11 / 29
結婚までのエトセトラ
11.私、白い結婚をしたいの
しおりを挟む「……行く場所も特にないから消去法でそばにいるのかと。別に何か話しかけてくるわけじゃないですし、食事中に任務の話はしない主義だってことはわかっていたから、ホントなんでついてくるのかなって不思議でした」
「……そうか」
ルビは視線を外して、頬杖をついた。
「そういうことなら、もう少し個人的な話をしてもよかったですかね。なんか無言で食べるのが習慣になっちゃっていましたし」
「無理に会話をすることはないさ。話したいことを話したいように話せれば良い」
「気を遣わせていたんですね」
「勝手にやっていたことだ、気にするな」
ちょっと拗ねてる気がする。
――まあ、鈍いからなあ、私。感情の機微がわからないんだよね……
魔物との戦闘が好きなのも、少人数で行動するのが好きなのも、この感覚の鈍さに左右されずに自分の能力を発揮できるからだ。
「……ふぅん」
「なんだよ」
興味が湧いて唸ると、ルビがこちらを見た。ここぞとばかりに私は微笑む。
「それで、結婚はするつもりなんですか? 私と」
「する気がないなら、休日にこんな場所に来ないと思うが」
呆れるような顔をした。
私は説明する。
「断るために来たのかと。ほら、私、白い結婚をしたいので、きちんとした夫婦生活に興味がおありならフっていただいて構わないんですよ」
律儀な彼だ。仕事の延長でここに現れてもおかしくはない。なにも告げずに欠席するような性格ではないことは、仕事で組んできたからよくわかる。
さっさとお開きにして帰ろうかと思い提案すると、ルビは座り直して私を真っ直ぐに見つめた。真面目な顔だ。
「俺は、白い結婚で構わない」
「でも、ここで私と結婚をしたら、性生活におけるパートナーを変更できなくなってしまうんですよ、制度的に。良いんですか?」
「じゃあ、俺からも尋ねるが」
ルビは私の鼻を指さす。
「君が望んだのは仕事を続けることなんだろう? できる限り現在と同じように誰からも干渉を受けない生活を願っているのではなかったのか?」
この様子、どうもルビは乗り気らしい。
――え、本気?
現在の仕事のパートナーであり、今後もしばらくは一緒に組むことになるだろう。
ちなみに結婚をしたらその相手と仕事をすることになると聞いている。ルビはパートナーとして優秀なので、私はありがたいくらいではある……けれど。
「え、まあ、仕事最優先ですよ、そりゃあ。体質の都合もあるので、できる限り今までどおりだとありがたいんですが」
「ならば、俺でいいと思うが。なにかほかに問題があるなら言ってほしい」
そう切り返されると、特に思いつかない。しばらく唸ってみたが、仕事をこのまま一緒に組むにしても異論はないわけで、嫌ではないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる