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私と彼の日常生活
17.戦えるように修復します
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「施設にも戦闘要員はいただろ?」
「全滅」
「マジかよ」
「転送装置を破壊されちまって、収容者を護衛しながら逃げているんだが、まあ、そこからも魔物が生まれちまって」
オパールは肩を竦める。
「詰んでるわね」
――なるほど、それでこの数なのか。
上空から見たところ、木々が薙ぎ倒されている場所が複数存在した。収容施設のほうは煙が上がっており、戦闘の形跡が至る所に見られた。かわすのが精一杯といった印象だ。
「それでも、街に流れ込まないように結界は張ったんだから、ここでオレらが踏ん張ればいい」
「もっと応援を呼べないの?」
「施設を放棄するにしても、精霊使いたちにここを知られるのはまずいらしくてな」
協会やこの国の秘密がそこにあるわけで、末端の精霊使いには明かしたくないということか。
私は乱暴に頭をかく。
「強襲部隊は?」
「向かわせてるって話ではあるが、向こうは向こうでなかなか片付かないそうだ」
暇をしているわけがないのだから仕方がない。非番の連中が来てくれれば御の字だが、期待しないほうがいいだろう。
「――で。オパールさんの怪我は?」
「このくらい問題ない」
「嘘つき。私がどれだけあなたのパートナーをやっていたと思ってるんですか」
私が彼のマントをぐっと引っ張ってやると、カランと音を立てて左腕が落ちた。
見ていただけのルビが小さく悲鳴を上げる。
「ほら。人間の身体と違って痛みを感じにくいらしいですが、直さないと戦えない怪我じゃないですか」
「君が乱暴にするからとれたんだろう。皮一枚でくっついていたのにさ」
オパールが膨れる。人間であれば脂汗を浮かべているところだろうが、彼は涼しげだ。
「戦えるように修復します」
腰につけていた箱から魔鉱石を取り出す。魔鉱石は鉱物人形を形作る主要成分であり、精霊使いはこれを使って鉱物人形を作ったり修復したりする。
ちなみに私のような協会所属の職員の中でこれができるのはごく少数だったりする。私は精霊使いの才能を持ちながら協会所属を選んだ稀有な存在なのだ。
「てっきり口づけするのかと思った」
準備をする私にルビが呟く。
「旦那の前ではちょっとねぇ……ってことじゃなくて、こっちのほうが私の魔力消費が抑えられるから」
魔鉱石自体に魔力が込められており、それを利用するので消費が少なくていいのである。私自身が大容量の魔力タンクではあるのだけれど、どこで必要になるのかわからないため、長期戦用に持ち歩いているのだ。
「なるほど合理的」
「全滅」
「マジかよ」
「転送装置を破壊されちまって、収容者を護衛しながら逃げているんだが、まあ、そこからも魔物が生まれちまって」
オパールは肩を竦める。
「詰んでるわね」
――なるほど、それでこの数なのか。
上空から見たところ、木々が薙ぎ倒されている場所が複数存在した。収容施設のほうは煙が上がっており、戦闘の形跡が至る所に見られた。かわすのが精一杯といった印象だ。
「それでも、街に流れ込まないように結界は張ったんだから、ここでオレらが踏ん張ればいい」
「もっと応援を呼べないの?」
「施設を放棄するにしても、精霊使いたちにここを知られるのはまずいらしくてな」
協会やこの国の秘密がそこにあるわけで、末端の精霊使いには明かしたくないということか。
私は乱暴に頭をかく。
「強襲部隊は?」
「向かわせてるって話ではあるが、向こうは向こうでなかなか片付かないそうだ」
暇をしているわけがないのだから仕方がない。非番の連中が来てくれれば御の字だが、期待しないほうがいいだろう。
「――で。オパールさんの怪我は?」
「このくらい問題ない」
「嘘つき。私がどれだけあなたのパートナーをやっていたと思ってるんですか」
私が彼のマントをぐっと引っ張ってやると、カランと音を立てて左腕が落ちた。
見ていただけのルビが小さく悲鳴を上げる。
「ほら。人間の身体と違って痛みを感じにくいらしいですが、直さないと戦えない怪我じゃないですか」
「君が乱暴にするからとれたんだろう。皮一枚でくっついていたのにさ」
オパールが膨れる。人間であれば脂汗を浮かべているところだろうが、彼は涼しげだ。
「戦えるように修復します」
腰につけていた箱から魔鉱石を取り出す。魔鉱石は鉱物人形を形作る主要成分であり、精霊使いはこれを使って鉱物人形を作ったり修復したりする。
ちなみに私のような協会所属の職員の中でこれができるのはごく少数だったりする。私は精霊使いの才能を持ちながら協会所属を選んだ稀有な存在なのだ。
「てっきり口づけするのかと思った」
準備をする私にルビが呟く。
「旦那の前ではちょっとねぇ……ってことじゃなくて、こっちのほうが私の魔力消費が抑えられるから」
魔鉱石自体に魔力が込められており、それを利用するので消費が少なくていいのである。私自身が大容量の魔力タンクではあるのだけれど、どこで必要になるのかわからないため、長期戦用に持ち歩いているのだ。
「なるほど合理的」
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