった。私は目を瞬かせる。
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