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私と彼の日常生活
13.夫婦生活がないということは
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* * * * *
実際、この結婚は大正解だったのだろう。
協会支給の二人暮らしには充分すぎる広い屋敷だから別々の部屋で寝ることもできるのに、同じ寝室に大きなベッドを入れて私たちは並んで寝ている。でも性的接触は一切ない、清い関係である。
ルビは約束を守ってくれた。半年一緒に暮らしているが、身体を求められないどころか、不用意な接触もない。互いに寝相がよいので、きっちりベッドの半分を使って寝起きしていた。
「――あの、ルビさん? もう寝てしまいましたか?」
「いや。そろそろ寝るが、どうかしたか?」
ゴソゴソと衣擦れの音がして、ルビが私のいる左側を向いた。
「ふと思ったんですけど、ルビさんは性欲の発散ってどうされているんです?」
「いきなりなんの話だ?」
ルビが目をまんまるくしている。
「あ、いえ。今日もまた言われたじゃないですか、ルビは気持ちがいいだろうって」
「その話か」
彼は興味なさそうに天井を向いた。
「その……私が寝ている間に抜いてるのかな、とか、そういう気持ちになったら外に処理に行かれるのかなって、気になってしまいまして」
「君はどうなんだ? 他人に対して欲情することがなくとも、身体が欲することはあるんじゃないのか?」
「私は……そうですね。結婚する前にちょっと試してみたことがあるんですけど、あまり気持ちよくなれなくて。それっきりですかねえ。仕事で疲れるとすぐ寝てしまいますし、縁がないのかな」
私は笑ってごまかした。聞くだけ聞いておしまいにするにはフェアじゃないと思えたので、正直に質問に答えたのだがルビはどうなんだろう。
「……確かに君はすぐに寝てしまうな」
思案する間があって、ルビは呟く。
「そういう面でも、私はあなたの相手はできそうにないですね」
「俺は別に他所に行くつもりはないし、もしそういう気持ちになってしまったら……できるなら君と気持ちよくなりたいけどな」
「ははは。冗談」
「君がそういう気持ちになったら、俺を呼んでほしい、とは思っているぞ?」
声色が真面目だった。これは本気だ。
「そういう気持ちになるかはわからないですけど、そのときは……考えておきますよ」
「前向きに検討してくれ」
話はこれで終わりとばかりに、ルビは目を閉じてしまった。
――ルビさんって性的な話題を避けてる気はするんだよなあ……。私が嫌がるのを知ってるから、気遣ってくれているのかもしれないけど。
実際、この結婚は大正解だったのだろう。
協会支給の二人暮らしには充分すぎる広い屋敷だから別々の部屋で寝ることもできるのに、同じ寝室に大きなベッドを入れて私たちは並んで寝ている。でも性的接触は一切ない、清い関係である。
ルビは約束を守ってくれた。半年一緒に暮らしているが、身体を求められないどころか、不用意な接触もない。互いに寝相がよいので、きっちりベッドの半分を使って寝起きしていた。
「――あの、ルビさん? もう寝てしまいましたか?」
「いや。そろそろ寝るが、どうかしたか?」
ゴソゴソと衣擦れの音がして、ルビが私のいる左側を向いた。
「ふと思ったんですけど、ルビさんは性欲の発散ってどうされているんです?」
「いきなりなんの話だ?」
ルビが目をまんまるくしている。
「あ、いえ。今日もまた言われたじゃないですか、ルビは気持ちがいいだろうって」
「その話か」
彼は興味なさそうに天井を向いた。
「その……私が寝ている間に抜いてるのかな、とか、そういう気持ちになったら外に処理に行かれるのかなって、気になってしまいまして」
「君はどうなんだ? 他人に対して欲情することがなくとも、身体が欲することはあるんじゃないのか?」
「私は……そうですね。結婚する前にちょっと試してみたことがあるんですけど、あまり気持ちよくなれなくて。それっきりですかねえ。仕事で疲れるとすぐ寝てしまいますし、縁がないのかな」
私は笑ってごまかした。聞くだけ聞いておしまいにするにはフェアじゃないと思えたので、正直に質問に答えたのだがルビはどうなんだろう。
「……確かに君はすぐに寝てしまうな」
思案する間があって、ルビは呟く。
「そういう面でも、私はあなたの相手はできそうにないですね」
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「ははは。冗談」
「君がそういう気持ちになったら、俺を呼んでほしい、とは思っているぞ?」
声色が真面目だった。これは本気だ。
「そういう気持ちになるかはわからないですけど、そのときは……考えておきますよ」
「前向きに検討してくれ」
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